「国家科学技術重大特定プロジェクト」の開始(2008年)

 重大特定プロジェクト(正式名称「国家科学技術重大特定プロジェクト:国家科技重大专项」)は、ブレークスルー達成と資源の集中により国家目標を実現するナショナルプロジェクトであり、2008年から実施された。

策定経緯

 「国家科学技術重大特定プロジェクト:国家科技重大专项(National Science and Technology Major Project)」は、核心的なブレークスルー達成と資源の集中により国家目標を実現する科学技術プロジェクト(ナショナルプロジェクト)である。

 国家中長期科学技術発展計画綱要(2006年~2020年)でプロジェクト名が挙げられ、その後に公表された第11次五か年計画でより具体化された13個のプロジェクトである。
 五か年計画の公表後、国務院の科学技術部と関連部局が準備作業を2年間にわたって個別プロジェクトの選定作業・実施計画策定が行われ、2008年から実施されていった。

選定の原則

 選定に当たっての基本原則は次の通りである。

・経済社会の発展に密接に関係し、自前の知的財産権を形成することや、自主創新能力を持つ戦略的産業を育成できる。
・産業競争力全体の向上に影響を与え、牽引力のある基幹共通技術を獲得できる。
・経済社会の発展を制約する重大なボトルネック問題を解決する。
・国家の安全保障と総合国力の強化に重大な戦略的意義を持つ。
・中国の国情に合致し、国力的に耐えることができる。

具体的な13の重大特定プロジェクト

 第11次五か年計画での13個のプロジェクトは次の通りである。

・コア電子デバイス、ハイエンド汎用半導体チップおよび基本ソフトウェア
・超大規模集積回路製造設備(VLSI)およびフルセット技術
・次世代高速無線通信網
・ハイエンド・コンピューター・数値制御工作機械(CNC)と基礎製造技術
・大型油ガス田および炭層メタンガス開発
・大型先進加圧水型原子炉および高温ガス冷却型原子炉原子力発電所
・水汚染抑制と処理
・遺伝子組み換えによる育種
・重大新薬の開発
・HIVおよびHBVの予防
・大型航空機の開発
・高解像度地球観測システム
・有人宇宙飛行と月探査

 これらのプロジェクトの実施主体は、主に国立研究機関や企業であり、研究資金は中央財政、管轄部局、地方政府および研究機関・企業の自己資金から充当された。

重大特定プロジェクトの成果

 このプロジェクトは、現在までに数々の成果を上げた。2016年にスパコン世界ランキングの一位となった「神威・太湖の光」に使われたCPU(申威26010)の開発、2017年5月に初飛行が実現した大型航空機C919、第三世代原子炉である「華龍一号」、2019年1月に月の裏側に着陸を成功させた月探査機「嫦娥4号」等は、このプロジェクトの成果である。

参考資料

・百度HP 『国家科技重大专项