はじめに
国家原子力機構(国家原子能机构、China Atomic Energy Authority:CAEA)は、国務院の対外名称維持組織の一つであり、中国の原子力開発全般を統括する組織である。
対外名称維持組織(对外保留牌子)とは、国務院内の組織改革で他の部局に統合された後も、対外的な便宜のため従来の名称の使用を認めるものである。国家原子力機構は2008年に工業・情報化部の一部局となったが、対外名称維持組織と認められたため、引き続き中国を代表して外国や国際機関との協力・調整を行っている。

1. 名称
〇中国語:国家原子能机构 略称:原子能机构
〇日本語:国家原子力機構
〇英語:China Atomic Energy Authority 略称:CAEA
2. 所在地
国家原子力機構は、北京市海淀区阜成路甲8号にあり、北京市の中心地である天安門の約10キロメートルほど西北西に行ったところにある。近くには中央広播電視塔(中央广播电视塔、北京テレビタワー)がある。
上の写真のとおり、国家国防科技工業局と同一の建物にある。
3. 沿革
元々中国の原子力開発全般は、国務院の第二機械工業部の担当であったが、1982年に核工業部と名称が変更となり、さらに1988年に原子力開発政策の担当が新たに設置されたエネルギー部(能源部)に移管され、開発実施部門を中心としたそれ以外の業務は核工業総公司となった。
エネルギー部もその後機構改革になり、エネルギー政策全般を所管する「国家エネルギー局」と原子力政策を中心とした「国家原子力機構」に分かれた。その後、国家原子力機構は、工業・情報化部の組織となり、対外名称維持組織として対外的・国際的な業務を担当することとなった。
4. 任務
国家原子力機構は、中国の原子力開発活動全般を統括する組織であり、また対外名称維持組織として、中国を代表して外国や国際機関との協力・調整を行っている。
5. 組織
(1)幹部
トップである主任は、国務院の副部長(日本の副大臣クラス)であり、国家原子力機構のHPによれば、2025年現在の主任は単忠徳である。単忠徳は、1970年に山東省に生まれ、西安理工大学で学士、修士の学位を、清華大学で博士学位を取得して、機械科学研究総院や南京航空航天大学を経て、2024年に工業情報化部副部長となり、2025年に国家国防科技工業局長となって、国家原子力機構主任を兼務した。
副主任と秘書長が任命されており、主任を補佐している。
なお、同機構の所在地は国家国防科技工業局と同様であり、また局長と主任は兼務である。したがって、同機構は実質的に国家国防科技工業局の一組織と考えられる。
(2)内部組織
主な内部部局は次のとおりである。
・発展計画司
・科技・質量司
・系統工程司
・原子力緊急・安全司
・国際協力司
参考資料
・工業・情報化部HP https://www.miit.gov.cn/
・中央人民政府HP 『国家国防科技工业局』http://www.sastind.gov.cn/
・国家原子力機構HP https://www.caea.gov.cn/