1. 全体像

 大学における研究開発経費には、研究員の人件費、研究活動に係る経費、固定資産の購入費用等が含まれる。直近のデータとして、2019年のデータは次の通り(出典:中国科技統計年鑑2020)。

   中国全体の大学研究開発経費    1,796億元
    政府からの資金         1,048億元 (58%)
    民間からの資金          471億元 (26%)
    その他              277億元 (16%) 

 下図は、過去15年間の全体研究開発資金、政府からの資金、民間からの資金の推移を示している。

中国の大学の研究資金の推移
中国の大学の研究開発費の推移 アジア・太平洋総合研究センターの「中国科学技術概況2021」より引用

2. 政府からの研究開発資金

 習近平政権となって、従来の資金プロジェクトの大幅な見直しが行われ、また国家自然科学基金委員会は科学技術部の中に位置づけられた。過去のものを含めて、大学の研究開発費に重要と考えられるものを簡単に紹介する。

(1)863計画

 中国では、中央政府や地方政府が大学を含む研究機関に対して研究資金を提供しているが、大学に対する資金は科学技術部と国家自然科学基金委員会が中心となって拠出されてきた。以下にこれまで重要な役割を果たした拠出システムを簡単に紹介する。まず「863計画(863计划)」であるが、正式な名称は、「国家ハイテク研究発展計画(国家高技术研究发展计划)」である。1986年3月に、当時の最高指導者であった鄧小平の決断で実施が決定されたことから、863計画と呼ばれている。863計画では、21世紀初頭に、ハイテク分野で世界レベルに追いつくことを目標としており、選定された分野は生物、エネルギー、情報通信、製造、資源環境、材料、海洋、地球科学、農業、交通の10分野であった。

(2)973計画

 「973計画(973计划)」の正式名称は、「国家重点基礎研究発展計画(国家重点基础研究发展计划)」である。1997年3月に、当時の朱鎔基総理により実施が決定されたことから、973計画と呼ばれている。選定されている分野は、農業、エネルギー、情報、資源環境、人口と健康、材料、複合分野、重要科学先端分野、重大科学研究計画の9分野であった。

(3)NSFC

 大学における資金源として重要な機関であるNSFC(国家自然科学基金委員会)は、1986年に国務院に直属する機関として米国NSFをモデルに設置され、基礎研究および一部の応用研究を助成している。NSFCの2019年の予算規模は約281億元である。
○一般プロジェクト(面上項目):日本の科研費に近く、基礎研究助成資金である。2019年は約111億元で全体の38%である。
○青年科学基金プロジェクト(青年科学基金項目):若手研究者育成資金であり、2019年は約42億元で、全体の15%である。
○重点プロジェクト(重点項目):重点的に一件当たり5年間で約300万元を拠出する資金で、2019年は約22億元で、全体の8%である。
○国家傑出青年科学基金(国家杰出青年基金項目):45歳以下のハイレベル・海外経験のある若手研究者を助成する資金であり、2019年は約12億元で、全体の4%である。

 下図は、2019年までのNSFCの予算の推移である。

NSFCの予算の推移
NSFCの予算の推移 アジア・太平洋総合研究センターの「中国科学技術概況2021」より引用

(4)研究開発資金の見直し

 政府の研究開発資金が重複・分散して非効率となっているとの指摘を受けて、習近平政権は2016年に既存の100以上のプロジェクトを大幅に見直し、NSFCが拠出する資金、国家重点研究開発計画、国家科学技術重大特別プロジェクト等の5種類に統合する事になった。

 NSFについては資金拠出そのものに変化はなかったが、組織として科学技術部に統合されることになった。一方、863計画と973計画は、他の資金とともに後述の国家重点研究開発計画に統合された。

(5)国家重点研究開発計画

 国家重点研究開発計画は、長期的な進展が必要な重大社会公益性研究、産業の競争力、全体的な自主革新力、国家安全に関わる重大科学問題、重大な基礎コア技術・製品、重大国際科学技術協力を対象とする9分野を対象としている。

「第13次五カ年計画(2016年~2020年)」期間中の国家重点研究開発計画では、69件の重点特定プロジェクトに、5年間で760億元近くを拠出した。現在進められている「第14次5ヶ年計画(2021~2025年)」においては、初年度である2021年に重点特定プロジェクトとして197億元を拠出することとなっている。

3. 国家重点実験室等

 国務院の科学技術部、教育部と中国科学院等が中心となり、基礎研究のレベル向上と世界レベルへのキャッチアップを図るため1984年に開始したのが、国家重点実験室である。中国の主要大学のトップレベルの学科や中国科学院の主要な研究所の研究室が指定されており、政府より重点的に予算配分がなされている。大学内に国家重点実験室がいくつ存在するかが、当該大学の研究開発力の指標でもある。

 国家重点実験室の成果を踏まえ、教育部重点実験室と中国科学院重点実験室をはじめ、多くの部門別開放実験室や地方政府の重点実験室などが相次いで建設されている。また、国家重点実験室の上位に位置づけられる実験室として、2000年から「国家実験室」が指定され、資金供与がなされている。