概要

 東北大学(东北大学、Northeastern University)は、遼寧省瀋陽市にあり、工学や理学を中心とする総合大学である。政府の大学重点化政策に従い、1996年には211工程に、2006年には985工程に、2017年には双一流建設政策に採択された。

東北大学の写真
東北大学  同大学のHPより引用

1. 名称と所管

(1)名称

・中国語表記 东北大学   略称 东大
・日本語表記 東北大学  
・英語表記 Northeastern University 略称 NEU

(2)所管

 国務院教育部が管轄する大学である。

2. 本部の所在地

 東北大学の本部は、遼寧省瀋陽市和平区文化路3号巷11号にあり、南湖キャンパス(南湖校区)と呼ばれている。

 遼寧省は中国東北部にある省の一つであり、第二次世界大戦終了前には旧満州国に属していた。遼寧省は北東を吉林省、北西を内モンゴル自治区、南西を河北省と接し、北京などがある華北と東北地方を結ぶ重要な交通路となっている。南東は鴨緑江を挟んで北朝鮮と隔てられ、南は黄海と渤海に面している。
 2022年時点での人口は約4,200万人で、中国国内では14位に位置する。GDPは2022年時点で2兆9千億元であり、中国国内で17位となっている。

 瀋陽市は遼寧省の省都で、都市部人口約625万人、市全体約825万人を擁する東北地方の最大規模の都市であり、東北地方の経済・文化・交通および商業の中心地である。首都の北京と東北3省や朝鮮半島を繋ぐ要衝であり、高速道路、高速鉄道・鉄道在来線が放射線状で密集している。また、周辺に鞍山、撫順、営口などの衛星都市がある。
 17世紀初めに登場した満洲族のヌルハチは、瀋陽を本拠地として清を建国した。1644年の明朝滅亡後、第2代皇帝のホンタイジは北京に遷都した。現在でも、ホンタイジ時代に建設された瀋陽故宮が残っている。

瀋陽故宮の写真
瀋陽故宮

 瀋陽市は、日本人にとってもなじみの深い都市である。1905年の日露戦争当時、現在の瀋陽市は奉天市と呼ばれており、両国陸軍が激突した奉天会戦の舞台となっている。その後、張作霖や張学良を代表とする奉天軍閥の拠点となったが、鉄道駅を中心とする市街地の大半は南満洲鉄道の付属地とされ、日本が行政権や警察権を掌握していた。
 1931年9月18日、関東軍が奉天郊外の柳条湖で南満洲鉄道(満鉄)の線路を爆破し、それを口実として東北部全土の占領を進めていった(満州事変)。発端となった事件は柳条湖事件と呼ばれ(中国では九一八事変と呼ぶ)、翌1932年には満州国建国が宣言されている。

九一八事変記念館
九一八記念館

3. 沿革

(1)旧東北大学の設立

 辛亥革命後の1923年、当時中国東北地方の軍閥で実力者だった張作霖が、東北地方の人材育成を目的に、関係者と協議して設置したのが旧東北大学である。この大学は、奉天(現在の瀋陽)にあった「瀋陽高等師範学校(沈阳高等师范学校)」と「瀋陽文学専門学校(沈阳文学专门学校)」を基礎として設立され、理、工、文、法の学部が置かれた。
 1928年には、張作霖の息子でやはり軍閥の実力者だった張学良が、第二代学長となった。

(2)九一八事変後、大陸西部に疎開

 1931年9月18日、日本の関東軍が柳条湖事件(中国では九一八事変と呼ぶ)を起こし、東北大学のキャンパスも戦火に会ったため、大陸西部への疎開を余儀なくされた。

 当初は北平(現在の北京)に疎開したが、1936年には陝西省の西安に移転した。しかし、1937年に盧溝橋事件を発端として日中戦争が起きると、西安も空襲されたため、東北大学はさらに南西部にある四川省三台市に疎開した。

(3)第二次世界大戦後、東北部に戻る

 1945年8月、日本が第二次世界大戦に敗北し、日本軍が中国大陸から撤退したため、翌1946年に旧東北大学の関係者が瀋陽に戻り、東北大学を再建していった。1948年には国民党の南京政府の命令により、中国共産党の支配していた瀋陽を離れ北平(現在の北京)に移転するよう命じられた。

 1949年に北京が中国共産党によって解放されると、旧東北大学の工学部や理学部の一部を基礎として、「瀋陽工学院(沈阳工学院)」が元の地である瀋陽に設置された。その際、理学部の一部、文学部、法商学部は「東北師範大学(东北师范大学)」となった。また農学部は「瀋陽農学院(沈阳农学院)」となった。

 1950年には、遼寧省の他の専門学校を吸収し、名称を「東北工学院(东北工学院)」とした。 

 1952年に大学・学部の再編政策である院系調整が実施され、東北工学院では鉱業、冶金、建築、電気工学などの学科が拡充されたが、建築学科や数学科は他の大学に移った。

(4)新たな東北大学へ

 1993年に、東北工学院はかつての名称である「東北大学(东北大学)」となった。その際、第二代の学長であった張学良が名誉学長となり、校名を記した看板は張学良名誉学長が自筆した。

 政府の大学重点化政策に従い、1996年には211工程に、2006年には985工程に、2017年には双一流建設政策に採択された。

4. 規模

(1)規模のデータ

 東北大学の規模を、具体的な数値で見たのが下表である。

 東北大学中国第1位の大学 
学部学生数31,500名(16位)鄭州大学詳細データ
大学院生数17,500名(31位)中国科学院大学 57,375名詳細データ
専任教師数2,857名(23位)吉林大学 6,506名詳細データ
総予算62.04億元(35位)清華大学 362.11億元詳細データ
留学生数845名(34位)北京大学 6,857名詳細データ

(2)キャンパス

 東北大学は、本部のある南湖キャンパスのほか、同じ瀋陽市内に渾南(浑南)、沈河の2つのキャンパスを有し、さらに河北省秦皇島(秦皇岛)に秦皇島分校を有している。

(3)学部

 東北大学は、国務院教育部が定めている12の大分類(日本の大学の学部に相当)について、工学・理学を中心とし、管理学、経済学、文学、法学、教育学、芸術などの学部(学院)を有している。農学は有していない。

5. 研究開発力

(1)研究開発力のデータ表

 東北大学の研究開発力を、データとして示したのが下表である。
 このうち、SCI論文数とはクラリベイト社のデータによる論文数、Nature Indexとは世界トップクラスの科学誌・学会誌掲載の論文数による指標、国家自然科学基金委員会(NSFC)の面上項目予算の獲得額である。国家重点実験室は下記(2)、双一流建設政策による学科建設数は下記(3)を参照されたい。

 東北大学中国第1位の大学 
SCI論文数41位中国科学院大学詳細データ
Nature Index81位中国科学技術大学詳細データ
国家重点実験室数2か所(23位)清華大学 13か所詳細データ
双一流学科建設数2学科(38位)北京大学詳細データ
NSFC面上項目予算40位上海交通大学詳細データ

(2)国家重点実験室

 上記の表での中国国内各大学比較の際に、東北大学にあった国家重点実験室は、次の2か所であった。
 ・圧延技術・連続圧延自動化国家重点実験室
 ・プロセス工業総合自動化国家重点実験室

 その後中国の各大学では、政府の方針に従って国家重点実験室を再編して全国重点実験室に移行する流れとなっており、東北大学にある現在の全国重点実験室は、次の通りである。
・プロセス工業総合自動化全国重点実験室(流程工业综合自动化全国重点实验室)
・デジタル鋼鉄全国重点実験室(数字钢铁全国重点实验室)
・深部金属鉱山インテリジェント採掘設備全国重点実験室(深部金属矿智能开采与装备全国重点实验室)
・鉱物化工科学・技術全国重点実験室(共同建設)(矿物加工科学与技术全国重点实验室(共建))

(3)双一流学科建設

 中国は2017年に、国内の大学とその学科を21世紀半ばまでに世界一流とすることを目標とする政策(双一流建設政策)を開始した。2022年に改訂された双一流建設政策による学科建設において、東北大学は以下の2学科が選定されている。
  ○工学系(2) 冶金工学、制御科学・工学

(4)NSFC面上項目予算獲得

 日本の科研費に近い予算として、国家自然科学基金委員会(NSFC)が所管する面上項目予算がある。この予算をどの程度獲得するかで、当該大学の研究能力を判定しうる。2019年で東北大学は中国全体で40位である。

6. 国内および国際的な評価

 中国の国内と国際的な評価を示したのが下表である。国内では軟科と中国校友会、国際では英国のQS(Quacquarelli Symonds Limited)とTHE(Times Higher Education)のランキングを示した。また、卒業生の中での傑出科学技術人材数の校友会ランキングも、併せて示した。
 これで見る東北大学は、中国国内ランキングで主要大学中30位前後の位置にある。国際的なランキングは少し落ちる。

 東北大学中国第1位の大学 
軟科ランキング37位清華大学詳細データ
校友会ランキング29位北京大学詳細データ
QSランキングランキング外北京大学詳細データ
THEランキング世界601-800位、中国41位清華大学詳細データ
校友会傑出人材29位北京大学詳細データ

参考資料

・東北大学HP https://www.neu.edu.cn/index.htm