はじめに
国家原子力安全局(国家核安全局、National Nuclear Safety Administration)は、国務院の対外名称維持組織の一つであり、中国民生用の放射線を含む原子力安全を統括する組織である。
対外名称維持組織(对外保留牌子)とは、国務院内の組織改革で他の部局に統合された後も、対外的な便宜のため従来の名称の使用を認めるものである。原子力安全局は2018年に生態環境部の一部局となったが、対外名称維持組織と認められ、中国を代表して外国や国際機関との協力・調整を行っている。

1. 名称
〇中国語:国家核安全局 略称:核安全局
〇日本語:国家原子力安全局
〇英語:National Nuclear Safety Administration 略称:NNSA
2. 所在地
生態環境部の一部局であり、生態環境部本体と同様に北京市東城区東長安街12号にある。長安街は、北京の中心である紫金城・天安門と天安門広場の間を通る道路であり、天安門から200メートルほど東に行ったところにある。長安街をはさんで向かい側に北京の繁華街である王府井がある。
3. 沿革
国家原子力安全局は、中国民生用の原子力施設の安全性を担当する組織として1984年に設立され、国家科学技術委員会(現在の科学技術部)が管理した。
1988年の国務院機構改革で、同局は部委員会が管理する国家局となり、引き続き国家科学技術委員会が管理した。
1998年の国務院改革で、環境保護全般に責任を有する国家環境保護総局(国家环境保护总局)が設置され、国家原子力安全局は同総局の一部局となった。
2003年に、国家原子力安全局は国家環境保護総局の対外名称維持組織(对外保留牌子)となり、中国を代表して外国や国際機関との協力・調整を行うこととなった。
2008年に、国家環境保護総局が環境保護部に格上げされたが、国家原子力安全局は引き続き同部の組織として対外名称維持組織となった。2018年に環境保護部は生態環境部に名称変更された。
4. 任務
国家原子力安全局は、中国の民生原子力活動全般の安全性を担当する組織であり、対外名称維持組織として中国を代表して外国や国際機関との協力・調整を行っている。
原子力安全の具体的な任務は、次のとおりである。
・原子力施設の安全、放射線安全および放射線環境防護
・原子力設備の設計、製造、設置、非破壊検査に対する監督管理
・核物質の管理・防護
・ウラン、トリウムなどの鉱山の安全性、放射線防護
・放射性廃棄物の管理
・放射性物質の輸送安全性管理
・事故時の緊急事態対応
5. 組織
(1)幹部
トップである局長は、国務院の副部長(日本の副大臣クラス)であり、2025年現在の局長は董保同である。董保同は、1967年に河北省に生まれ、北京大学で原子核物理学を学んだあと、核工業総公司、国家国防科技工業局などを経て、2022年に生態環境部副部長となり、国家原子力安全局長を兼務した。
(2)内部組織
主な内部部局は次のとおりである。
・原子力施設安全監督司(核设施安全监管司)
・原子力発電監督司(核电安全监管司)
・放射線安全監督司(辐射源安全监管司)
・国際協力司(国际合作司)
これらとは別に、国家原子力専門家委員会(国家核安全专家委员会)が置かれている。
(3)直属単位
国家原子力安全局は生態環境部の内部組織であり直属単位を有していないが、生態環境部は原子力安全に係る次の直属事業単位を有している。
・原子力・放射線安全センター(核与辐射安全中心)
参考資料
・国家原子力安全局HP https://nnsa.mee.gov.cn/
・生態環境部原子力・放射線安全センターHP https://www.chinansc.cn/