はじめに

 タクワー・マク(1946年~)トロント大学教授は、カナダで免疫学者として活躍し、T細胞受容体の研究でガードナー国際賞やキング・ファイサル国際賞を受賞した免疫学者である。

タクワー・マクの写真
タクワー・マク 百度HPより引用

生い立ちと教育

 タクワー・マク(Tak Wah Mak、麦徳華、麦德华)は、1946年に中国南部の広東省広州の絹商人の家に生まれた。幼年期に両親と共に香港に移住した。両親はマクに医者になることを勧めたが、本人は数学、生物学などにより関心があった。

 地元の高校に通った後、マクは米国のカリフォルニア大学とウィスコンシン大学に留学を考えた。母親が当時社会風潮となっていたベトナム戦争反対運動が激しいカリフォルニアに行くことに反対し、ウィスコンシンを強く勧めた。結果としてマクは、1964年にウィスコンシン大学マディソン校に入学し、生物化学を専攻した。

 マクは、1967年にウィスコンシン大学マディソン校から学士の学位を取得し、引き続き同校の大学院に進み、1969年に同校から修士の学位を取得した。

 修士を取得したマクは、カナダ・アルバータ州エドモントンにあるアルバータ大学大学院に移動し、1972年に同大学から生物化学で博士の学位を取得した。

トロント大学教授に就任

 タクワー・マクは、カナダのオンタリオ州トロントにあるトロント大学オンタリオ癌研究所でポスドク研究を2年間行った後、1974年に同大学の助教授(Assistant Professor)に採用された。マクは、カナダ国籍を取得している。

 マクは、1979年に准教授(Associate Professor)に昇任し、さらに1984年に正教授に昇進した。

T-cell受容体の発見

 タクワー・マクは、トロント大学において免疫学の研究を行い、1984年に画期的な発見を行った。マクは、様々な免疫疾患や癌を引き起こす遺伝子の研究を実験動物のマウスを使って行い、ヒトT細胞受容体を発見したのである。

著名な国際賞を受賞

タクワー・マクは、ヒトT細胞受容体などの研究功績により、数々の国際賞を受賞していく。

 1989年にマクは、ガードナー国際賞を受賞した。受賞理由は、「T細胞受容体のクローニングとシーケンスへの貢献:For contributions to the cloning and sequencing of the gene for the T-cell receptor」であった。この賞の多くの受賞者は、後にノーベル賞を受賞しており、日本人では2009年に山中伸弥京都大学教授が、2015年に大隅良典東京工業大学特任教授が受賞している。中国系の科学者にも受賞者が多く、1984年にユェワイ・カン(簡悦威)、1990年にラプチー・ツィ(徐立之)、2016年にフェン・チャン(張鋒)が受賞している。

 また、マクは1995年に、サウジアラビアの第3代国王ファイサルの遺徳をしのんで創設されたキングファイサル国際賞(医学部門)を受賞した。同賞は、山中伸弥京都大学教授がノーベル賞受賞前の2011年に受賞している。また、中国系では盧煜明(デニス・ロー)らが受賞している。

参考資料

・トロント大学HP https://medbio.utoronto.ca/faculty/mak
・ガードナー国際賞HP https://www.gairdner.org/winner/tak-w-mak
・King Faisal Prize HP https://kingfaisalprize.org/winnerInfo/172