概要

 中国海洋大学(Ocean University of China)は、山東省青島市にキャンパスを有する大学であり、海洋学および水産学をメインとして、理学、工学、薬学、管理学、経済学、文学、法学、教育学、芸術等の学部(学院)を擁する総合大学である。211工程985工程双一流建設政策などによる国家重点大学でもある。

中国海洋大学の正門写真
中国海洋大学  同大学のHPより引用

(1)名称

・中国語表記 中国海洋大学   略称 中国海大 海大 
・日本語表記 中国海洋大学  
・英語表記 Ocean University of China 略称 OUC

(2)所管

 国務院教育部の直轄大学である。

2. 本部の所在地

 中国海洋大学の本部は、山東省青島市崂山区松嶺路238号にあり、崂山キャンパスと呼ばれている。

 山東省は北京市や天津市の東にあり、黄河の下流に位置する。省の東半分を占める山東半島は、渤海と黄海に突き出ており、大連や旅順がある遼東半島と相対している。春秋戦国時代には、斉や魯の国などが置かれ文化の中心であった。このため思想家の孔子・孟子・孫子などがこの地で生まれている。

 中国海洋大学のある青島市は山東省の重要都市で、中国有数の港湾都市であり、商工業の盛んな地である。青島市の歴史は比較的新しく、ドイツが日清戦争(1894年~1895年)後に、モデル的な植民地として街並みを整えた都市である。
 日清戦争後、ドイツはロシア、フランスと共に三国干渉を行い、清朝に恩を売った。1897年に宣教師が山東省で殺された事件を口実に、ドイツ軍は青島市が面する膠州湾に上陸し、翌1898年には膠州湾を99年間の租借地とし、ドイツ東洋艦隊の母港となる軍港を建設した。ドイツは青島の街並み、街路樹、上下水道などを整えた。
 第一次世界大戦でドイツが敗北したためドイツの権益は消滅したが、現在でも西洋風の街並みが残り、ドイツ人が持ち込んだ醸造技術を元にした青島ビールは、現在でも中国のメジャーなビールブランドの一つである。

 下の写真は、ドイツの占領期に建設された聖ミヒャエル大聖堂である。

青島市の大聖堂
青島市にある聖ミヒャエル大聖堂

3. 沿革

 中国海洋大学は、山東省済南市に本部を有する山東大学の沿革と重なる部分が多い、いわば兄弟大学である。

 中国海洋大学の沿革を示した図を、同大学HPより以下に引用する。

中国海洋大学の沿革図
中国海洋大学の沿革図  同大学HPより引用

(1)山東大学堂、国立青島大学、国立山東大学

 中国海洋大学の源は、1901年済南市に設置された官立山東大学堂である。

 1926年に6つの専門学校が合併し、文、法、工、農、医の5つの学部を持つ省立山東大学となった。1928年、日本軍の山東出兵による混乱から、同大学は閉鎖された。その後南京の国民政府は、同大学の再開と私立青島大学(1924年設立)との合併準備を進め、1929年に青島市に国立青島大学を開校した。1932年に国立山東大学と改称した。

 1937年に日中戦争が始まり、国立山東大学は青島市から安徽省安慶に疎開し、さらに四川省万県に移転した。

 第二次世界対戦終了後の1946年に、国民政府の承認を得て国立山東大学が青島市で再建された。1949年には青島市は人民解放軍により解放され、国立山東大学も中国共産党の支配下となった。1951年に、名称が山東大学となった。

(2)山東海洋学院

 山東大学は1958年に、山東省政府により青島市から済南市に移転を命じられた。その際に青島市に残った学科である海洋、水産、地質、海洋生物などを束ねる形で、1959年に山東海洋学院が設置された。 

(3)青島海洋大学、中国海洋大学

 山東海洋学院は1988年に、青島海洋大学に名称を変更した。さらに2002年には中国海洋大学となった。

 政府の大学重点化政策に従い、1996年には211工程に、2006年には985工程に、2017年には双一流建設政策に採択された。 

4. 規模

(1)規模のデータ

 中国海洋大学の規模に関し、具体的な数値で見たのが下表である。

 中国海洋大学中国第1位の大学 
学部学生数16,000名(83位)鄭州大学 47,000名詳細データ
大学院生数15,600名(37位)中国科学院大学 57,375名詳細データ
専任教師数2,009名(60位)吉林大学 6,506名詳細データ
総予算55.08億元(41位)清華大学 362.11億元詳細データ
留学生数595名(38位)北京大学 6,857名詳細データ

(2)キャンパス

 中国海洋大学は、本部のある崂山キャンパスのほか、同じ青島市内に魚山、浮山、西海岸の3つのキャンパスを有している。

(3)学部

 中国海洋大学は、国務院教育部が定めている12の大分類(日本の大学の学部に相当)について、海洋に係る工学・理学を中心とし、薬学、管理学、経済学、文学、法学、教育学、芸術などの学部(学院)を有している。

5. 研究開発力

 中国海洋大学は、中国の主要大学において60位前後の研究開発力を有すると考えられる。

(1)研究開発力のデータ表

 中国海洋大学の研究開発力を、データとして示したのが下表である。
 このうち、SCI論文数とはクラリベイト社のデータによる論文数、Nature Indexとは世界トップクラスの科学誌・学会誌掲載の論文数による指標、国家自然科学基金委員会(NSFC)の面上項目予算の獲得額である。国家重点実験室は下記(2)、双一流建設政策による学科建設数は下記(3)を参照されたい。

 中国海洋大学中国第1位の大学 
SCI論文数67位中国科学院大学詳細データ
Nature Index65位中国科学技術大学詳細データ
国家重点実験室数なし(ただし、国家実験室を設置)清華大学 13か所詳細データ
双一流学科建設数2学科(38位)北京大学詳細データ
NSFC面上項目予算52位上海交通大学詳細データ

(2)国家重点実験室

 中国海洋大学には国家重点実験室はない。ただ下記の特記事項7.で述べるように、他の研究機関と共同で、国家重点実験室の上位概念である国家実験室を設置している。

(3)双一流学科建設

 中国は2017年に、国内の大学とその学科を21世紀半ばまでに世界一流とすることを目標とする政策(双一流建設政策)を開始した。2022年に改訂された双一流建設政策による学科建設において、中国海洋大学は全体で以下の2学科が選定されている。
 ・海洋科学
 ・水産

(4)NSFC面上項目予算獲得

 日本の科研費に近い予算として、国家自然科学基金委員会(NSFC)が所管する面上項目予算がある。この予算をどの程度獲得するかで、当該大学の研究能力を判定しうる。2019年で中国海洋大学は中国全体で52位である。

6. 国内および国際的な評価

 中国の国内と国際的な評価を示したのが下表である。国内では軟科と中国校友会、国際では英国のQS(Quacquarelli Symonds Limited)とTHE(Times Higher Education)のランキングを示した。また、卒業生の中での傑出科学技術人材数の校友会ランキングも、併せて示した。

 中国海洋大学中国第1位の大学 
軟科ランキング56位清華大学詳細データ
校友会ランキング47位北京大学詳細データ
QSランキング世界801-850位  中国52位北京大学詳細データ
THEランキングランキング外清華大学詳細データ
校友会傑出人材63位北京大学詳細データ

 

7. 特記事項

(1)海洋科学・技術国家実験室

 海洋科学・技術国家実験室(海洋科学与技术国家实验室)は、中国の海洋関連の科学技術資源を統合し、2015年に国務院の科学技術部、山東省、青島市が共同で建設したものである。
 関係する研究機関は、中国海洋大学のほか、中国科学院海洋研究所、国家海洋局第一海洋研究所、中国水産科学研究院黄海水産研究所、青島海洋地質研究所となっている。

(2)観測船

 中国海洋大学のHPによれば、同大学は現在3隻の調査船を所有・運航している。

①東方紅3号

 「東方紅3号」は、中国船舶重工集団が設計建造した海洋総合科学観測船であり、全長103.8メートル、幅18メートル、排水量5,602トンの大型船で、航続距離15,000海里、乗組員110名である。大洋の海水、海底、大気などの観測を行うものであり、併せて学生の教育訓練を行う。
 2018年に進水し、その後ノルウェー船級協会より静粛性認証を取得している。2019年に中国海洋大学に引き渡され、その後、西太平洋などの海洋観測などを実施している。

海洋観測船東方紅3号の写真
東方紅3号  中国海洋大学HPより引用

②東方紅2号

 「東方紅2号」は、中国国内の造船所で建造された大型海洋観測船であり、全長96メートル、幅15メートル、総トン数3,235トン、排水量3,500トンで、航続距離9,000海里、乗組員は196名である。海洋物理学、海洋化学、海洋生物学、海洋地質学など複数の分野にわたる包括的な調査能力を有している。

 1996年から運用が開始され、渤海、黄海、東シナ海、南シナ海などの海洋観測に当たってきた。

東方紅2号  中国海洋大学HPより引用

③天使1号

 「天使1号」は、中国国内の造船所で建造された比較的小型の近海海洋観測兼教育実習船であり、全長34.3メートル、幅7.5メートル、排水量289トンで、航続距離200海里、乗組員は50名である。

 2013年より運用が開始されている。

海洋調査船天使1号の写真
天使1号  中国海洋大学HPより引用

参考資料

・中国海洋大学HP  http://www.ouc.edu.cn/