はじめに
ジェリー・ワン(1937年~)元カルガリー大学教授は、細胞シグナル伝達システムの研究で成果を挙げ、1981年にガードナー国際賞を受賞した。
生い立ちと教育
ジェリー・ワン(Jerry Hsueh-Ching Wang、王学荆、王學荊)は、1937年生まれであるが、出生場所等の情報はHP上にない。後述するように台湾大学出身であるので台湾で生まれたか、台湾で基礎教育を受けた可能性が大きい。どのような家庭に育ったかも分からない。
ワンは、1958年に台北にある国立台湾大学から農業化学の学士を取得した。
その後ワンは米国に渡り、アイオワ州エイムズにあるアイオワ州立大学大学院で学び、1965年に同大学より生物化学の博士学位を取得した。
細胞シグナル伝達の研究で成果
ジュリー・ワンは、その後ポスドク研究のため、カナダに渡りカナダ研究協議会の研究員に採用された。その後の勤務場所はネット上にはないが、他方、1973年と1979年にマニトバ大学の研究者として表彰されているので、同大学の研究員か教員でいたと思われる。
ちなみにマニトバ大学は、カナダ・マニトバ州のウィニペグにある大学で、1877年創立であり西部カナダでは一番歴史の古い大学である。
ジュリー・ワンは、最も基本的な代謝からより複雑な細胞増殖や細胞分化に至るすべての生化学プロセスに関連する細胞シグナル伝達システムを研究した。そして、細胞シグナル伝達システムとその作動機構におけるいくつかの重要なタンパク質の発見を行った。
もう1 つの先駆的な研究成果は、Cdk5 (サイクリン依存性プロテインキナーゼ 5 と呼ばれる酵素) プロテインキナーゼ活性複合体の発見と 2 つの Cdk5 活性化タンパク質の発見である。この発見は、神経系の発達、脳機能、さまざまな神経疾患の研究に新たな地平を切り開いた。
ワンは、この成果により1981年にガードナー国際賞を受賞した。その受賞理由は、ガードナー国際賞の受賞理由は、「For their discovery of calmodulin」であった。中国系科学者の同賞受賞も多く、ユェワイ・カン(1984年)、タクワー・マク(1989年)、ラプチー・ツィ(1990年)などが受賞している。
カルガリー大学教授や香港科技大学教授を務める
ジェリー・ワンは、1982年にカナダのアルバータ州にあるカルガリー大学の教授に就任した。
ワンは、1995年までカルガリー大学教授を務めた後、香港の香港科技大学生化学系の教授に就任した。その後、同系の主任なども務め、2002年に退官し、2002年から同大学の名誉教授に就任している。
ワンは2010年に、台湾中央研究院の外籍院士に当選している。
参考資料
・台湾中央研究院HP 王學荊 https://academicians.sinica.edu.tw/index.php?r=academician-n%2Fshow&id=610
・ガードナー国際賞HP JERRY H-C WANG https://www.gairdner.org/winner/jerry-h-c-wang