はじめに

 カレン・セト(Karen Ching-Yee Seto、司徒静儀、司徒静仪)イェール大学教授は、中国系米国人の地球環境、都市計画の専門家であり、2026年にベンジャミン・フランクリン・メダルを受賞した。

カレン・セトの写真
カレン・セト  イェール大学HPより引用

生い立ちと教育

 カレン・セト(Karen Ching-Yee Seto、司徒静儀、司徒静仪)は、香港で生まれた。彼女の祖籍(先祖の出身地)は、広東省開平市である。生年は公表されていないが、大学卒業年次が1991年であることから、1969年頃と推測される。

 姓であるセトは、「司徒」をローマ字で「Seto」としたものである。「司徒」は、祖籍である広東省開平市に多くある姓で、元々古代中国・周などで、土地や戸籍、教育などを司った官職名に由来する。当初は華北が中心であったが、時代が下るに従い大陸南部に移り、その後華僑として、香港などを通じて海外にも進出した。中国全体で約5万人いると言われている。
 一般的に中国人の姓としては一字姓が圧倒的であり、「司徒」のような二字姓は中国人全体の1パーセント程度である。ただ、前漢の時代に史記を書いた司馬遷や、三国志時代の軍師・諸葛孔明など、日本で知られている二字姓の人物もいる。

 カレン・セトは、幼いころに両親と米国カリフォルニアに移住した。両親の情報はネットにはない。

 ロサンジェルスの郊外のポモナ(Pomona)にあるポモナ・カトリック・ハイスクール(Pomona Catholic High School)を卒業し、カリフォルニア大学サンタバーバラ校に入学し、政治学を専攻した。
 1991年にカリフォルニア大学サンタバーバラ校から政治学の学士学院を取得し、東部のボストン大学大学院に進んだ。
 ボストン大学では、国際関係論と資源環境管理の統合コースで学び、1995年に修士学位を取得した。引き続きボストン大学で学び、2000年に地理学で博士学位を取得した。

都市化による環境変化を研究

 カレン・セトは、2000年にスタンフォード大学の教員となり、さらに2008年にはイェール大学に移って森林・環境学の准教授に就任した。
 2013年には、地理学・都市化科学(Geography and Urbanization Science)の正教授に昇任した。

 カレン・セトは、都市地理学、リモートセンシング(衛星画像解析)、地球環境変化などの分野で研究を行っていて、都市化が地球環境や気候変動、生態系に与える影響の可視化と予測で世界的な成果を挙げている。

 カレン・セトは、NASAのLandsat(ランドサット)などの衛星データを用いて、地球規模での都市の広がりを測定・予測する手法を確立した。そしてこの手法を用いて、今世紀初頭から2030年までに世界の都市面積が約3倍(120万平方キロメートル増加)に拡大し、それによって生物多様性や熱帯林が深刻な打撃を受けることを定量的に示し、国際的な警鐘を鳴らした。

 カレン・セトは、国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)において、第5次(2014年)および第6次(2022年)評価報告書の「第3作業部会(都市の気候変動緩和策)」の責任者を務め、世界中の都市がどのようにインフラや計画を見直せば温室効果ガスを削減できるかという具体的なロードマップ構築を主導している。

ベンジャミン・フランクリン・メダルを受賞

 カレン・セトは2026年に、ベンジャミン・フランクリン・メダル(Benjamin Franklin Medal)を地球・環境科学の功績で受賞した。受賞の理由は、「衛星画像、モデリング手法、社会科学を統合し、都市化、土地利用、地球規模の環境変化の影響を分析した先駆的な研究に対して(For pioneering work integrating satellite imagery, modeling methods, and social sciences to analyze the consequences of urbanization, land use, and global environmental change)」であった。

 ベンジャミン・フランクリン・メダルは米国フィラデルフィアにあるフランクリン協会から贈られる科学技術賞であり、この受賞者から多くのノーベル賞受賞者を出していて、日本人では中村修二(2002年・工学)、小柴昌俊 (2003年、物理学)、真鍋淑郎 (2015年、地球科学・環境科学)などの科学者が受賞している。
 中国系の受賞者としては、2008年のデボラ・ジン(Deborah Jin、金秀蘭、1968年~2016年)、2015年のショウチェン・チャン(張首晟、1963年~2018年)、2016年のシュー・チェン(Shu Chien、銭煦、1931年~)などがいる。

中国との関係

 カレン・セトは、急激に経済成長を続けている中国に深い関心を有し、人工衛星画像解析と現地調査を組み合わせ、中国の都市拡大のプロセスや環境への影響を研究している。

 1990年代以降、中国の急速な経済発展に伴い、山が削られ、農地や川が超高層ビル群や道路へと変わっていく様子をデータ化し、都市の水平・垂直方向への広がりを体系的に分析してきた。その成果として、「10,000 Shovels: Rapid Urban Growth in China」という教育用の短編ドキュメンタリー映画を、自らの総指揮で製作している。

 また、カレン・セトは2019年に、自らが属する米国科学アカデミー(NAS)と中国科学院との合同ワークショップ「米中における都市サステナビリティの推進(Advancing Urban Sustainability in China and the United States)」の委員会で共同議長を務めた。

 これらの業績により、2023年に中国科学院の外籍院士に選出されている。

参考資料

・イェール大学HP Karen C. Seto https://environment.yale.edu/directory/faculty/karen-seto
・时代学者HP 2位华人学者入选!2026富兰克林奖得主揭晓 https://www.shidaixuezhe.com/50061.html
・維基HP 司徒静仪
・The Franklin Institute HP Karen C. Seto https://fi.edu/en/awards/laureates/karen-c-seto