概要
中央民族大学(Minzu University of China)は北京市にあり、55ある中国の少数民族の幹部養成や、少数民族の歴史・文化などの調査研究を行う高等教育機関である。政府の211工程、985工程、双一流建設政策などの大学重点化政策の対象校である。

1. 名称と所管
(1)名称
・中国語表記 中央民族大学 略称 中央民大、民大
・日本語表記 中央民族大学
・英語表記 Minzu University of China 略称 MUC
(2)所管
国務院・国家民族事務委員会(国家民族事务委员会)の直轄大学である。
国家民族事務委員会は、国務院の最重要組織で日本の各省に当たる組成部門に属し、チワン族、ウィグル族、モンゴル族、回族など55の少数民族の権益保護を目的とする組織である。国家民族事務委員会のトップは主任であり、日本の国務大臣に相当する。
2. 本部の所在地
中央民族大学の本部は、北京市海淀区中関村南大街27号にある。北京市の中心である天安門から北東に5キロメートルほど行ったところにあり、近くには、北京理工大学、北京外国語大学などがある。さらに2キロメートル北に行くと北京大学のキャンパスがある。
3. 沿革
(1)延安民族学院
中央民族学院の前身は、中国共産党が1941年に、当時本拠地としていた陝西省延安に設置した延安民族学院である。同学院は、少数民族の中国共産党幹部、漢民族の少数民族政策担当者などの養成を目的に設置された。
(2)中央民族学院
日本軍が1945年に第二次世界大戦に敗北し、その後の国共内戦を経て中華人民共和国が1949年に建国されると、延安民族学院の関係者の協力を得て1951年に、少数民族の幹部養成を目的とした新たな高等教育機関である中央民族学院が北京に設置された。
1952年に、中国全土で大学・学部の再編政策である院系調整が実施されると、清華大学の社会学科、北京大学の東洋言語学科、燕京大学の社会学科などが中央民族学院に編入された。
その後、民族言語学、歴史学、政治学、芸術学などの学部や学科が増設されていった。
文化大革命終了後の1978年以降、中央民族学院はさらに理学、工学、管理学などの学部学科が拡充され、総合大学となっていった。
(3)中央民族大学
1993年に、中央民族学院は中央民族大学と名称を変更した。
1999年には211工程の大学に選定された。2004年には985工程の大学に選定された。2017年に開始された双一流建設政策において、一流大学建設A類の対象大学となった。
4. 規模
(1)規模のデータ
中央民族大学の規模に関し、具体的な数値で見たのが下表である。中国の重点大学の中では、小規模な大学の一つである。
| 中央民族大学 | 中国第1位の大学 | ||
| 学部学生数 | 12,075名(102位) | 鄭州大学 47,000名 | 詳細データ |
| 大学院生数 | 7,131名(102位) | 中国科学院大学 57,375名 | 詳細データ |
| 専任教師数 | 1,159名(ー) | 吉林大学 6,506名 | 詳細データ |
| 総予算 | ー | 清華大学 362.11億元 | 詳細データ |
| 留学生数 | 500名(39位) | 北京大学 6,857名 | 詳細データ |
(2)キャンパス
中央民族大学は、本部のあるキャンパスに加え、北京市豊台区にある豊台(丰台)キャンパス、中国南部の海南省にある海南キャンパスを有している。
(3)学部
中央民族大学は、国務院・教育部が定めている12の大分類(日本の大学の学部に相当)について、民族言語文学、民俗学・社会学を中心とし、管理学、哲学、文学、法学、教育学、芸術学、理学などの学部を有する総合大学である。
5. 研究開発力
中央民族大学は、少数民族幹部養成のための人文社会学を中心とした大学であるため、研究開発力はそれほど大きくない。
(1)研究開発力のデータ表
中央民族大学の研究開発力を、データとして示したのが下表である。
このうち、SCI論文数とはクラリベイト社のデータによる論文数、Nature Indexとは世界トップクラスの科学誌・学会誌掲載の論文数による指標、国家自然科学基金委員会(NSFC)の面上項目予算の獲得額である。双一流建設政策による学科建設は下記(3)を参照されたい。
| 中央民族大学 | 中国第1位の大学 | ||
| SCI論文数 | 100位以下 | 中国科学院大学 | 詳細データ |
| Nature Index | 200位以下 | 中国科学技術大学 | 詳細データ |
| 国家重点実験室数 | なし | 清華大学 13か所 | 詳細データ |
| 双一流学科建設数 | 1学科(44位) | 北京大学 | 詳細データ |
| NSFC面上項目予算 | ー | 上海交通大学 | 詳細データ |
(2)国家重点実験室
中央民族大学には、国家重点実験室はない。
(3)双一流学科建設
中国は2017年に、国内の大学とその学科を21世紀半ばまでに世界一流とすることを目標とする政策(双一流建設政策)を開始した。2022年に改訂された双一流建設政策による学科建設において、中央民族大学は1学科、民族学が選定されている。
6. 国内および国際的な評価
中国の国内と国際的な評価を示したのが下表である。国内では軟科と中国校友会、国際では英国のQS(Quacquarelli Symonds Limited)とTHE(Times Higher Education)のランキングを示した。また、卒業生の中での傑出科学技術人材数の校友会ランキングも、併せて示した。
これで見ると中央民族大学は、中国国内では主要大学の中で80位前後にあるが、国際的には評価がない。
| 中央民族大学 | 中国第1位の大学 | ||
| 軟科ランキング | 80位相当 | 清華大学 | 詳細データ |
| 校友会ランキング | 81位 | 北京大学 | 詳細データ |
| QSランキング | ランク外 | 北京大学 | 詳細データ |
| THEランキング | ランク外 | 清華大学 | 詳細データ |
| 校友会傑出人材 | 87位 | 北京大学 | 詳細データ |
7. 特記事項~中国の少数民族
中国の維基百科HPの情報によれば、2021年の統計上、約14億人を数える中国の国民の中で最も多いのは漢民族で、漢民族は中国国民の約92%、約12億8千万人とされている。
漢民族以外の中国国民は55の少数民族に属し、人口の約8%で約1億人といわれている。これら55の民族のうち、2021年の統計での人口数を見ると、上位5つの民族は次の通りである。
1.チワン族(壮族):1,957万人。広西チワン族自治区、雲南省、広東省、貴州省などの山間部に居住。
2.ウイグル族(维吾尔族):1,177万人。新疆ウイグル自治区を中心に居住。
3.回族:1,138万人。言語・形質は漢民族と同等。イスラム教の信者で中国全土に居住。
4.ミャオ族(苗族):1,107万人。貴州省を中心に、雲南省、湖南省、広西チワン族自治区などの山間部に居住。
5.満州族(满族):1,042万人。清朝を建国した民族の末裔で、遼寧省など中国東北部を中心に居住。
これらの少数民族以外で、日本になじみのある少数民族では、モンゴル族(蒙古族)は9位で約629万人、朝鮮族は15位で約170万人となっている。
中央民族大学は、これら55の少数民族の幹部養成や、少数民族の歴史、文化などの調査研究を行うための中心的な高等教育機関である。
参考資料
・中央民族大学HP https://www.muc.edu.cn/index.htm
・維基百科HP 中国少数民族


