985工程の開始(1998年)

 985工程は、江沢民総書記が1998年に提唱した、中国の主要大学における211工程を踏まえたさらなる重点化政策である。

策定経緯

 1998年5月、北京大学創立百周年記念式典に出席した江沢民総書記は、「近代化を実現するために、中国は世界の先進レベルの一流大学を持つべきである」と提言し、「一流大学とは素質が高いイノベーション型の知識人材を育成する機関でなければならず、将来を見据えて客観的な真理を追求し、社会の諸問題を解決するための科学的根拠を提供する役割が求められる。また、一流大学は知識イノベーションや科学技術を実際の生産活動に応用するための重要な手段として活用される必要があるとともに、中国の優秀かつ特色ある文化を世界の先進文明と交流させるための架け橋となるべきである」と指摘した。

 1999年、国務院は教育部が策定した「21世紀に向けた教育振興行動計画」を承認し、「国家の予算を集中的に投入して各領域の積極性を発揮させ、重点学科に取り掛かって予算の投入を拡大するべきである。若干の大学やすでに世界先進レベルに近づいた条件を備えている学科を優先的かつ重点的に整備することになり、一部の大学と重点学科は世界一流レベルに達するようになる」と示した。これによって「985工程」が始動した。

 なお、985とは、江沢民総書記が北京大学で演説した日時98年5月にちなむ名称である。

対象大学など

 北京大学、清華大学、中国科学技術大学、復旦大学、上海交通大学、南京大学、西安交通大学、浙江大学、ハルビン工業大学など34校が、第1期の支援対象として指定された。その大部分は、前記の211工程で国家の支援を受けてハイレベル大学への取り組みの実践を専攻して経験した重点大学であった。

 2004年、教育部と財政部は共同で「985工程の継続推進に関する意見」を公布した。これにより985工程の第2期が始動した。第1期の成果を基盤とし着実な先進を積み重ね、さらに努力を継続して複数の世界一流大学の構築を目指すことを第2期の目標とした 。条件の整う機関、地方政府および企業が共同で資金を調達して985工程を構築するよう奨励した。2006年までに985工程指定大学は第1期と第2期を合わせ39校となった 。
 1998年から2004年にかけて、投入された資金の総額は681億元で、そのうち中央政府は329億元を支出した。211工程に比べ、985工程の指定校はより限られており、より多くの資金が投入された 。

985工程の成果

 に指定された大学は、元々中国のトップレベル大学であり、これらの大学が毎年授与した博士学位数は全国の半数を超えている。また、後述の競争的資金の配分計画である「973計画」の4割や、国家自然科学基金委員会の重点研究計画の5割近くがこれら985工程の大学に配分されている。さらに、50%近くの国家重点実験室が985工程大学に設置されている。
 科学研究のアウトプットでも進捗が示されており、2001年にESIデーターベースに選ばれた985工程大学の学科は40であったが、2008年には140学科がESIデーターベースに選ばれた。引用回数の比較でも、10大学の26学科が世界大学トップ100に入った。

(参考資料)
・百度HP 『985工程

(この項目 了)