はじめに
底青雲(底青云、Di Qingyun)地質・地球物理研究所所長は、深層資源探査研究で成果を挙げた地球物理学者であり、中国科学院の附属研究機関で数少ない女性トップである。

回族の出身
底青雲(底青云、Di Qingyun)は、1964年に河北省石家庄市で生まれており、回族の出身である。
回族は、55ある中国の少数民族の一つで、言語・形質等は漢民族と同じであるが、イスラム教を信仰する民族集団である。黄河流域北西部を中心に中国全土に広く散らばって住んでおり、人口は約1,140万人で、少数民族としてはチワン族(大陸南部に居住、人口約2,700万人)に次ぐ。
なお回族以外で、多くがイスラム教を信仰している民族としては、ウィグル族、カザフ族、ドンシャン族などが挙げられる。
生い立ちと教育
底青雲は、平凡な家庭に生まれたが、小さい時から好奇心が強く、未知の世界にあこがれた。
多くの若者の教育機会を奪った文化大革命が始まったのが彼女が2歳となった1966年であり、終息したのが12歳となった1976年であるので、この文革の影響はそれほどなかった。
底青雲は、吉林省長春市にある長春地質学院(現在の吉林大学の一部)の応用地球物理学科に入学し、1987年に同学院から学士の学位を取得した。底青雲は、さらに長春地質学院で勉学を続行し、1990年に同学院から修士の学位を取得した。
中国科学院・地球物理研究所へ
底青雲は、修士学位を取得の後、北京にある中国科学院・地球物理研究所(現在の地質・地球物理研究所)の職員となった。そして、職員として勤務をしつつ、博士学位の取得を目指して勉学に励み、1998年に探査地球物理学専攻での理学博士学位を取得した。
博士学位取得後も、底青雲は地球物理研究所(1999年に地質・地球物理研究所となった)の職員として勤務した。

底青雲はその後も、地質・地球物理研究所で研究を続行したが、2002年にはカナダに赴き、アルバータ大学の研究所で約3年間、客員研究官となった。
さらに、2007年から約1年間、米国ユタ大学の客員研究官を務めた。
深層資源探査研究で成果
底青雲は、石油・ガス・鉱物などの資源探査についての国家的な要請に応えるため、主に電磁波検出技術・方法、掘削同時検層技術・方法、回転式操舵掘削技術・方法の研究を行った。そして複雑な地層における電磁波の伝搬経路と量的特性の研究を行い、超低周波電磁波の伝搬メカニズムを解明した。
この原理を実証するため、底青雲はチームを率いて現場での調査実験を行い、深度10キロメートルに及ぶ地質の高精度電磁波検出を実現した。この技術は、石油・ガス開発技術におけるボトルネックの解決に貢献した。
これらの成果により、底青雲は2021年に中国科学院院士に当選した。
また、翌2022年には、地質・地球物理研究所の所長に任命された。
中国科学院附属研究機関における女性所長
現在、中国科学院は傘下に107の研究機関を有するが、女性のトップは底青雲を除いて次の4名である。
〇劉桂菊(刘桂菊、1965年?~)力学研究所共産党委書記(前所長)
〇乔格侠(1966年~)動物研究所所長
〇孫向紅(孙向红、1968年~)心理研究所共産党委書記
〇王延軼(王延轶、1981年~)武漢ウィルス研究所所長
参考資料
・地質・地球物理研究所HP http://www.igg.cas.cn/gkjj/skjj/xrld/
・澎湃HP 事关10万年 上山文化重要研究成果新闻发布会在我县召开
・百度HP 底青云:从藁城小镇走向世界舞台的科研巨擘
・百度HP 底青云
・力学研究所 HP http://www.imech.ac.cn/
・動物研究所 HP https://ioz.cas.cn/
・心理研究所HP https://psych.cas.cn/
・武漢ウィルス研究所HP https://whiov.cas.cn/


