1. 資格と職階

 初等教育から高等教育までの中国における教員の資格は、「中華人民共和国教師法(中华人民共和国教师法)」で規定されており、教員の資格は大学本科課程卒業以上の学歴を有するか、所定の資格試験に合格した者となっている。

 また教員の職階は、「大学教師職務名称確定および昇格方法の暫定規定(关于高等学校教师职务名称及其确定与提升办法的暂行规定)」によって「教授」、「副教授(日本の准教授)」、「講師」、「助教」の4つに区分されている。

2. 選任

 過去において大学への教員の配属は、国が策定する計画に基づいて教員志望の大学卒業生または大学院卒業生が割り当てられ、配属された大学と改めて就任契約を結ぶ形が多かった。

 しかし、1985年以降は、大学が必要とする人材を自主的に公募する機会が増えている。大学は、学科の新設や学生数増加への対応等の必要に応じて、教員招へい委員会等によって候補人材の選定し採用を決定する。教員の任期は一般に2年ないし4年であるが、延長を妨げない。どの職階区分とするかについては、それぞれに就任条件が定められており、一定の在職年数と学術面での実績を挙げることが求められる。ただし、教育研究面で極めて優秀な実績を挙げた者については、就任条件に定める学歴や在職年数に関わらず、上位の資格区分へ登用することが認められている。

3. 新たな人材の発掘

 文化大革命の約10年間、中国では科学技術分野をけん引するリーダー層の人材育成が断絶した。文革が終了し、改革開放政策により中国の経済は急速な発展を遂げ、科学分野においても規模と質の両面で顕著な向上が見られたが、国際的に真に一流と言える科学者・研究者は、中国国内にほとんどいなかった。

 このため、優秀な人材を呼び集め、国家の特別の資金援助等によって育成支援を行い、21 世紀の中国の科学技術の発展に貢献する人材を育成することが、科学技術政策の最重要課題となった。そこで、1990年代以降に政府自らが積極的に推進した海外人材呼び戻し政策(俗に「海亀(回帰)政策」)の進展である。この海亀政策は、大学の教員や研究者の人材確保でも同様であるので、ここで代表的なものを紹介する。

(1)百人計画

 「百人計画」は、中国科学院が主導して1994 年に開始された最初の「高目標、高基準、高強度」人材の招致、育成政策である。計画立案の当初、20世紀末までに国内外の優秀な若手学術リーダーを毎年100人抜擢することを目標として掲げたことから「百人計画」と名付けられた。

(2)国家傑出青年科学基金

 国家傑出青年科学基金(国家杰出青年科学基金)は、国内における若い科学技術人材の育成と在外研究者の帰国促進を目的として、1994年から国家自然科学基金委員会(NSFC)が拠出している資金である。拠出対象は、中国国籍を持つ45歳以下の者で、博士号取得者または准教授以上のポストにあり、国内外で認められた成果を挙げた者などを対象としている。

(3)長江学者奨励計画

 長江学者奨励計画(长江学者奖励计划)は、国内外にいる優秀な学者を中国の高等教育機関に招致し、国際的なトップレベル人材を育成することを目的として、教育部および李嘉誠(りかせい)基金会が1998年より実施している。なお李嘉誠基金会は、香港最大の企業集団「長江グループ」の創設者である李嘉誠によって、1980年に設立されたチャリティー基金である。 

(4)千人計画

 千人計画(千人计划、海外高层次人才引进计划の俗称)は、海外のハイレベル人材を招へいし、国家級プロジェクトや大学などの責任者とすることを目的として、2009年より中国共産党中央組織部の「中央人材工作協調チーム」が実施を開始した。対象は、海外で博士号を取得した55歳以下の教授職以上の者、あるいは海外企業や金融機関で高いポストに就いている専門技術人材等で国籍は問わない。

 しかし近年、米中の貿易摩擦などの影響で、この千人計画が米国、欧州、日本などで問題が顕在化し、現在は主として中国系の若手研究者の招聘プログラムとして再スタートしている。

4. 評価システム

 評価の対象項目は教員(研究者を含む)の政治思想、業務水準、就業態度、業務成績であり、評価対象の教員本人の他に同僚の教員や学生の意見も聞いて判定し、評価結果は配属、昇給、表彰等に反映する。

 この教員の評価に関し、多くの大学の教員評価制度が単年度の成果(論文、特許など)の量を重視して教育よりも研究活動により評価の重点が置かれているため、教員が短期間で成果を出すことにプレッシャーを感じ安心して学生の教育に打ち込むことができないとの批判がある。解決方法としては、各大学で教員評価制度の目的を明確化し、教員の個性と潜在能力を生かす方向に改革することが望ましいとされ、各大学で様々な試行錯誤が続いている。

5. 顕彰と表彰

 顕著な業績を挙げた科学者や技術者に対し、その栄誉を称え顕彰するシステムは世界的に数多く存在している。日本では、文化勲章、文化功労者、日本学士院などがこれに当たる。大学教員(研究者を含む)は科学技術分野で重要な役割を果たしており、中国においても顕彰や表彰される人達は多い。ここでは、中国における代表的な顕彰機関や賞について述べる。

(1)中国科学院

 中国科学院は、研究開発実施機関および大学所管機関であると同時に、顕著な業績を挙げた科学者を「中国科学院院士」として選抜し、顕彰する機関でもある。中国科学院院士は、1955年に「中国科学院学部委員」としてスタートしたが、1993年に「中国科学院院士」と改名された。院士は2年おきに、中国国内外のトップ研究者・科学者から選ばれ、中国の最も優秀な科学者、学術権威とされる。院士は終身称号であり、1994年には、外国籍の院士が新設された。

2022年現在の院士数は853名であり、これに加えて外国籍院士が129名である。院士は年間1,000元支給されるほか、色々な特権が付与される。

(2)中国工程院

 中国工程院は、工学・エンジニアリングの分野で顕著な業績を挙げた技術者・研究者を選抜し、顕彰している。終身制度として1993年からスタートした。工程院院士は、2年おきに中国の工学・エンジニアリング分野のトップ研究者・科学者から選ばれ、科学院院士制度と同様に外国籍院士もあり、中国科学院院士との兼任も可能である。2022年現在の院士数は958名であり、これに加えて外国籍院士は111名である。処遇は中国科学院院士と同等である。

(3)国家最高科学技術賞

 国家最高科学技術賞は、中国国家主席から中国の科学者に贈られる科学技術賞で、2000年に設立された。毎年1名から2名に贈られ、日本の文化勲章に近いものと考えられる。賞金は500万元で、その内の1割が受賞者に授与され、残りの9割は受賞者の科学研究プロジェクトの資金となる。

(4)国家三大科学技術奨励賞

 国家科学技術奨励賞は、中国の科学技術の発展を促進するため、1999年5月23日に国務院が公布した「国家科学技術奨励条例」に基づいて実施される奨励賞である。「国家自然科学賞」、「国家技術発明賞」、「国家科学技術進歩賞」の3つがある。