はじめに
ユンキン・タン(Yunqing Tang、唐雲清、唐云清、1990年~)カリフォルニア大学バークレー校准教授は、中国生まれの数論幾何学者であり、2026年にコール賞数論部門を受賞した。

生い立ちと教育
ユンキン・タン(Yunqing Tang、唐雲清、唐云清)は、1990年に生まれた。家族や出生地などの情報は、ネットにはない。
ユンキン・タンは、上海向明中学・初級中学クラス(日本の中学校)を卒業し、上海中学・高級中学クラス(日本の高等学校)に進学した。彼女は、上海中学在学中に女子数学オリンピックで満点を獲得し、さらに中国数学オリンピックで金メダルを獲得した。
北京大学に入学
ユンキン・タンは2007年に、中国数学オリンピックの成績により、名門大学・北京大学数学科に保送生として入学が許可された。
「保送生」の制度は日本の推薦入学に当たる制度であり、大学側が指定した高校で極めて優秀な成績の生徒、国際科学オリンピックで優秀な成績を上げた生徒、語学関係の高校で優秀な成績の生徒などを対象として、中国の大学統一入試である高考の受験を経ずに入学を許可するものである。
ユンキン・タンが入った年の北京大学数学科には、才能に恵まれた学生が多くいた。例えば、2026年にフィールズ賞を同時に受賞したユー・デン(Yu Deng、鄧煜)シカゴ大学教授とホン・ワン(Hong Wang、王虹)ニューヨーク大学教授は、ともに同じクラスで学んだ仲間である。
これら優秀なクラスメイトの中でも、ユンキン・タンは傑出した才能の持ち主の一人であり、北京大学在学中の2010年に、第一回丘成桐大学学生数学コンテストで金賞を受賞した。丘成桐大学学生数学コンテストは、1982年にフィールズ賞を受賞した中国系米国人シン=トゥン・ヤウ(Shing-Tung Yau、丘成桐、1949年~)ハーバード大学教授にちなむコンテストである。
米国に留学
ユンキン・タンは、2011年に北京大学を卒業し、米国に渡ってハーバード大学の大学院に進学した。そして5年後の2016年に、同大学より数学でPhDを取得した。
ユンキン・タンは、2016年にプリンストン高等研究所でポスドクとなり、翌2017年にはプリンストン大学の講師(Instructor)となった。
さらに、2020年にはフランスにわたり、フランス国立科学研究センター(CNRS)およびパリ・サクレー大学の准研究員(junior researcher)となった。
2021年には再び米国に戻り、プリンストン大学の助教授(Assistant Professor)に就任した。
その後、カリフォルニアに移って、2024年にカリフォルニア大学バークレー校の准教授(Associate Professor)となって、現在に至っている。
「非有界分母予想」を解決
ユンキン・タンが世界の数学界にその名をとどろかせたのは、非合同部分群に係る「非有界分母予想」を、共同研究者とともに解決したことである。
彼女は、フランク・カレガリ(Frank Calegari)カリフォルニア大学バークレー校教授およびヴェセリン・ディミトロフ(Vesselin Dimitrov)カリフォルニア工科大学教授の3人の共同研究により、2021年に「非有界分母予想(Unbounded Denominators Conjecture)」を証明した。これは、50年前に提起された予想であり、これにより数論幾何学の大きな突破口が開かれたとされる。
著名な国際賞を受賞
ユンキン・タンは、「非有界分母予想」を解決したことなどの成果により、著名な国際賞を共同研究者とともに受賞していく。
2022年、SASTRAラマヌジャン賞を受賞した。SASTRAラマヌジャン賞とは、インドの数学者シュリニヴァーサ・ラマヌジャンの故郷であるクンバコナムにあるサストラ大学( Shanmugha Arts, Science, Technology & Research Academy)の制定する賞で、32歳以下の優れた若手数学者に与えられる。
ユンキン・タンは2026年に、共同研究者であるフランク・カレガリおよびヴェセリン・ディミトロフとともに、コール賞数論部門を受賞した。受賞理由は、「1968年以来半世紀以上にわたって未解決だった、合同でないモジュラー形式の係数は無限の分母を持つという予想を、驚くべき独創的な形で証明した」であった。
コール賞は、過去6年間に北米の数学誌に掲載された最も優れた論文の著者に対して、米国数学会から贈られる賞であり、フィールズ賞、ショック賞、ガウス賞、アーベル賞などと並ぶ数学分野の最高賞の一つである。中国系では、2014年にイータン・チャン(Yitang Zhang、張益唐、1955年~)が同賞の数論部門を、2021年にはチェンヤン・シュー(Chenyang Xu、許晨陽、1981年~)が同賞の代数部門を、それぞれ受賞している。
なお、2026年7月、米国フィラデルフィアで開催された国際数学者会議(ICM)において、北京大学同級生であったユー・デン(鄧煜)とホン・ワン(王虹)がフィールズ賞を受賞したが、残念ながらユンキン・タンは受賞者となれなかった。フィールズ賞は、受賞年の1月1日より前に40歳の誕生日を迎えたものは候補となれないという規定が存在しており、1990年生まれのユンキン・タンにとっては次回の2030年には40歳を越してしまうことになり、今回が最後のチャンスであった。
参考資料
・カリフォルニア大学バークレー校HP Yunqing Tang
https://math.berkeley.edu/~ytang/
・百度HP 她破解了半个世纪难题,却因40岁红线无缘菲尔兹奖?
・AMSのHP Calegari, Dimitrov, and Tang to Receive 2026 AMS Frank Nelson Cole Prize for Number Theory
https://www.ams.org/news?news_id=7548


