中国科学院学部委員制度の開始(1955年)
中国科学院学部委員は、科学者の智恵を結集し中国の科学技術を振興するため指名されるもので、1955年に開始された。現在は、中国科学院院士と呼ばれており、中国の科学者の最高栄誉と考えられている。
学部の設置
中国科学院は、1949年の設立直後より専門委員を任命し、多くの重要な意思決定に先立ち意見聴取していた。
1955年6月に専門委員制度を強化する形で、学術分野ごとに「学部(Academic Divisions)」を設置し、そこに関連の研究者を集めて委員会を立ち上げて傘下の研究所の指導を行う方針を決定し、学部委員199名を指名した。
この学部委員は英語ではAcademicianであり、英国、フランス、ソ連などの学術分野における最高の栄誉称号を模したものである。
錚々たる設置時の各学部主任
設置当初には、物理学数学化学部、生物学地学部、技術科学部、哲学社会科学部の4つの学部が置かれた。各学部の主任は次の通り。
物理学数学化学部主任:呉有訓
生物学地学部主任:竺可楨
技術科学部主任:厳済慈
哲学社会科学部主任:郭沫若
中国科学院院士に名称を変更
文化大革命期間中には、中国科学院の活動が大きな影響を受け、この学部の活動も停止した。文革終了後に学部の活動を再開し、1994年1月に学部委員の名称を「中国科学院院士」に改称した。
2020年3月現在で、中国科学院院士数は826名である。各学部別に見ると、数理物理学学部155名、化学部132名、生命科学・医学学部152名、地学部138名、情報技術科学部99名、技術科学部150名となっており、それ以外に外国籍の院士が107名である。
中国科学院院士は、後に分化した中国工程院の院士と共に科学技術分野の最高の栄誉称号であり、院士になることが理工系の研究者の大きな目標となっている。また、これらの院士同士での議論を経て、科学技術の重要なテーマについて政府に意見を述べる立場にある。
参考資料
・中国科学院HP http://www.cas.cn/