はじめに

 教育部は、中国国務院の組成部門(日本の各省に相当)の一つであり、中国の教育を担当している。教育部は、基礎教育、高等教育、職業教育、民族教育などを所管しており、日本の旧文部省に相当する。

教育部の正面写真
教育部の正面玄関

1. 名称

〇中国語:教育部
〇日本語:教育部
〇英語:Ministry of Education 略称:MOE

2.所在地

 教育部は、北京市西城区大木仓胡同37号である。天安門の近くで、西に約2キロメートル程度行ったところに位置している。

3. 沿革

(1)前史~南京臨時政府教育部

 辛亥革命が成功して清朝が滅亡した後、南京臨時政府が成立したが、その一部として教育部が設置された。これが、現在の教育部の前史となっている。

(2)中央人民政府教育部 

 中華人民共和国が1949年に建国されると、その中央人民政府内に教育部が設置された。

(3)高等教育部設置と教育部への編入

 高等教育部が1952年に、中央人民政府内に教育部とは別に設置された。1958年には高等教育部は教育部に編入された。

 1964年には、高等教育部が教育部から再び独立して設置されたが、2年後の1966年には再度教育部に編入された。

(4)文革での混乱

 文化大革命が起きると、教育は革命派の批判の対象となり、教育研究の停止、大学共通入試・高考の中止などの影響を受けた。

 さらに1970年には、革命派の指示により教育部は廃止となった。

 文化大革命が比較的落ち着いた1975年に、ようやく教育部が復活し、教育行政の整理が実施された。

(5)国家教育委員会

 1985年に、教育部は国家教育委員会に改称された。

 1998年に、国家教育委員会は教育部に改称され、現在に至っている。

4. 任務

 教育部は、教育全般、具体的には基礎教育、高等教育、職業教育、生涯教育、教員養成教育、体育衛生・芸術教育などを担当している。また、中華人民共和国高等教育法の規定により、大学の設置についての認可権限を有している。

 なお、旧文部省は文化行政やスポーツ行政を担当していて、それが現在の文部科学省に引き継がれているが、中国の教育省は担当していない。

5. 科学技術との係わり、大学

 教育部は科学技術に関して、初等中等教育や高等教育における科学者・研究者などの人材育成、研究現場を有する大学の管理などで、科学技術に大きく関与している。とりわけ重要なのは大学であり、教育部は中国全体の大学の制度設計や重点化などの政策を担当している。

 また教育部は、75校(2025年現在)に上る大学を直属大学として所管しており、これらはいずれも中国の主要大学となっている。北京大学、清華大学、浙江大学、上海交通大学など著名な大学は、ほぼ教育部直轄大学である。

参考資料

・教育部HP  http://www.moe.gov.cn/