973計画の開始(1997年)

 973計画は、基礎研究の重点プロジェクトに資金援助することにより、産業やイノベーションの発展を強化するものである。

策定経緯

 改革開放以降中国では、科学技術振興への競争的資金プロジェクトとして、国家科学技術難関突破計画、星火計画、863計画などが相次いで開始された。

 973計画の正式名称である「国家重点基礎研究発展計画:国家重点基础研究发展计划」もその流れにある政策一つであり、科教興国戦略で基礎研究の重点プロジェクトに資金援助することにより、世界の最前線に追いつき、基礎研究の成果を転化して産業やイノベーションの発展を強化しようとするものである。
 朱鎔基首相により1997年3月に実施が決定されたことから、「973計画:973计划」と呼ばれる。国務院の科学技術部の所管である。

具体的な内容

 国家自然科学基金委員会によって行われている基礎研究を支援するプログラムが研究者からのボトムアップ的発想から生まれる基礎研究を支援するのに対し、973計画は国家の戦略的ニーズを満たすため予め国が具体的な分野や達成目標を決定し、それに対して研究者が応募する形を取る。各プロジェクトは、2年間の研究開発後、中間評価を経て、さらに3年間研究開発を続ける。

 戦略的重点領域としては、農業、エネルギー、情報、資源と環境、人口問題とヘルスケア、材料などの分野の重要なテーマに及ぶ。国の経済と社会の発展に重要な影響を及ぼすこれらの関連分野における先端技術の研究を奨励し、持続可能な社会・経済的発展のための強固な科学技術の基盤を築く。

 「第10次科学技術教育発展5カ年計画」期間中、973計画ではイノベーション能力を向上させるという基本的な方針の下で、以下の3つの任務を遂行するとしている。
・国家の社会的、経済的発展に資する研究を支援する。農業、エネルギー、ICT、資源と環境、ヘルスケア、材料などの分野における基礎研究を強化する。
・基礎研究のためのハイレベル人材やイノベーション能力を持つ要員を育成する。
・短期間で迅速な結果を追求することを避け、科学的な評価制度および管理システムを確立する。

973計画の成果

 973計画により10年間で18,000人の研究者が支援を受け、その中から中国科学院・工程院両院の院士は502名、国家傑出青年科学基金獲得者637人、中国科学院百人計画当選者140人、教育部“長江学者奨励計画”特別招聘教授242人が出ている。
 なおこの973計画は、2016年に研究開発資金改革の一環で、863計画、国家科学技術支援計画、国際科学技術協力・交流特別プロジェクトなどと統合され、国家重点研究開発計画となった。

参考資料

・科学技術部HP 『国家重点基础研究发展计划(973计划)
・百度HP 『国家重点基础研究发展计划(973计划)