概要
中国医学科学院(Chinese Academy of Medical Sciences)は、医学分野における基礎研究、臨床研究、ハイテク研究などを任務としている。元々は違う組織であった高等教育機関・北京協和医学院と一体で運用されている。

1.名称
○中国語:中国医学科学院 略称:医科院
○日本語:中国医学科学院
○英語:Chinese Academy of Medical Sciences 略称:CAMS
2.所管
3.所在地
中国医学科学院の本部は、北京市東城区東単三条9号にある。紫禁城の東、北京の繁華街で知られる王府井(わんふーちん)に近い。北京の中心部を東西に貫く長安街の少し北に入ったところである。北京協和医学院と同じ建物にある。
4.沿革
(1)前史
中国医学科学院の母体は、1929年に上海に設置された国民政府衛生部の「中央衛生試験所(中央卫生试验所)」である。
設置の後に、政治的な混乱や日中戦争の影響を受け、名称を変えつつ、場所を南京、重慶に移して活動を続け、第二次世界大戦後、「中央衛生実験院総院(中央卫生实验院总院」)として、再び南京に戻った。
(2)中央衛生研究院
国共内戦で中国共産党が勝利し中華人民共和国が建国されると、中央衛生実験院総院は1950年に北京に移り、名称を「中央衛生研究院(中央卫生研究院)」とした。
(3)中国医学科学院
1956年に中央衛生研究院をベースとし、中国全体の医学衛生に関する国家的専門機関として、「中国医学科学院」が設置された。
翌1957年には、中国医学科学院と北京協和医学院は、双方の組織のトップを同一人物とし一体で運用することとなった。
これが現在に至っている。
5.組織
(1)使命
中国医学科学院は、中国の医学研究と医学教育における最高水準にある機関として、中国国民の健康を守り医学技術教育を主導することを使命としている。
中国医学科学院の人員等の規模に関し、HPで公表されているのは、博士指導者(博士生导师、英語でProfessorと呼ぶ)数1,032名、修士指導者(硕士生导师)数1,231名のみである。
(2)本部組織
中国医学科学院のトップは院長であり、その他中国共産党党委書記、副院長などが指導部となっている。
本部機構として、人事処、企画発展処、財務処、科技管理処、医院事務処、産業処、国際合作処などが置かれている。
(3)下部組織
中国医学科学院は、下部研究組織(科研系統と呼んでいる)として、21の組織を有している。
具体的には次の通りであり、これらの研究組織の所在地は、北京市が13か所、天津市が4か所、江蘇省南京市、江蘇省蘇州市、四川省成都市、雲南省昆明市がそれぞれ1か所となっている。
・基礎医学研究所(基础医学研究所)
・臨床医学研究所(临床医学研究所)
・国家心臓血管病センター(国家心血管病中心)
・国家がんセンター(国家癌症中心)
・整形外科研究所
・血液学研究所(在・天津市)
・皮膚病研究所(皮肤病研究所、在・江蘇省南京市)
・薬物研究所(药物研究所)
・医薬生物技術研究所(医药生物技术研究所)
・薬用植物研究所(药用植物研究所)
・医学情報研究所(医学信息研究所)
・医学実験動物研究所(医学实验动物研究所)
・微小循環研究所(微循环研究所)
・病原生物学研究所
・放射線医学研究所(放射医学研究所、在・天津市)
・生物医学工学研究所(生物医学工程研究所、在・天津市)
・輸血研究所(输血研究所、在・四川省成都市)
・医学生物学研究所(在・雲南省昆明市)
・システム医学研究院(系统医学研究院、在・江蘇省蘇州市)
・天津医学健康研究院(在・天津市)
(4)附属医院
中国医学科学院は、北京協和医学院と一体的に運営される中で、次の6の附属医院を臨床研究を目的として運営している。
・北京協和医院(北京协和医院)
・中国医学科学院心臓血管外科医院(中国医学科学院阜外医院)
・中国医学科学院腫瘍医院(中国医学科学院肿瘤医院)
・中国医学科学院整形外科医院
・中国医学科学院血液病医院(在・天津市)
・中国医学科学院皮膚病医院(中国医学科学院皮肤病医院、在・江蘇省南京市)
(5)国家的な研究組織
中国医学科学院は、北京協和医学院と一体的に運営される中で、次の6つの国家重点実験室、4つの国家臨床医学研究中心を有している。
①国家重点実験室
・難病・希少疾患 (北京協和医院)
・心臓血管病 (心臓血管外科医院)
・分子腫瘍学 (腫瘍医院)
・医学分子生物学 (基礎医学研究所)
・天然薬物活性物質・効能 (薬物研究所)
・実験血液学 (血液病医院)
(註)括弧内は実験室が置かれている中国医学科学院の部局である。
②国家臨床医学研究中心
・心臓血管 (心臓血管外科医院)
・悪性腫瘍 (腫瘍医院)
・皮膚・免疫 (北京協和医院)
・血液系疾病 (血液病医院)
(註)括弧内が研究中心が置かれている中国医学科学院の部局である。
7.特記事項
(1)初代院長・沈其震
中国医学科学院の初代院長は、沈其震(Qizhen Shen、1907年~1993年)である。在任期間は1956年から1958年である。

沈其震は大陸西部の重慶生まれで、中国で医学の基礎を学んだ後、日本の東京帝国大学医学部に留学した。同大学から博士学位を取得して帰国した後、中国共産党に身を投じ、日中戦争などで人民解放軍の医学的な顧問を務めた。新中国建国後に、初代の中国医学科学院院長に就任した。
詳しくはこちらを参照されたい。
(2)第三代院長・呉階平
中国医学科学院の第三代院長は、呉階平(吴阶平、Jieping Wu、1917年~2011年)である。在任期間は1983年から1984年である。

呉階平は江蘇省常州市生まれで、北京協和医学院を卒業し北京大学医学部の教授などを務めた著名な泌尿器科医師であり、周恩来首相やインドネシアのスカルノ大統領の主治医であったことでも有名である。
詳しくはこちらを参照されたい。
(3)中国科学院などとの相違
中国において、英語の組織名にAcademyが付く機関として、中国科学院、中国工程院、中国社会科学院の3機関がある。これら3機関は、米国科学アカデミー、英国王立協会、フランス学士院などと同様に、中国における優れた科学者を顕彰する機能を有しており、院士あるいは学部委員を選任している。
一方中国医学科学院は、英語名にAcademyが付くが、上記3機関と違って科学者顕彰機能は有していない。これは農業関連の農業科学研究院などと同様である。
参考資料
・中国医学科学院HP(北京協和医学院HPと同じ) https://www.pumc.edu.cn/index.htm
・百度百科HP 中国医学科学院

