概要

 電子科技大学(电子科技大学、University Of Electronic Science And Technology Of China)は、第二次世界大戦後に急激に発展した電子通信技術に対応するため、四川省成都市に設置された大学である。政府の211工程985工程双一流建設政策などの大学重点化政策の対象校である。

電子科技大学の写真
電子科技大学  同大学HPより引用

1. 名称と所管

(1)名称

・中国語表記 电子科技大学   略称 电子科大 成电(かつての名称である成都電気通信工程学院に由来)
・日本語表記 電子科技大学  
・英語表記 University Of Electronic Science And Technology Of China 略称 UESTC

(2)所管

 国務院教育部の直轄大学である。

2. 本部の所在地

 電子科技大学の本部は、四川省成都市高新区(西区)西源大道2006号にあり、清水河キャンパスと呼ばれている。

 四川省は、北西に青海省、北に甘粛省及び陝西省、東に重慶市、南に貴州省及び雲南省、西にチベット自治区と接する。四川の名前は省内を南北に流れて長江に注ぐ四つの川(岷江、沱江、涪江、大渡河)に由来している。四川省には、九寨溝や峨眉山などの景勝地があり、ジャイアントパンダの生息地としても有名である。
 気候は四季がはっきりとし、夏は高温・高湿で、冬は穏やかで湿潤である。1月の平均気温は5度から11度と比較的暖かく、7月の平均気温は30度近くに達する。こうした気候は年間を通しての農耕を可能とし、米の二期作や三期作が行われ、穀倉地帯となっている。 
 現在の四川省の人口は約8,300万人(中国第4位)、経済規模はGDPで約53,850億元(中国第4位)である。四川省は古来より、食品加工業や紡績工業、製紙業が盛んである。一方で、製造業や軍需産業が沿海部などから移転し、今では重慶市と同様に内陸部有数の工業拠点となっている。

 電子科技大学のある成都市は、四川省の省都である。三国時代に劉備がここを本拠地としたが、魏に滅ぼされている。現在でも成都市には、名軍師・諸葛孔明やその主君・劉備を祀る武侯祠がある。また日本人には、麻婆豆腐、担々麺などの四川料理の中心的な都市として有名である。

諸葛孔明と劉備を祀る武功廟
諸葛孔明と劉備を祀る武功廟 百度HPより引用

3. 沿革

(1)成都電気通信工程学院

 第二次世界大戦後に急激に発展した電気通信技術に対応するため、交通大学(現在の上海交通大学西安交通大学)、華南工学院(現在の華南理工大学)、南京工学院(現在の東南大学)などの関連学科を統合し、1956年に四川省成都市に「成都電気通信工程学院(成都电讯工程学院、Chengdu Institute of Radio Engineering)」が設置された。

 1960年に、中国政府の大学重点政策による全国重点大学となった。

 文化大革命の時代には、一時人民解放軍が大学運営に関与することになったが、政治の中心である北京から遠く離れていたこともあり、文革でそれほど大きな影響は受けなかった。

(2)電子科技大学

 文革終了後の1988年に、電子科技大学(电子科技大学)と名称が変更された。

 その後、文系学部も徐々に増やしていき、1997年には211工程の大学に選定された。2001年には、985工程の大学に選定された。学部・学科の拡大強化も続き、2013年には医学院も設置された。

 2017年に開始された双一流建設政策において、電子科技大学は一流大学建設A類の対象大学となった。 

4. 規模

(1)規模のデータ

  電子科技大学の規模を、具体的な数値で見たのが下表である。

 電子科技大学中国第1位の大学 
学部学生数20,062名(53位)鄭州大学 47,000名詳細データ
大学院生数16,417名(35位)中国科学院大学 57,375名詳細データ
専任教師数2,500名(34位)吉林大学 6,506名詳細データ
総予算72.86億元(29位)清華大学 362.11億元詳細データ
留学生数980名(32位)北京大学 6,857名詳細データ

(2)キャンパス

 電子科技大学は、本部のある清水河キャンパスに加え、沙河キャンパス、九里堤キャンパスを有している。これら3つのキャンパスは、いずれも成都市内にある。

(3)学部

 電子科技大学は、国務院教育部が定めている12の大分類(日本の大学の学部に相当)について、工学を中心とし、理学、医学、経済・管理学、外国語、教育などの部門を有する総合大学である。

(4)附属医院

 電子科技大学医学院のHPによれば、次の4つの附属医院を有している。
・四川省人民医院
・四川省腫瘍医院(四川省肿瘤医院)
・成都市婦人科・小児科センター医院(成都市妇女儿童中心医院)
・綿陽市センター医院(绵阳市中心医院)

5. 研究開発力

(1)研究開発力のデータ表

 電子科技大学の研究開発力を、データとして示したのが下表である。
 このうち、SCI論文数とはクラリベイト社のデータによる論文数、Nature Indexとは世界トップクラスの科学誌・学会誌掲載の論文数による指標、国家自然科学基金委員会(NSFC)の面上項目予算の獲得額である。国家重点実験室は下記(2)、双一流建設政策による学科建設数は下記(3)を参照されたい。

 電子科技大学中国第1位の大学 
SCI論文数29位中国科学院大学詳細データ
Nature Index49位中国科学技術大学詳細データ
国家重点実験室数1か所(43位)清華大学 13か所詳細データ
双一流学科建設数2学科(38位)北京大学詳細データ
NSFC面上項目予算41位上海交通大学詳細データ

(2)国家重点実験室

 上記の表での中国国内各大学比較の際に、電子科技大学にあった国家重点実験室は、次の1か所であった。
・電子薄膜・集積デバイス国家重点実験室(电子薄膜与集成器件国家重点实验室)

 その後中国の各大学では、政府の方針に従って国家重点実験室を再編して全国重点実験室に移行する流れとなっており、電子科技大学においては上記の国家重点実験室は全国重点実験室に改組され、さらに追加で1つの全国重点実験室が設置されている。
・電子薄膜・集積デバイス全国重点実験室(电子薄膜与集成器件全国重点实验室、名称を変更)
・通信妨害防止全国重点实验室(通信抗干扰全国重点实验室、新たに設置)

(3)双一流学科建設

 中国は2017年に、国内の大学とその学科を21世紀半ばまでに世界一流とすることを目標とする政策(双一流建設政策)を開始した。2022年に改訂された双一流建設政策による学科建設において、電子科技大学は全体で以下の2学科が選定されている。
 ○工学系(2) 電子科学・技術、情報・通信工学

(4)NSFC面上項目予算獲得

 日本の科研費に近い予算として、国家自然科学基金委員会(NSFC)が所管する面上項目予算がある。この予算をどの程度獲得するかで、当該大学の研究能力を判定しうる。2019年で電子科技大学は中国全体で41位である。

6. 国内および国際的な評価

 中国の国内と国際的な評価を示したのが下表である。国内では軟科と中国校友会、国際では英国のQS(Quacquarelli Symonds Limited)とTHE(Times Higher Education)のランキングを示した。また、卒業生の中での傑出科学技術人材数の校友会ランキングも、併せて示した。

 電子科技大学中国第1位の大学 
軟科ランキング33位清華大学詳細データ
校友会ランキング31位北京大学詳細データ
QSランキング世界451位  中国28位北京大学詳細データ
THEランキング世界301-350位 中国25位清華大学詳細データ
校友会傑出人材52位北京大学詳細データ

 参考資料

・電子科技大学HP https://www.uestc.edu.cn/
・電子科技大学医学院HP https://www.med.uestc.edu.cn/