概要
中国林業科学研究院(中国林业科学研究院、Chinese Academy of Forestry)は、中国の林業分野における基礎研究、応用研究、ハイテク研究などを任務としている。

1.名称
○中国語:中国林业科学研究院 略称:中国林科院
○日本語:中国林業科学研究院
○英語:Chinese Academy of Forestry 略称:CAF
2.所管
国務院の国家林業・草原局の所管である。同局は、国務院の自然資源部の管理を受ける部委管理国家局の一つであり、森林、草原、湿地、砂漠、陸生生物の管理を担当している。
3.所在地
中国林業科学研究院の本部は、北京市海淀区頤和園香山路東小府1号にある。北京市の中心である天安門から見て直線距離で約10キロメートル西北に位置し、北京大学の南側にある。また、清朝の庭園である頤和園は西に、アロー戦争で破壊された円明園は北にある。
4.沿革
(1)前史
中国における林業研究の始まりは、清朝末期に北京などで相次いで設置された高等教育機関の林学科などであり、主として苗木栽培や果樹栽培に関する試験研究が行われた。
1889年に京師大学堂(北京大学の前身)が設置され、その農学部(農科)が林学研究を行った。
1901年に山西農林学堂が設置され、農科と林学科が設置された。
1902年に保定直隷農務学堂が設置され、林学科が設置された。
1904年に山東省済南に林業試験場が設置された。
1906年に北京に農事試験場が設置され、そこに農科と林学科が設置された。
(2)辛亥革命後の林業研究
1911年に辛亥革命により清朝が滅亡すると、新政府は植林管理、種苗育成などの観点から、林業関係の試験場の設置を目指した。
1912年に北京市の天壇に天壇林芸試験場(天坛林艺试验场)が設置された。翌1913年に北京市の西山(西郊董四墓村、現在の中国林業科学院の所在地)に、林芸試験場の分場として西山造林苗圃が設置された。西山造林苗圃では、主としてシロマツの植林研究が実施されており、このシロマツは現在も残っている。
その後、林芸試験場は北平模範林場(北平模范林场)となり、西山造林苗圃は北平模範林場西山分場(北平模范林场西山分场)と改名した。北平は北京の当時の名称である。
1937年に盧溝橋事件が勃発し、北京は日本軍に占領されたため、西山分場も接収されて西山林場(西山林场)となった。1941年には、中央林業実験所(中央林业实验所)と改名した。
(3)林業科学研究所
日本が1945年に第二次世界大戦に敗北し、中央林業実験所が中国に返還され、国交内戦の後に中華人民共和国が建国されると、同実験所は中央政府の林墾部の所管となって、林業科学研究所(林业科学研究所)と改名された。その時点での主要な業務は、造林、木材工業、林産化学であった。
(4)中国林業科学研究院
1958年、林業科学研究所をベースとして、それまで地方にあった林業関係の研究機関などを統合した「中国林業科学研究院(中国林业科学研究院)」が設置された。
文化大革命時の1970年に、他の農業関係の研究機関と統合され中国農林科学研究院となったが、文革後に再び独立して中国林業科学研究院となった。これが現在に続いている。
5.組織・規模
(1)使命
中国林業科学研究院は、林業における重要な基礎研究、応用研究、ハイテク産業発展研究を担い、林業一般、木材、森林化学、林業機械、森林経済、熱帯・亜熱帯林業などの分野における科学技術振興、ハイレベルな科学研究人材の育成、国内外の林業科学技術交流・協力の推進を行っている。
なお中国において、中国林業科学研究院以外の農林水産関係研究機関として、農業農村部所管の研究機関である「中国農業科学院(中国农业科学院)」、「中国水産科学研究院(中国水产科学研究院)」、「中国熱帯農業科学院(中国热带农业科学院)」がある。
(2)職員数
中国林業科学研究院のHPが日本から閲覧できないため、百度HPの情報を参考として記述すると、2016年時点の総職員数は3,214名である。このうち、科学技術人員は2,009名となっている。
(3)本部組織
中国林業科学研究院のトップは院長であり、中国共産党分党組書記、副院長などが指導部となっている。
本部機構として、科技管理処、産業発展処、国際合作処、人事教育処、資源管理保護処、研究生部などが置かれている。
(4)下部組織
中国林業科学研究院は、直属事業単位として次の14の組織を有している。
・林業研究所(林业研究所)
・亜熱帯林業研究所(亚热带林业研究所)
・熱帯林業研究所(热带林业研究所)
・森林生態環境・保護研究所(森林生态环境与保护研究所)
・資源情報研究所(资源信息研究所)
・資源昆虫研究所(资源昆虫研究所)
・林業科技情報研究所(林业科技信息研究所)
・木材工業研究所(木材工业研究所)
・林産化学工業研究所(林产化学工业研究所)
・国家林業草原局北京林業機械研究所(国家林业局北京林业机械研究所)
・国家林業草原局ハルビン林業機械研究所(国家林业局哈尔滨林业机械研究所)
・林業新技術研究所(林业新技术研究所)
・荒漠化研究所
・湿地研究所
(5)研究生の受け入れ
中国の主要な研究機関では、大学の学士学位を取得した人たちを大学院生として受け入れて、修士学位や博士学位を取得させる制度が存在している。これらの学生を研究生と呼ぶ。
中国林業科学研究院の場合、生態学、林業工学、林学などで大学院生を受け入れている。中国林業科学研究院のHPが日本から閲覧できないため、百度HPの情報を参考として記述すると、2014年に17名の博士研究生、20名の修士研究生を卒業させた。
7.特記事項
(1)四つの近代化に含まれる「農業」
歴代の中国の王朝では、民の食糧確保が統治の正当性を示す重要な要素であり、食糧確保のための農業技術の改革改良は国の大きな課題であった。中華人民共和国建国後も状況は変わらず、国民を飢えさせないことが大きな国家目標であり、それを支える農業技術の振興は重要な政策であった。
四人組逮捕により文革が終了し、1977年7月に復活した鄧小平副首相は、翌1978年3月に北京で開催された全国科学大会で演説し、「農業、工業、国防、科学技術の近代化を実現し、我が国を近代的強国とすることは、我が国人民の歴史的使命である」と強調した。これにより、四つの近代化(四个现代化、直訳で四つの現代化とも呼ばれる)が国家目標となり、そこに工業、国防、科学技術と並んで農業が含まれた。
この四つの近代化の農業の中には、林業も当然含まれる。
(2)中国科学院などとの相違
中国において、英語の組織名にAcademyが付く機関として、中国科学院、中国工程院、中国社会科学院の3機関がある。これら3機関は、米国科学アカデミー、英国王立協会、フランス学士院などと同様に、中国における優れた科学者を顕彰する機能を有しており、院士あるいは学部委員を選任している。
一方中国林業科学研究院は、英語名にAcademyが付くが、上記3機関と違って科学者顕彰機能は有していない。これは農業科学研究院など他の農林関係研究機関と同様である。
参考資料
・中国林業科学研究院HP https://www.caf.ac.cn/ (日本からは閲覧できず)
・維基百科HP 中国林业科学研究院
・百度HP 中国林業科学研究院

