Prioritization Policy at Universities in China
はじめに Introduction
中華人民共和国の建国以来、21 世紀に科学技術力を基盤とした先進的な大国となるため、優れた研究開発を実施し多くの人材の輩出する世界一流水準の高等教育機関を整備することを目標に掲げ、トップレベルの大学に集中的に資源を投入する重点化政策を展開してきた。
1. 全国重点大学の指定 Designation of National Key Universities
1954年、国務院は、中国人民大学、北京大学、清華大学、ハルビン工業大学、北京農業大学(現中国農業大学)、北京医学院(現北京大学医学部)の6校を全国重点大学として選定した。その後、1959年に中国全体で20校、1960年には64校を選定し、重点化を進めた。
ところが、その後文化大革命によって教育の発展は全面的に停滞し、大学の重点化政策も中断された。1977年、復活を果たした鄧小平は大学の重点化を再提唱し、文革前の64校から60校を再度選定し直すとともに、28校を追加し、合計88大学を選定した。
この全国重点大学制度は、その後後述するいくつかのプロジェクトのスタートによりその重要性は徐々に減少したが、「全国重点大学」という名称は優れた大学の別称として、現在も残っている。
2. 211プロジェクト 211 Project
「211プロジェクト(211工程)」は、「21 世紀」へ向けて中国全土に「100余り」の重点大学を構築することから名付けられた国家プロジェクトで、1993年に教育部を主管部門として実施を決定した。指定された大学に10年以上にわたり重点的に投資を継続することによって、優秀な高等知識人材を育成するとともに、国家建設および社会発展の中で生じる様々な問題を科学技術力によって解決することができる専門的人材の基盤を構築することを目標とした。
「211プロジェクト」では、基本的には競争原理に基づいて指定されたが、西部大開発などにも配慮して地域的なバランスも考慮した。指定校は112校に上ったが、後に述べる習近平政権の双一流建設政策の開始とともに、2016年に211プロジェクトは終了が宣言された。
3. 985プロジェクト 985 Project
1998年の江沢民国家主席(当時)の演説で、「現代化の実現のため、中国は世界先進レベルの一流大学を持つべきである」と提言したのを受けて、開始された大学重点化支援プロジェクトである。前項の211プロジェクトで指定された大学の一部を、さらに重点的に支援することを目的としたプロジェクトである。江主席の演説が1998年5月になされ、それに基づくプロジェクトであるので、「985プロジェクト(985工程)」と略称される。
指定校は39校に上ったが、これも習近平政権の双一流建設政策の開始とともに、2016年に終了が宣言された。
4. 双一流建設 Double First-Class Construction
211プロジェクトや985プロジェクトの実施に伴い、中国の有力大学は着実に実力を高め、国際的にも評価されるようになってきたが、その一方で、対象大学が限定的である、中国の特色や特徴が失われている、地域間の不均衡が存在するなどの批判が出されていた。2014年5月、習近平総書記は北京大学で開催された座談会で、「中国の特色ある世界一流大学を構築するべきである。先進的な大学の経験を参考にし、中国社会に定着した優れた大学を建設すべきである」と述べた。
2015年8月、共産党中央は「世界一流大学と一流学科の建設を統合的に推進する全体企画案」を了承し、同年10月国務院はこれを公表した。これにより、世界一流大学と一流学科の建設を推進する双一流建設がスタートした。「双一流」とは大学と学科の二つ(双)を世界「一流」にするという意味である。
2017年9月、教育部は42校を一流大学に、140大学から465学科を一流学科に選定した。
その後2021年に実施された評価の結果を踏まえ、2022年2月に第2段階の選定結果が公表された。第二段階では一流学科の構築を主とするとの考えから、一流大学はあえて特定されなかった。一流学科については、前回の140大学から147大学に増え、北京大学と清華大学は自らの一流学科を選定できることとした。