「国家創新駆動発展戦略綱要」(2016年)

 国家創新駆動発展戦略綱要(「国家创新驱动发展战略纲要」)は、2050年までを見据え、2030年までの15年間をカバーする科学技術の中長期戦略であり、2016年に公表された。

国家創新駆動発展戦略綱要の策定経緯

 2016年5月20日、中国共産党中央と国務院は、「国家創新駆動発展戦略綱要:国家创新驱动发展战略纲要」を公表した。この綱要は、2006年の国家中長期科学技術発展計画綱要(2006年~2020年)を基礎とし、2012年の中国共産党全国代表大会での「創新駆動発展戦略の提唱」を踏まえて作成された中長期的な計画である。

 本綱要は、2050年までを見据え、2030年までの15年間をカバーする中長期戦略であり、2006年の綱要を基本的に踏襲しつつ、その後の世界や中国国内での経済社会の状況を踏まえて若干の修正を加えようとするものであり、2006年の綱要は依然として有効である。

 本綱要は、中国の経済の進展、科学技術の発展、ハイテク企業の増加などを踏まえ、より一段と科学技術イノベーションへの投資を強化することにより、建国後100年で中国を科学技術イノベーション大国に押し上げ、中国の夢を実現しようとしており、この前後に打ち出された様々なハイテク産業戦略のベースとなっている。

国家創新駆動発展戦略要綱の内容

以下に、2006年綱要との対比において、今回の綱要の要点を見たい。

戦略目標

 まず戦略目標であるが、2006年綱要では、目標に以下の記述がある。
・基礎科学と最先端技術の研究における総合力を高め、世界に影響をもたらす研究成果を複数上げ、創新型国家の仲間入りを果たし、今世紀中葉に科学技術強国になるための基盤を固める。

 これが、今回の目標では、以下の記述となっている。
・第一段階:2020年までに創新型国家の仲間入りを果たし、小康社会の建設を目標とする。
・第二段階:2030年までに創新型国家の上位に食い込み、経済・社会を発展させ、国際競争力を向上させ、経済強国および共同富裕社会の建設の基礎を固める。
・第三段階:2050年までに世界に冠たる科学技術創新強国となり、世界の科学技術の中心およびイノベーションの先導者となり、中華民族の偉大な復興という中国の夢を実現する。

国家科学技術重大特定プロジェクト

 ナショナルプロジェクトの位置づけである国家科学技術重大特定プロジェクト(National Science and Technology Majer Project)」は、2006年の綱要で13個のプロジェクトが取り上げられ、その直後に公表された第11次五か年計画でより具体化された。2008年から実施され、2011年の第12次五か年計画においても継続されている。

 今回の綱要では、2006年綱要の13個のプロジェクトを継続して実施することと併せ、2030年に向けての新たなプロジェクトとして、次のものを例記し、内容の検討実施を促している。
・航空エンジンとガスタービン(できるだけ早期に実施)
・量子通信
・情報ネットワーク
・知能製造とロボット
・深宇宙深海探査
・重点新材料と新エネルギー
・脳科学
・健康医療

産業技術重点領域

 2006年綱要では、将来の課題に対応し経済と社会の発展を導く創新能力を高めるため、バイオテクノロジー、情報技術、新材料技術、先進製造技術、先進エネルギー技術、海洋技術、レーザー技術、航空宇宙技術の8つの先端技術領域を選定している。

 今回の綱要では、2030年に向けての産業技術重点領域として、次の10の技術領域を特定している。
・次世代ICT技術
・スマート・グリーン製造技術
・先端農業技術
・先端エネルギー技術
・資源の効率的利用および環境保護技術
・海洋および宇宙技術
・スマートシティ・デジタル社会技術
・ヘルスケア技術
・先端サービス技術
・産業変革技術

参考資料

・中国人民網HP 「中共中央国务院印发《国家创新驱动发展战略纲要》