1. 附属研究機関の地理的な分布

 中国科学院の主たる役割である研究機能について述べる。中国科学院の研究機能は、傘下に有する附属研究機関の研究活動による。

 2022年現在、中国科学院は104の附属研究機関を中国全土に有している。下図は、その地理的な分布を示した地図である。

付属研究所の分布
附属研究機関の地理的な分布

2. 附属研究機関の一覧

 中国科学院の付属研究所を、所在の直轄市、省ごとに列記する。

○北京市(37)
1.数学・システム科学研究院(数学与系统科学研究院)
2.物理研究所
3.理論物理研究所(理论物理研究所)
4.高エネルギー物理研究所(高能物理研究所)
5.力学研究所
6.声学研究所
7.理化技術研究所(理化技术研究所)
8.化学研究所
9.国家ナノテク科学センター(国家纳米科学中心)
10.生態環境研究センター(生态环境研究中心)
11.プロセス工学研究所(过程工程研究所)
12.地理科学・資源研究所(地理科学与资源研究所)
13.国家天文台
14.地質・地球物理研究所(地质与地球物理研究所)
15.チベット高原研究所(青藏高原研究所)
16.古脊椎動物・古人類研究所(古脊椎动物与古人类研究所)
17.大気物理研究所(大气物理研究所)
18.植物研究所 
19.動物研究所(动物研究所)
20.心理研究所
21.微生物研究所
22.生物物理研究所
23.遺伝・発生生物学研究所(遗传与发育生物学研究所)
24.北京ゲノム研究所(北京基因组研究所) 国家生物情報センター(国家生物信息中心)とも称している。
25.計算技術研究所(计算技术研究所)
26.ソフトウェア研究所(软件研究所)
27.半導体研究所(半导体研究所)
28.マイクロエレクトロニクス研究所(微电子研究所)
29.宇宙情報イノベーション研究院(空天信息创新研究院)
30.自動化研究所(自动化研究所)
31.電気工学研究所(电工研究所)
32.工程・熱物理研究所(工程热物理研究所)
33.国家宇宙科学センター(国家空间科学中心)
34.自然科学史研究所
35.科学技術戦略・諮問研究院(科技战略咨询研究院)
36.情報工学研究所(信息工程研究所)
37.宇宙利用工学技術センター(空间应用工程与技术中心)

○天津市(1)
1.天津工業生物技術研究所(天津工业生物技术研究所)

○山東省(3)
1.海洋研究所
2.青島生物エネルギー・プロセス研究所(青岛生物能源与过程研究所)
3.煙台海岸地域研究所(烟台海岸带研究所)

○遼寧省(4)
1.大連化学物理研究所(大连化学物理研究所)
2.瀋陽応用生態研究所(沈阳应用生态研究所)
3.瀋陽自動化研究所(沈阳自动化研究所)
4.金属研究所

○吉林省(3)
1.長春応用化学研究所(长春应用化学研究所)
2.東北地理・農業生態研究所(东北地理与农业生态研究所)
3.長春光学精密機械・物理研究所(长春光学精密机械与物理研究所)

○上海市(15)
1.上海マイクロシステム・情報技術研究所(上海微系统与信息技术研究所)
2.上海技術物理研究所(上海技术物理研究所)
3.上海光学精密機械研究所(上海光学精密机械研究所)
4.上海珪酸塩研究所(上海硅酸盐研究所)
5.上海有機化学研究所(上海有机化学研究所)
6.上海応用物理研究所(上海应用物理研究所)
7.上海天文台
8.分子細胞科学卓越イノベーションセンター(分子细胞科学卓越创新中心)
9.脳科学・知能技術卓越イノベーションセンター(脑科学与智能技术卓越创新中心)
10.分子植物化学卓越イノベーションセンター(分子植物科学卓越创新中心)
11.上海栄養・健康研究所(上海营养与健康研究所)
12.上海薬物研究所(上海药物研究所)
13.上海パスツール研究所(上海巴斯德研究所)
14.上海高等研究院
15.小型衛星イノベーション研究院(微小卫星创新研究院)

○浙江省(1)
1.寧波材料技術・工学研究所  (宁波材料技术与工程研究所)

○福建省(2)
1.福建物質構造研究所(福建物质结构研究所) 海西研究院とも称している。
2.都市環境研究所(城市环境研究所)

○江蘇省(6)
1.南京地質古生物研究所(南京地质古生物研究所)
2.南京土壌研究所(南京土壤研究所)
3.南京地理・湖沼研究所(南京地理与湖泊研究所)
4.紫金山天文台
5.蘇州ナノテク・ナノバイオ研究所(苏州纳米技术与纳米仿生研究所)
6.蘇州生物医学工学技術研究所(苏州生物医学工程技术研究所)

○江西省(1)
1. 贛江イノベーション研究院(贛江創新研究院)

○安徽省(1)
1.合肥物質科学研究院(合肥物质科学研究院)

○湖北省(5)
1.武漢岩石土壌力学研究所(武汉岩土力学研究所)
2.精密測量科学・技術イノベーション研究院(精密测量与地球物理研究所)
3.武漢病毒研究所(武汉病毒研究所)
4.水生生物研究所
5.武漢植物園(武汉植物园)

○湖南省(1)
1.亜熱帯農業生態研究所(亚热带农业生态研究所)

○広東省(6)
1.南海海洋研究所
2.華南植物園(华南植物园)
3.広州エネルギー研究所(广州能源研究所)
4.広州地球化学研究所(广州地球化学研究所)
5.広州生物医薬・健康研究院(广州生物医药与健康研究院)
6.深圳先進技術研究院(深圳先进技术研究院)

○海南省(1)
1.深海科学・工学研究所  (深海科学与工程研究所)

○四川省(3)
1.成都山地災害・環境研究所(成都山地灾害与环境研究所)
2.成都生物研究所
3.光電技術研究所(光电技术研究所)

○重慶市(1)
1.重慶グリーン・インテリジェント技術研究所(重庆绿色智能技术研究院)

○貴州省(1)
1.地球化学研究所

○雲南省(3)
1.昆明植物研究所(昆明植物研究所)
2.シーサンバンナ熱帯植物園(西双版纳热带植物园)
3.昆明動物研究所(昆明动物研究所)

○陝西省(3)
1.国家標準時センター(国家授时中心)
2.西安光学精密機械研究所(西安光学精密机械研究所)
3.地球環境研究所(地球环境研究所)

○山西省(1)
1.山西石炭化学研究所(山西煤炭化学研究所)

○甘粛省(3)
1.近代物理研究所
2.蘭州化学物理研究所(兰州化学物理研究所)
3.西北生態環境資源研究院(西北生态环境资源研究院)

○新疆ウィグル自治区(2)
1.新疆生態・地理研究所(新疆生态与地理研究所)
2.新疆理科技術研究所(新疆理化技术研究所)

3. 中国科学院の研究開発費

(1)総額

 中国科学院全体の研究開発費は、2021年末で903億9,461万元であり、2024年1月現在の円と元の交換レートである1元=20円で換算すると、約1兆8,079億円となる。

(2)年度毎の推移

 中国科学院の研究開発費は、前世紀末から今世紀にかけての爆発的な経済発展に伴い、予算を大きく伸ばしている。2006年から2021年までの研究開発費総額の推移を示したのが以下の図である。

中国科学院総予算推移
中国科学院の予算の推移  出典:中国科学院統計年鑑2022

(3)支出元

 2021年の予算総額約904億元のうち、傘下の研究所の研究開発に充当されるのは約791億元(1兆5,820億円)である。この約791億元の支出元を見ると、国の交付金が約305億元(39%)、国の競争的資金が約280億元(35%)、地方政府の資金が約66億元(8%)、中国科学院の出資企業を含めた民間の資金が約113億元(14%)、その他国外資金などが約27億元(3%)となっている

予算の支出元別割合
予算の支出元別割合 出典:中国科学院統計年鑑2022

(4)分野別割合

 約791億元の研究開発費の分野別の額を見ると、技術科学分野が約380億元(48%)、数学・物理分野が約128億元(16%)、生物学分野が約114億元(15%)、化学分野が約90億元(11%)、地球科学分野が約76億元(10%)、その他分野が約3億元(0.4%)となっている。

分野別の予算割合
分野別予算割合 出典:中国科学院統計年鑑2022

(5)目的別割合

 どの様な目的で研究開発費が使われたかであるが、2021年度で見ると基礎研究が42.9%、応用研究が44.7%、開発研究(中国語では「試験発展研究」)が12.4%となっている。これを13年前の2009年からの経年変化で見ると、応用研究が徐々に減少し、基礎研究にシフトしてきている。

目的別割合の経年変化
目的別予算割合の経年変化 出典:中国科学院統計年鑑2022

4. 中国科学院の職員・研究者

(1)職員数とその推移

 2020年末の中国科学院全体の職員数が70,192名である。このように、現在は約7万名を擁する大研究機関であるが、必ずしも順調に職員数が推移してきたわけではない。

 中国科学院は1949年に設立されたが、その時の職員数は575名であった。中国科学院が継承した国民政府の中央研究院や北平研究院にはかなりの数の職員がいたと考えられるが、これらは日中戦争やその後の国共内戦の犠牲になったり、蒋介石とともに台湾に移り住んだりしたため、実際に継承した職員は少なかった。新中国建国後の発展に伴い職員数が増加し、5年後の1954年に約7,000名、10年後の1959年に約46,000名、文革直前の1966年には約62,000名にまで増加した。

 文化大革命中は、傘下の研究所が中国科学院から切り離されたり、残留した研究所の職員も下放されたりした。とりわけ文革の影響を大きく受けた1967年から1972年にかけては、中国科学院の公式統計にも職員数の記載がないほどである。その後文革期間中の1973年に、暴力的な自己批判や下放などが収まったことにより公式の統計が復活したが、その時の職員数は文革前の半分である約35,000名にまで減少していた。その後、共産党から派遣された胡耀邦らの努力もあって中国科学院の人員は徐々に増加に転じ、文革終了時の1976年には約52,000名にまで回復した。

 文革が終了すると、中国科学院の組織人員の拡大政策により、1979年には約83,000名にまで膨れ上がる。その後約80,000名前後の規模で推移したが、1987年に就任した周光召第4代院長のイニシアティブの下、人員削減及び機構の簡素化、業務姿勢の改善などの抜本的な改革が進められ、1991年の約85,000名をピークとして、周院長が退任した1997年には約68,000名にまで減少した。

 路甬祥第5代院長の時代の初期には、改革による人員削減が継続し、2005年には約43,000名になるが、その後中国の急激な経済発展もあり人員が徐々に増加し、路院長の退任時の2011年で約61,000名となった。そのあとを継いだ白院長の時代となっても漸増傾向が続いた。

 2020年現在で見ると、職員数はやや漸増傾向ながら、約7万人で比較的安定している。

 これらをグラフにしたものが、次の図である。

中国科学院全体の職員数推移
中国科学院全体の職員数推移 出典:中国科学院統計年鑑2021

(2)附属研究機関の研究者数

 職員には、研究開発を担当する研究者だけではなく、事務的な業務を行う職員もいる。中国科学院で研究開発業務を主としてになっているのは、附属研究機関や大学に属する研究者である。2021年末現在、総勢71,340名に達する職員のうち、研究者総数は61,704名である。そのうち、附属の研究所に属する職員数は63,852名であり、研究者は56,311名である。附属の研究所に属さない研究員のほとんどは、中国科学院傘下の大学に所属している。

(3)職員の年齢構成

 中国科学院全体の職員における年齢構成を示したのが下のグラフであり、35歳までが約36%、40歳まででも約59%と、非常に若い年齢構成となっている。

中国科学院職員の年齢構成
中国科学院全体の職員の年齢構成 出典:中国科学院統計年鑑2022

(4)研究所職員の学位取得状況

 2021年末で、附属研究所の職員56,311名の学位取得状況は次のグラフのとおりである。博士号と修士号を取得している職員が全体の約87%を占めている。

研究所職員の学位取得状況
研究所職員の学位取得状況 出典:中国科学院統計年鑑2022