ここでは、CRDSの俯瞰報告書を元データとして、システム・情報科学技術分野における各国・地域の科学技術力比較を記す。なお、直近のCRDS俯瞰報告書(2023年)についてはこちらを、科学技術力比較の手法については、こちらを参照されたい。
1. システム・情報科学技術分野における国際比較(2023年)
(1)国際比較の結果
全体 米国>欧州~中国~日本>韓国
基礎 米国>欧州>中国~日本>韓国
応用・開発 米国>中国~欧州>日本~韓国
(註)「~」は「~」の左の国・地域が右の国・地域と同等であるか若干強いと言うことであり、「>」は「>」の左の国・地域が右の国・地域と顕著な差があると言うことである。
(2)根拠となるデータ
以下に示すのが、上記国際比較の元データであり、JST/CRDSの国際俯瞰報告から、筆者が独自の手法で作成したデータである。
○分野全体のデータ:下記の基礎のデータと応用・開発のデータを足し合わせ、分野全体のデータとした。
日本 | 米国 | 欧州 | 中国 | 韓国 | |
◎ | 16 | 82 | 49 | 39 | 4 |
○ | 72 | 18 | 51 | 38 | 36 |
△ | 14 | 2 | 2 | 21 | 50 |
× | 0 | 0 | 0 | 2 | 7 |
○基礎のデータ:基礎フェーズでの国際比較表の◎、○、△、×の個数を数えた表である。
日本 | 米国 | 欧州 | 中国 | 韓国 | |
◎ | 10 | 39 | 29 | 17 | 1 |
○ | 35 | 11 | 21 | 24 | 20 |
△ | 6 | 1 | 1 | 8 | 23 |
× | 0 | 0 | 0 | 1 | 3 |
○応用・開発のデータ:応用・開発フェーズでの国際比較表の◎、◎、△、×の個数を数えた表である。
日本 | 米国 | 欧州 | 中国 | 韓国 | |
◎ | 6 | 43 | 20 | 22 | 3 |
○ | 37 | 7 | 30 | 14 | 16 |
△ | 8 | 1 | 1 | 13 | 27 |
× | 0 | 0 | 0 | 1 | 4 |
2. システム・情報科学技術分野における経年変化
ここでは、システム・情報科学技術分野の経年変化を示すため、それぞれの年のシステム・情報科学技術分野全体の評価を数値化してグラフとしている。
(1)経年変化のグラフ
(2)根拠となるデータ
各年度の俯瞰報告の国際比較表の◎、○、△、×の個数を数え、既に示した手法で数値化したデータである。
2008年 | 2009年 | 2011年 | 2013年 | 2015年 | 2017年 | 2019年 | 2021年 | 2023年 | |
日本 | 0.85 | 0.82 | 0.81 | 0.68 | 0.71 | 0.71 | 0.72 | 0.72 | 0.68 |
米国 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 |
欧州 | 0.84 | 0.84 | 0.82 | 0.79 | 0.83 | 0.79 | 0.88 | 0.81 | 0.82 |
中国 | 0.43 | 0.43 | 0.49 | 0.53 | 0.54 | 0.55 | 0.68 | 0.76 | 0.71 |
韓国 | 0.58 | 0.58 | 0.59 | 0.54 | 0.5 | 0.44 | 0.46 | 0.51 | 0.46 |
3. CRDSによる国際比較の表
下記に示した表は、CRDSの「研究開発の俯瞰報告書 システム・情報科学技術分野(2023年)」の記述に基づき、筆者が作成した表である。
システム・情報科学技術分野については、他の分野と違い、報告書の中に国際比較の全体一覧表が記述されていないため、筆者が個別の研究開発領域の記述を参照して、下記の表を作成した。
上記1.および上記2.の一部のデータとなっている。表の中で、中国の科学技術力の強い研究開発領域を赤色でマークし、逆に弱い部分を黄色でマークした。元データであるCRDSの俯瞰報告書では赤色や黄色でマークした部分はない。
(註1)CRDSの俯瞰報告書の各研究開発領域の記述にある記述を元に上記の表が作成されているが、俯瞰報告書にあるトレンドは上記の表には記載されていない。これは、このコーナーでの国際競争力比較にトレンドを使用していないからである。
4. 中国のシステム・情報科学技術分野の技術力の現状
中国のシステム・情報科学技術分野の国際比較の現状を、以下にまとめる。
○中国は、2010年代後半から急激にシステム・情報科学技術分野の科学技術力を増大させ、現在は日本より少し上位にあり、世界トップの米国、第二位の欧州を追っている。ただ全体として見ると、米国との差は歴然としている。
○日本との関係で言えば、基礎研究は中国の方が日本より若干上位にあり、さらに応用研究・開発では日本よりかなり強い。
○中国が世界トップレベルにある研究開発領域(図で◎◎、赤色でマーク)は次の11領域である。より詳しくは次ページの参考を参照されたい。
・人工知能・ビックデータ~言語・知識系のAI技術
・ロボティクス~制御
・ロボティクス~農林水産ロボット
・社会システム科学~計算社会科学
・コンピューティングアーキテクチャ~プロセッサーアーキテクチャ
・コンピューティングアーキテクチャ~データ処理基盤
・コンピューティングアーキテクチャ~IoTアーキテクチャー
・コンピューティングアーキテクチャ~デジタル社会基盤
・通信・ネットワーク~光通信
・通信・ネットワーク~ネットワーク運用
・通信・ネットワーク~ネットワークコンピューティング
○逆に中国が主要国から後れている研究開発領域(図で△△または××、黄色でマーク)は次の5領域である。
・人工知能・ビックデータ~認知発達ロボティクス
・人工知能・ビックデータ~社会におけるAI
・セキュリティー・トラスト~人・社会とセキュリティー
・通信・ネットワーク~ネットワークサービス実現技術
・数理科学~因果推論