「国家科学技術11次五か年計画(2006年〜2010年)」(2006年)

 第11次五か年計画(正式名称は「国家科学技術発展11次五か年計画:国家十一五科学技术发展规划(2006年〜2010年)」)は、中長期発展計画綱要(2006年~2020年)の最初の5年間をカバーする計画で、基本的な考え方は同一である。

第11次五か年計画の策定経緯

 2006年3月の全国人民代表大会において、中国全体の経済社会計画である「中国国民経済・社会発展第11次五か年計画」とあわせて、「国家科学技術発展11次五か年計画:国家十一五科学技术发展规划(2006年〜2010年)」が決定された。

 この計画は、「国家中長期科学技術発展計画綱要(2006年~2020年)」の最初の5年間をカバーする計画であり、策定時期がほぼ同じであるため基本的な考え方は同一となっている。

 以下に、国家中長期科学技術発展計画綱要と比較して、より具体的な施策に踏み込んだ内容を列記する。

目標設定

 第11次五か年計画の一つ目のポイントは、5年間の目標設定である。綱要では、国内総生産(GDP)に占める国全体の研究開発投資の割合を2.5%以上、科学技術進歩の貢献率を60%以上、対外技術依存度を30%以下、中国人の年間の特許取得件数と国際的な科学論文の被引用件数をいずれも世界5位以内にするとしたことを受け、2010年までの目標を次の通り示している。
〇GDPに占める国全体の研究開発投資割合 2%
〇科学技術進歩の貢献率 45%以上
〇対外技術依存度 40%以下
〇FTE(フルタイム換算)による研究者数 130万人以上。
〇国際的な科学論文の被引用件数 世界トップ10位以内
〇中国人の年間の特許取得件数 世界トップ15位以内

重大特定プロジェクトの実施

 第11次五か年計画の二つ目のポイントは、重大特定プロジェクトの実施である。綱要では、重大特定プロジェクトとして情報やバイオテクノロジー等の戦略的産業分野、エネルギー資源・環境および国民衛生等の緊急課題分野、軍民両用技術分野、国防技術分野などから、16項目を選定した。五か年計画では、このうち民生用の13のプロジェクトの内容を詳細化して示しており、その資金確保と実施体制についての考え方を示している。その後、国務院の関連部局で詳細と実施体制について検討が行われた後、「国家科学技術重大特定プロジェクト:国家科技重大专项」として実施されていった。

科学技術インフラの整備

 第11次五か年計画の三つ目のポイントは、科学技術インフラの整備の強化である。2004年に制定された「国家科学技術基礎インフラ建設綱要(2004年~2010年)」の内容を追認するとともに、さらに「重大科学技術インフラ」の建設実施を記している。この五か年計画で建設すべき重大科学技術インフラとして挙げられたのは、次の12項目である。
・核破砕中性子源
・強磁場装置
・大型天文望遠鏡(LAMOST)
・海洋科学総合調査船
・航空リモートセンシングシステム
・航空機開発実験用大型凍結風洞
・地殻変動観測ネットワーク
・材料安全評価研究施設
・大型宇宙環境基盤観測システム(子午工程)
・タンパク質科学研究施設
・地下資源と地震予測用極低周波電磁探知網
・農業生物安全研究施設

 そして、この五か年計画の実施計画の一つとして2007年1月に公表された「国家自主創新基礎能力建設第11次五か年計画:国家自主创新基础能力建设十一五规划(2006年〜2010年)」で、12項目のより詳細な実施方策が示され、建設の促進が唱われた。

第11次五か年計画の成果

 この五か年計画は、21世紀に入ってからの中国経済の発展に支えられ、大きな成果を挙げている。

 具体的には次の通りである。
・中国全体の研究開発投資は、2010年は6,980億元に達し、2005年の2.8倍となった。国家財政の科学技術投入額は、年平均で20%以上増加した。
・FTE(フルタイム換算)による研究者数は年平均で13%成長し、2010年は255万人に達した。
・国際科学論文総数は世界第5位から第2位に台頭し、被引用回数は世界第13位から第8位まで上昇した。
・発明特許承認数は世界第3位にまで上昇し、国内の発明特許申請数は年平均で25.7%成長し、承認数は年平均で31%成長した。
・有人宇宙飛行、月探査事業、スーパーコンピューター、スーパー交雑水稲(ハイブリッド米)、高速鉄道、実験高速炉、量子通信、鉄系超伝導、有人深海潜水、誘導多機能乾細胞などにおいて、シンボリックな重要な成果が得られた。

参考資料

・中国中央人民政府HP 『科技部发布《国家“十一五”科学技术发展规划》