国家自然科学基金委員会(NSFC)の設置(1986年)

 国家自然科学基金委員会(NSFC)は、大学や研究機関の基礎研究に対して競争的な資金援助することを目的に、1986年に国務院に設置された。

国家自然科学基金委員会
国家自然科学基金委員会(NSFC)

設立の経緯

 1981年5月、中国科学院の学部委員(現在の中国科学院院士)89名が連名で国務院に書簡を出し、基礎研究に競争的な資金援助することを目的に、中国科学院に科学基金を設立するよう提案した。この提案は中国共産党中央と国務院の承認を得た後、1982年3月には中国科学院の内部組織として科学基金委員会が設立された。
 1982年から申請を受け付け、1986年には計4,424の課題に資金援助し、総額は1億7,200万元に達した。このうち中国科学院のプロジェクトは14.6%で、大学などの高等教育機関が74.8%と大半を占め、残りは民間など他の研究機関であった。

 このように当初は中国科学院の内部資金配分システムであったが、資金配分を受けた研究者は中国科学院以外が大半であり、中国全体で対応すべきであると考えた中国共産党中央は、前述する1985年3月に発出した「科学技術体制の改革に関する決定」において、「基礎研究および一部の応用研究事業に対し、科学基金制を徐々に試行する」との方針を記載した。
 この決定を受けて1986年2月に、国務院は中国科学院と同格となる直属事業単位として、国家自然科学基金委員会を設立した。米国の国立科学財団(NSF:National Science Foundation)をモデルとして設立されたこともあり、同委員会は「NSFC:National Natural Science Foundation of China」と略称されている。

国家自然科学基金委員会の業務

 同委員会は、国の科学技術発展の方針・政策に基づき基礎研究および一部の応用研究を国の資金で助成する組織である。その予算総額は、2005年は26.95億元(約364億円)から、2018年の295億元(約5千億円)と、急激に増加している。

 主な業務は次の通りである。
・基礎研究と科学技術人材育成の助成計画の策定と実施、プロジェクト申請の受理と審査、助成プロジェクトの管理、適切な科学研究資源配置の促進、イ ノベーションの環境整備
・国家発展基礎研究の政策方針と計画の策定、国家の科学技術発展問題のコンサルティング
・外国の科学技術管理部門、資金助成機関および学術組織との国際協力
・国内における他の科学基金のサポート。

 なおNSFCは、2018年の競争的資金改革の一環で科学技術部の傘下の組織として再編された。

参考資料

・国家自然科学基金委員会HP  http://www.nsfc.gov.cn/