1. これまでの経緯

 新中国建国以降、大学の人事、財産、物資の配分等はすべて中央政府が一元的に管理し、学生の募集計画や卒業生の就職先の配属、専攻科目の設置・変更を、審査し決定していた。

 文化大革命が終了し1980 年代に入ると、改革開放の流れを背景として集権的な計画経済を前提とした大学の管理運営体制の問題点が顕在化し、中央政府の厳格な大学管理は大学が本来持つべき活力を失わせているとの批判が出てきた。

 1998 年に公布された高等教育法では、大学が設置承認後に法人格を取得することが初めて明記され、学長(中国では校長)がその法定代表者となることが規定された。これにより大学は、設置者が拠出した財産や政府の支出による財政資金、寄付等を自主的に管理し使用する民事法上の地位が保障された。また、社会のニーズによって専攻学科を新たに設置すること、教材を自主的に選択すること、また募集する学生の学科ごとの人数を調整すること等、教育活動計画における自主権が認められた。

 その一方で、国が設置する大学では、中国共産党委員会が党の規約に基づいて大学の運営管理を統一的に指導し、学長は各大学に組織される中国共産党委員会の指導の下で職務を遂行する体制が規定された。

2. 現在の大学運営体制

 現行の高等教育法に基づく大学運営に関する重要な機関として、「共産党委員会」、「校務委員会」、「学術委員会」などがある。

 「共産党委員会」は、中国共産党の末端組織として大学ごとに設置され、党中央の規約に基づいて大学の運営管理を統一的に指導している。常務委員会、規律委員会、共産党青年団等から構成され、下部組織として党務事務室、組織部、宣伝部、労働組合等がある。共産党委員会の責任者は党委書記である。

 学長は、上記の共産党委員会の指導と指示の下で大学の事務遂行を行う。具体的には、学校内の人事、内部組織の設置、教育計画の策定、学生の学籍管理等のほか、年間経費予算の執行や、大学の資産を管理し、学校の合法的権益を維持する職権と責任を持つ。

 学内に「校務委員会」が置かれ、大学の教育と科学研究、その他大学の運営管理の学長の職務事項を処理する。また「学術委員会」も学内に置かれ、専攻学科の設置・変更、教育・科学研究計画の策定、教育活動の評価、研究成果等の学術に関する事項を検討し決定する。

 日本や欧米では学長の権限が非常に強いが、中国では共産党委員会の権限が絶大であり、そのトップである党委書記の権限が学長を超えるとされている。なお、党委書記と学長が兼務の場合もある。

3. 学部・学科の設置

 中国の大学では、高等教育法に基づき自主的に学部・学科を設置・調整し、また自主的に定員配分を調整することができる。大学が学部・学科を自由に設置することで、社会経済の変化に対応した人材養成を可能にしている。

 教育部は、2020年に「普通大学本科専攻目録(普通高等学校本科专业目录)」を改訂し、全国の大学の学部・学科の統一的設置基準を示した。具体的には、大学(本科)の学科を「哲学」、「経済学」、「法学」、「教育学」、「文学」、「歴史学」、「理学」、「工学」、「農学」、「医学」、「管理学」、「芸術」の12の学問分野に大分類し、各大分類の下に細分化して体系化している。この12の大分類が日本で言う学部に当たる。

 12の大分類は、日本の学部の内容と少し違う部分もあるため、日本と違う部分を中心にどの様な学問が入っているかを以下に述べる。
○哲学  日本では文学部の一部であるが、中国では重要視され独立している。
○経済学 日本の経済学部に近く、財政学、金融学も含む。
○法学  日本の法学部に近く、政治学、社会学、マルクス主義理論、公安学も含む。
○教育学 日本の教育学部に近く、体育学も含む。
○文学  日本の文学部、外国語学部に近く、マスコミ学も含む。
○歴史学 日本では文学部の一部であるが、中国では重要視され独立している。
○理学  日本の理学部に近く、心理学、統計学も含む。
○工学  日本の工学部に近く、公安技術も含む。
○農学  日本の農学部とほぼ同等である。
○医学  日本の医学部の内容に加え、口腔医学(歯学)、中医学、看護学、薬学なども含む。
○管理学 日本では色々な学部の一部にある学問が中心で、管理科学・工学、商工管理、農業経済管理、公共管理、図書館学、物流管理などからなる。
○芸術  日本の芸術学部とほぼ同等である。

4. 運営経費

 中国の大学の運営経費は、「教育経費」と「研究開発経費」に大別される。「教育経費」は、校舎建設・学校設備の購入や教職員の人件費などに充てられる大学の教育事業の運営経費であり、また「研究開発経費」は、大学による基礎研究・応用研究・試験開発などの活動に充てられる経費であり、別途記述する。

 中国の大学における教育経費は、政府部門から支出される公的財政資金が中心である。それ以外の資金としては、学生から徴収する学費・雑費を含む大学の事業収入が重要であり、これには、大学の校弁企業や社会サービス事業等から得られる収益のうち大学の教育経費に充当される部分が含まれる。さらにその他として社会団体や個人が設立する教育基金からの拠出金の受入れ、社会団体や個人からの寄付などがある。

直近のデータとして、2019年のデータは次の通り。

    中国全体の大学教育経費      1兆2,021億元
      政府からの資金          7,546億元  (63%)
      事業収入               3,792億元  (31%)
       (うち学費収入は、2,494億元)
      その他               683億元  (6%)
         出典 中国教育統計年鑑2019年版