概要

 中国水産科学研究院(中国水产科学研究院、Chinese Academy of Fishery Sciences)は、中国の漁業・水産分野における基礎研究、応用研究、ハイテク研究などを任務としている。

1.名称

○中国語:中国水产科学研究院 略称:水科院
○日本語:中国水産科学研究院
○英語:Chinese Academy of Fishery Sciences 略称:CAFS

中国水産科学研究院の写真
中国水産科学研究院 維基百科HPより引用

2.所管

 国務院農業農村部の所管である。

3.所在地

 本部は、北京市豊台区永定路南青塔村150号にある。北京の中心である天安門から見て、約12キロメートルほど西に行ったところにある。

4.沿革

(1)前史

 第二次世界大戦後の1947年に、国民政府農林部が上海に設置した「農林部中央水産実験所(农林部中央水产实验所)」が、中国の水産科学技術に係る研究所の先駆けである。

 国共内戦の末に、人民解放軍が勝利すると、中央水産実験所は中国共産党に接収されて青島に移転し、1949年9月に「中央人民政府食品工業部水産実験所(中央人民政府食品工业部水产实验所)」となった。これが、現在も存在して活動を続けている「黄海水産研究所(黄海水产研究所)」である。

 中華人民共和国建国後の1956年に、国務院・水産部が設立され、上記の水産実験所もその傘下の研究機関となった。
 水産部は文化大革命の前、黄海水産研究所、東海水産研究所、南海水産研究所、長江水産研究所、漁業機械装置研究所を直轄研究機関として有していた。

 文化大革命が開始されると、文革革命派は国務院の抜本的な変革を進め、水産部に所属していた5つの研究機関の地方組織への移転を進めた。 

(2)中国水産科学研究院の設立

 1976年末に四人組が逮捕され、文化大革命が終了した。これを受けて、水産科学に特化した研究機関の設立が農林部内で議論され、1978年に中国水産科学研究設計院(中国水产科学研究设计院)が設置された。

 1979年に農林部のうち林業部門が独立して林業部となり、農林部の名称が農業部となった。このため、同設計院も農業部の所管となった。

 同設計院は1980年に、「中国水産科学研究院(中国水产科学研究院)」と名称を変更し、これが現在に至っている。

5.組織・規模

(1)使命

 中国水産科学研究院は、漁業・水産業における重要な基礎研究、応用研究、ハイテク産業発展研究を担い、科学技術による漁業・水産業の振興、ハイレベルな科学研究人材の育成、国内外の水産科学技術交流・協力の推進を行っている。

 なお中国において、中国水産科学研究院以外の農林水産関係研究機関として、農業農村部所管の研究機関である「中国農業科学院(中国农业科学院)」と「中国熱帯農業科学院(中国热带农业科学院)」、および国家林業・草原局所管の研究機関である「中国林業科学研究院(中国林业科学研究院)」がある。

(2)職員数

 中国水産科学研究院のHPが日本から閲覧できないため百度HPの情報を参考として記述すると、2014年時点の総職員数は2,931名である。このうち、科学技術人員は1,881名となっている。

(3)本部組織

 中国水産科学研究院のトップは院長であり、中国共産党委書記、副院長などが指導部となっている。
 本部機構として、人事処、人材工作処、学科・プラットフォーム処、科研処、財務処、国際合作処、成果転化処などが置かれている。

(4)下部組織

 中国水産科学研究院は下部組織(院属単位と呼んでいる)として、9の組織を有している。具体的には、次の通り。
○海区研究所(3)
  ・黄海水産研究所
  ・東海水産研究所
  ・南海水産研究所
○流域研究所(4)
  ・黒竜江水産研究所
  ・長江水産研究所
  ・珠江水産研究所
  ・淡水漁業研究センター(淡水渔业研究中心)
○専門研究所(2)
  ・漁業機械装置研究所(渔业机械仪器研究所)
  ・漁業工学研究所(渔业工程研究所)

(4)研究生の受け入れ~無錫水産学院

 中国の主要な研究機関では、大学の学士学位を取得した人たちを大学院生として受け入れて、修士学位や博士学位を取得させる制度が存在している。これらの学生を研究生と呼ぶ。
 中国水産科学研究院の場合、傘下に研究生を学ばせる研究院は無く、代わりとして南京農業大学と下部組織の淡水漁業研究センターが共同で無錫水産学院を設置している。2026年度で、学部生43名、大学院生74名が卒業する予定である。

7.特記事項

(1)四つの近代化に含まれる「農業」

 歴代の中国の王朝では、民の食糧確保が統治の正当性を示す重要な要素であり、食糧確保のための農業技術の改革改良は国の大きな課題であった。中華人民共和国建国後も状況は変わらず、国民を飢えさせないことが大きな国家目標であり、それを支える農業技術の振興は重要な政策であった。

 四人組逮捕により文革が終了し、1977年7月に復活した鄧小平副首相は、翌1978年3月に北京で開催された全国科学大会で、「農業、工業、国防、科学技術の近代化を実現し、我が国を近代的強国とすることは、我が国人民の歴史的使命である」と強調した。これにより、四つの近代化(四个现代化、直訳で四つの現代化とも呼ばれる)が国家目標となり、そこに工業、国防、科学技術と並んで農業が含まれた。

 この四つの近代化の農業の中には、漁業・水産業も当然含まれる。

(2)海洋科学調査船

 中国水産科学研究院は「藍海101号」、「北斗号」、「南鋒号」という3つの大きな海洋調査船を有している。

○「藍海101号」

 藍海101号は、山東省青島市にある黄海水産研究所が管理・運用する海洋科学調査船である。
 全長84.50メートル、主機関出力2,720キロワット、総トン数2,783トン、航続距離1万海里、最高速度14.5ノット、航続日数60日、乗組員60名を擁し、水産資源、生物環境、物理化学環境、音響評価・リモートセンシング、水産生物学などを実習している。

藍海101号の写真
藍海101号 黄海水産研究所のHPより引用

○「北斗号」

 北斗号は、山東省青島市にある黄海水産研究所が管理・運用する漁業資源調査船である。
 ノルウェー政府が建造し、1984年に中国政府に供与された。全長56.4メートル、総トン数1,165トンで、乗組員は56名である。船内には、音響調査機器室、水文学実験室、魚類実験室、海洋化学実験室、物理海洋学実験室が設置されている。

北斗号の写真
北斗号 黄海水産研究所のHPより引用

○「南鋒号」

 南鋒号は、中国初の海洋漁業資源と環境保全を総合的に観測する科学調査船であり、広東省広州市にある南海漁業研究所に所属している。
 総トン数1,537トン、排水量1,950トン、航続距離8,000海里、航続距離60昼夜である。南シナ海の漁業資源と環境に関する科学的調査を主な任務としている。

南鋒号の写真
南鋒号の写真 南海水産研究所の写真を引用

(3)中国科学院などとの相違

 中国において、英語の組織名にAcademyが付く機関として、中国科学院中国工程院中国社会科学院の3機関がある。これら3機関は、米国科学アカデミー、英国王立協会、フランス学士院などと同様に、中国における優れた科学者を顕彰する機能を有しており、院士あるいは学部委員(両方ともAcademicianと呼ばれる)を選任している。
 一方中国水産科学研究院は、英語名にAcademyが付くが、上記3機関と違って科学者顕彰機能は有していない。これは農業科学研究院と同様である。

参考資料

・中国水産科学研究院HP www.cafs.ac.cn (日本からは閲覧できず)
・黄海水産研究所HP http://www.ysfri.ac.cn/
・維基百科HP 中国水产科学研究院
・百度HP 中国水产科学研究院
・百度HP 预计5.7万名!在锡高校2026届毕业生数据发布