1. 全体組織

 中国科学院は、中国の行政機関である国務院の一部局である。組織として、本部機構、分院、傘下の研究所、大学、学部などを有する。中国科学院のトップは院長であり、その下に副院長などの幹部がいて院長を補佐している。

 中国科学院は、大別すると下図のように本部機構、分院、学部、傘下の研究所、大学、学部などに分けられる。

中国科学院の全体組織
中国科学院の全体組織

2. 本部の組織

 中国科学院の本部は、北京市西城区三里河路52号であり、故宮や天安門広場の西側に位置する。

中国科学院の正面
中国科学院本部の建物(北京市)

 中国科学院本部の組織を示したのが下図である。全体で約7万名に達する人員を擁する中国科学院であるが、本部の人員は約500名と比較的スリムな組織となっている。

中国科学院の本部機構
中国科学院の本部組織

 部機構は、科学研究部門と統合事務部門に大別される。

 科学研究部門には、先端科学・教育局(前沿科学与教育局)、重要科学技術局(重大科技任务局)、科学技術促進・発展局(科技促进发展局)の3局がある。先端科学・教育局は最前線の科学研究の促進とそれを支える人材育成のための教育を、重要科学技術局は情報・海洋・材料・エネルギー等の重要分野のビッグプロジェクトの計画立案や所要の施設整備を、科学技術促進・発展局はビッグプロジェクト以外の科学技術振興や知的財産管理などを、それぞれ所掌している。

 一方、統合事務部門には、弁公庁などの部局がある。このうちどの国のどの組織にも必要な本部機能として、弁公庁(办公厅)、発展計画局(发展规划局)、施設建設・財務局(条件保障与财务局)、人事局の4局がある。弁公庁は文書管理や幹部の秘書業務などを、発展計画局は将来計画や改革構想などの企画立案を、施設建設・財務局は、重要な施設の建設、予算、財産管理、投資業務などを、人事局は人事管理、組織管理、博士号業務などを、それぞれ担当している。
 学部事務局(学部工作局)は、中国科学院院士が所属する学部(Academic Divisions)に関係する事務を担当している。
 横断的な組織として、国際協力局(国际合作局)は米国、欧州、大洋州、アジア、アフリカなどの科学技術機関との協力の調整を、科学情報局(科学传播局)は情報発信や情報管理を、監督・監察局(监督与审计局)は内部統制・監査を、それぞれ担当している。
 以上の組織とは別に、同院OBなどの処遇を行う離退休職幹部業務局(离退休干部工作局)、中国共産党の指導監督を行う直属機関党委員会(直属机关党委)、中央規律検査委員会駐中国科学院規律検査監察組(中央纪委国家监委驻中国科学院纪检监察组)が置かれている。

3. 分院の設置

 中国科学院は、中国全土に百以上の付属研究所、2つの大学などを有しており、これらの事務的な業務を総合調整するために、下図の通り、本部のある北京を含めて12の地域に分院を有している。

中国科学院の分院配置
中国科学院の分院配置

 それぞれの分院では、担当の省・自治区が決まっており、具体的には北京(北京市、天津市、山西省を管轄)、瀋陽(遼寧省、山東省)、長春(吉林省、黒竜江省)、上海(上海市、福建省、浙江省)、南京(江蘇省)、武漢(江西省、湖北省)、広州(広東省、湖南省、海南省)、成都(四川省)、昆明(雲南省、貴州省)、西安(陝西省)、蘭州(甘粛省、青海省)、新疆(新疆ウィグル自治区)である。

 なお、安徽省にある合肥物質科学研究院及び中国科学技術大学は、分院で事務調整を行わず、直接本部で事務調整が行われている。

4. 現在の指導部

 中国では、組織の責任者は「領導」と呼ばれる。複数名で意思決定がなされる場合には「領導集体」と呼ばれ、日本の理事会、取締役会などに当たる。2023年7月現在の中国科学院の指導部である領導集体は、侯建国現院長をトップとして、副院長(複数)、秘書長、副秘書長(複数)など、合計10名で構成されている。

(1)侯建国院長

侯建国 現中国科学院院長
侯建国 現院長  百度HPより引用


 侯建国は1959年に福建省に生まれ、文化大革命が終了し鄧小平の大号令により大学入試(高考)が復活した直後の1978年に、中国科学技術大学に入学した。大学では物理学を専攻し、特に固体物理を専門として博士課程まで進んだ。1989年に同大学より博士号を取得の後、1989年に中国科学院福建物質構造研究所でポスドク研究者となり、1991年には米国に渡ってカリフォルニア大学バークレー校でポスドク研究者、1993年にはオレゴン州立大学高級訪問学者となった。
 1995年に帰国し、母校である中国科学技術大学に勤務した。2000年には同大学の副学長となり、2008年から2015年まで校長(学長)を務めた。2015年から2016年までは同じ国務院の機関で科学技術政策を担当している科学技術部の副部長を務めた。その後、江西チワン族自治区の中国共産党支部副書記などを務め、2018年から中国科学院のナンバー2である副院長(国務院の部長級)に就任し、2020年に同院の院長に就任した。

 中国の大学や研究機関には、一般的に中国共産党の支部が設置され、そのヘッドである書記が大きな権限を有する場合が多い。特に大学では、アカデミックな業務の責任者は学長(校長)であるが、管理的な業務は党書記が担当する。中国科学院にも中国共産党支部があるが、その書記は侯院長が兼務している。

(2)張亜平副院長

張亜平の写真
ナンバー2の張亜平副院長 百度HPより引用


 ナンバー2の副院長(国務院の部長級)で中国科学院党委副書記は、張亜平(张亚平)である。1965年に雲南省に生まれ、小さい頃から生物に興味があったこともあり、1982年に復旦大学生物学科に入学した。1986年に復旦大学を卒業した後、故郷の雲南省に戻り、中国科学院昆明動物研究所の研究生となって細胞進化の研究を行った。
 1991年に博士号を取得した後、恩師の勧めで米国サンディエゴの絶滅危惧動物生殖センター (CRES)に留学し、分子進化と生物の研究を続けた。1995年に、中国科学院が進めた百人計画に応募して当選し、中国科学院昆明動物研究所の研究員として帰国した。1996年には、同研究所の副所長となり、さらに2005年に所長に就任した。2003年には、38歳の若さで中国科学院院士となっている。
 2012年には、中国科学院の本部勤務となり、同院の副院長となった。そして2022年には、中国科学院のナンバー2の副院長(国務院の部長級)に就任している。

(3)その他の幹部

 序列第三位は、中央規律検査委員会駐中国科学院規律検査監察組(中央纪委国家监委驻中国科学院纪检监察组)のヘッドである孫也剛(孙也刚)である。1963年江西省生まれで、北京大学を卒業後、主として教育畑を歩み、2017年からこの職にある。

 序列第四位は、動物研究所長を務めた周琪副院長である。1970年黒竜江省生まれで、東北農業大学で博士号を取得の後、フランス国立農業研究所でポスドク研究を行い、百人計画に当選して中国科学院動物研究所に入所した。2017年に動物研究所の所長に昇進し、2020年に中国科学院副院長に就任した。2023年からは中国科学院大学学長を兼務している。

 序列第五位は、中国科学院本部で秘書長を務めた汪克強(汪克强)副院長である。1965年安徽省生まれで、1989年に安徽師範大学を卒業後、合肥にある中国化学技術大学の事務局員となり、同大学の秘書長などを務めた後、2006年に中国科学院本部に移り、2020年に秘書長となり、2023年からは副院長を務めている。

 序列第六位は国家天文台長を務めた常進(常进)副院長、第七位は本部・重要科学技術局長を務めた丁赤飚副院長、第八位は李和風秘書長、第九位は厳慶(严庆)副秘書長、第十位は孫暁明(孙晓明)副秘書長(女性)、第十一位は翟立新副秘書長である。

 以上の11名が、中国科学院の現在(2024年1月時点)の指導部を形成している。

参考資料

中国科学院HP https://www.cas.cn/