はじめに
国家海洋局(State Oceanic Administration)は、2018年の国務院機構改革で自然資源部が発足した際、同部に吸収された。その際、中国を代表して海洋開発に係る外国や国際機関との協力・調整を行うことため、国家海洋局の名称は維持されることとなった。
このような組織を「対外名称維持組織(对外保留牌子)」と呼んでいて、国務院内の組織改革で他の部局に統合された後も、対外的な便宜のため従来の名称の使用を認めるものである。他の例としては、国家航天局、国家原子力機構などがある。

1. 名称
〇中国語:国家海洋局
〇日本語:国家海洋局
〇英語:State Oceanic Administration 略称:SOA
2. 所在地
国家海洋局は、北京市西城区復興門外大街1号にあり、北京市の中心地である天安門の約2キロメートルほど西に行ったところにある。自然資源部の内部組織となったが、同部の本部とは別の建物に看板を掲げている。
3. 沿革
中国における海洋開発の重要性に鑑み、1964年に人民解放軍が管理する形で国務院に国家海洋局が設立された。
1993年に、国務院の国家科学技術委員会(現在の科学技術部)が管理する国家局となった。
1998年に、国務院の国土資源部の管理する国家局となった。
2018年に、国土資源部、国家測地地理情報局などが合併して自然資源部が設置された際、国家海洋局も合併の対象となり、自然資源部の一部となった。その際、対外名称維持組織として認められ、国家海洋局の名称を維持して対外的・国際的な業務を担当することとなった。
4. 任務
元々の国家海洋局は、中国の海洋開発活動全般を統括していた組織である。具体的には、内海、領海、大陸棚などの海域における海域利用、海洋生物保護、海洋法条約の交渉・実施、島嶼保護などを行っていた。
科学技術に関しては、海洋科学調査、海洋観測、海洋関連技術開発、極地研究などを行っていて、これらは自然資源部の任務に継承されている。
現在の国家海洋局は、対外名称維持組織として対外的・国際的な業務を実施している。
5. 組織
自然資源部のHPは海外からのアクセスが制限されていて、Wikiなどを除いて詳しい情報は不明である。
(1)幹部
トップである局長は、国務院の副部長(日本の副大臣クラス)であり、2025年現在の局長は孫書賢(孙书贤)である。孫書賢は、1966年に山東省に生まれ、中国海洋大学で博士学位を取得して、国家海洋局第一海洋研究所所長、国家海洋局総工程師などを経て、2023年に自然資源部副部長となり、国家海洋局長を兼務した。
(2)直属単位(合併前)
合併前の国家海洋局は、いくつかの直属単位を有しており、現在は自然資源部の直属単位となっている。科学技術に関連すると思われる主なものは次の通り。
・国家海洋情報センター(国家海洋信息中心)
・国家海洋環境観測センター(国家海洋环境监测中心)
・国家海洋技術センター(国家海洋技术中心)
・中国極地研究センター(中国极地研究中心)
・国家衛星海洋応用センター(国家卫星海洋应用中心)
・国家深海センター(国家深海基地管理中心)
・国家海洋局第一海洋研究所
・国家海洋局第二海洋研究所
・国家海洋局第三海洋研究所
・国家海洋局第四海洋研究所
・天津海水淡水化・総合利用研究所(天津海水淡化与综合利用研究所)
参考資料
・中央人民政府HP http://www.gov.cn/fuwu/bm/zrzyb/index.htm
自然資源部のHPには、海外からアクセスが禁止されている。
・維基百科HP 国家海洋局 https://zh.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E5%AE%B6%E6%B5%B7%E6%B4%8B%E5%B1%80