はじめに

 ここでは、著名な国際賞からノーベル賞受賞につながる可能性のある賞を選定し、その賞を受賞した中国系の研究者を選定した。国際賞のリストはこちらを参照されたい。
 その上で、ノーベル賞を既に受賞した人と、死亡した人を除外し、現在存命で活躍中の研究者のリストを作成した。

現存の中国系受賞者リスト

 中国系で今後ノーベル賞受賞の可能性のある研究者を、以下にリストアップした。

 著名な国際賞の受賞者は全体で35名であるが、このうちでノーベル賞を受賞した人(受賞後の死亡者も含む)が4名であり、国際賞を受賞したがノーベル賞受賞とならず死去した人が9名いるので、現在活躍中で今後ノーベル賞受賞の可能性のある人は24名となる。

 24名を、著名な国際賞の受賞数で分類したのが下記である。3度受賞が2名、2度受賞が5名、1度の受賞が17名である。それぞれの分類では、受賞年次の新しい人を上位にランクした。
 また氏名の記述は、中国での活躍が受賞に結びついた人は漢字を主体とし、米国等の外国での活躍が受賞に結びついた人はカタカナを主体とした。

(1)国際賞を3度受賞(2名)

・盧煜明(デニス・ロー) ラスカー賞(2022年)、キング・ファイサル国際賞(2014年)、ブレイクスルー賞(2021年)
・ユェワイ・カン(簡悦威) ラスカー賞(1991年)、ガードナー国際賞(1984年)、ショウ賞(2003年)

(2)国際賞を2度受賞(5名)

・ジージャン・チェン(陳志堅) ルイザ・グロス・ホロウィッツ賞(2023年)、ブレイクスルー賞(2019年)
・アンドリュー・チーチー・ヤオ(姚期智) 京都賞(2022年)、チューリング賞(2000年)
・シャオドン・ワン(王暁東) キングファイサル国際賞(2020年)、ショウ賞(2006年)
・チン・W・タン(鄧青雲) 京都賞(2019年)、ウルフ賞化学部門(2011年)
・タクワー・マク(麦德华) キング・ファイサル賞(1995年)、ガードナー国際賞(1989年)

(3)国際賞を1度受賞(17名)

・チュアン・へ(何川) ウルフ賞化学部門(2023年)
・ジャッキー・イン  キングファイサル国際賞(2023年)
・ジュン・イェ(葉軍) ブレイクスルー賞(2022年)
・バージニア・リー(李文渝) ブレイクスルー賞(2020年)
・シャオウェイ・チュアン(庄小威)  ブレイクスルー賞(2019年)
・シャオガン・ウェン(文小剛) ディラック賞(2018年)
・シュー・チェン(銭煦) ベンジャミンフランクリン・メダル(2016年)
・フェン・チャン(張鋒) ガードナー国際賞(2016年) 
・チーフェイ・ウォン(翁啓恵) ウルフ賞化学部門(2014年)
・メン・スー(蘇萌) ブルーノ・ロッシ賞(2014年)
・ホークァン・マオ(毛河光) バルザン賞(2005年)
・パトリック・リー(李雅達) ディラック賞(2005年)
・ウェンシン・リー(李文雄) バルザン賞(2003年)
・ロバート・チャン(錢澤南) ルイザ・グロス・ホロウィッツ賞(1999年)
・ユアン・チャン(張遠) ロベルト・コッホ賞(1998年)
・ラプチー・ツィ(徐立之) ガードナー国際賞(1990年)
・ジェリー・ワン(王学荆) ガードナー国際賞(1981年)

データ1 各国際賞での中国系研究者受賞者リスト

○ウルフ賞(数学部門を除く)
呉健雄(1978年、物理学)、シャンファー・ヤン(1991年、農業)、袁隆平(2004年、農業)、チン・W・タン(2011年、化学)、チーフェイ・ウォン(2014年、化学)、チュアン・へ(2023年、化学) 

○ベンジャミン・フランクリン・メダル
ダニエル・ツイ(1998年)、ショウチェン・チャン(2015年)、シュー・チェン(2016年)

○バルザン賞(数学での受賞を除く)
ウェンシン・リー(2003年)、ホークァン・マオ(2005年)

○ロベルト・コッホ賞
ユアン・チャン(1998年)

○ラスカー賞
チョウハオ・リー(1962年)、ミンチュー・リー(1972年)、ユェワイ・カン(1991年)、屠呦呦(2011年)、盧煜明(2021年)

○ガードナー国際賞
ワイユー・チェン(1981年)、ジェリー・ワン(1981年)、ユェワイ・カン(1984年)、タクワー・マク(1989年)、ラプチー・ツィ(1990年)、フェン・チャン(2016年)

○ルイザ・グロス・ホロウィッツ賞
ロバート・チャン(1999年)、ジージャン・チェン(2023年)

○ディラック賞
パトリック・リー(2005年)、ショウチェン・チャン(2012年)、シャオガン・ウェン(2018年)

○ブルーノ・ロッシ賞
メン・スー(2014年)

チューリング賞
アンドリュー・チーチー・ヤオ(2000年)

○チャールズ・スターク・ドレイパー賞
チャールズ・カオ(1999年)

○エジソン・メダル
ティンイェ・リー(2009年)

○ブルース・メダル
フランク・シュー(2009年)

○日本国際賞
チャールズ・カオ(1996年)

○京都賞(基礎科学部門数理科学分野を除く)
チン・W・タン(2019年)アンドリュー・チー・チー・ヤオ(2021年)
(註)ヤオの受賞理由は計算機科学であり数学に近いが、現在は計算機は全ての科学の基礎となっているためカウントした。

○ショウ賞(数学部門を除く)
ユェワイ・カン(2004年)、シャオドン・ワン(2006年)、フランク・シュー(2009年)

○キング・ファイサル賞
タクワー・マク(1995年)、楊振寧(2001年)、盧煜明(2014年)、シャオドン・ワン(2020年)、ジャッキー・イン(2023年)

○ブレイクスルー賞(集団での受賞を除く)
シャオウェイ・チュアン(2019年)、ジージャン・チェン(2019年)、バージニア・リー(2020年)、盧煜明(2021年)、ジュン・イェ(2022年)

データ2 国際賞を受賞し、ノーベル賞も受賞した中国系研究者(死去した人も含む)

ダニエル・ツイ(崔琦) ノーベル物理学賞受賞(1998年)  ベンジャミン・フランクリン・メダル(1998年)を受賞
チャールズ・カオ(高錕) ノーベル物理学賞受賞(2009年) チャールズ・スターク・ドレイパー賞(1999年)、日本国際賞(1996年)を受賞 2018年に死去
屠呦呦 ノーベル生理学医学賞受賞(2015年)  ラスカー賞(2011年)を受賞
楊振寧(チェンニン・ヤン) ノーベル物理学賞受賞(1957年) キング・ファイサル賞(2001年)を受賞

データ3 国際賞を受賞した後、死去した中国系人研究者

呉健雄(ジャンション・ウー) ウルフ賞物理学部門(1978年) 1997年に死去
・シャンファー・ヤン(楊祥発) ウルフ賞農業部門(1991年) 2007年に死去
袁隆平 ウルフ賞農業部門(2004年) 2021年に死去
・チョウハオ・リー(李卓皓) ラスカー賞(1962年) 1987年に死去
・ミンチュー・リー(李敏求) ラスカー賞(1972年) 1980年に死去
・ワイユー・チェン(張槐耀) ガードナー国際賞(1981年) 1995年に死去
・ショウチェン・チャン(張首晟) ベンジャミン・フランクリン・メダル(2015年)、ディラック賞(2012年)を受賞  2018年に死去
・ティンイェ・リー(歴鼎毅) エジソン・メダル(2009年)   2012年に死去
・フランク・シュー(徐遐生) ブルース・メダル(2009年)、ショウ賞(2009年)   2023年に死去