はじめに

 上海薬物研究所 (上海药物研究所、Shanghai Institute of Materia Medica) は、上海市にある中国科学院の附属研究機関であり、母体である北平研究院薬物研究所は1933年に設立された。新中国建国後、中国科学院に接収されて再編された。

 主たる研究テーマは、ヒト疾患に対応する新薬の開発や安全性の確認であり、これまで100以上の薬物を開発し、市場に投入している。

上海薬物研究所の写真
上海薬物研究所  同研究所HPより引用

1. 名称

○中国語表記:上海药物研究所  略称 上海药物所
○日本語表記:上海薬物研究所
○英語表記:Shanghai Institute of Materia Medica  略称 SIMM

2. 所在地

 上海薬物研究所の所在地は、上海市浦東新区張江祖沖之路555号である。

3. 沿革

 上海薬物研究所の前身は、国民政府時代の1932年に北平研究院薬物研究所として北京に設置された。翌1933年に上海に移転した。

 新中国建国後、中国科学院に接収されて、上海薬物研究所となった。

 2003年に浦東張江ハイテクパークに移転した。

4. 組織の概要

(1)研究分野

 上海薬物研究所は、薬物に関する基礎研究と応用研究を実施し、悪性腫瘍、心血管・脳血管疾患、神経・精神疾患、代謝性疾患、自己免疫疾患、感染症などの治療のための新薬の開発を行っている。

(2)主な研究組織

 上海薬物研究所の主な研究組織(例示)は以下のとおりである。

・新薬研究全国重点実験室(原创新药研究全国重点实验室)
・国家新薬スクリーニングセンター(国家新药筛选中心)
・中医薬標準化技術国家工程実験室(中药标准化技术国家工程实验室)
・国家化合物標本図書館(国家化合物样品库)
・中国科学院受容体構造機能重点実験室(中国科学院受体结构与功能重点实验室)など

5. 規模

(1)職員数

 上海薬物研究所の2021年現在の職員総数は1,053名で、中国科学院の中では第14位である(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。

(2)予算

 上海薬物研究所の2021年予算額は11億0,136万元で、中国科学院の中では第23位である(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。

(3)研究生

 上海薬物研究所の2021年現在の在所研究生総数は680名で、中国科学院の中では第24位である(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。

6. 研究開発力

(1)国家級実験室など

 上海薬物研究所は、1つの国家重点実験室を有している(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。

新薬研究全国重点実験室(原创新药研究全国重点实验室):新薬研究国家重点実験室をベースとして2023年に設置された。国民の生命と健康を守ることを目標とし、消化器系腫瘍、糖脂質代謝異常、難治性神経系疾患、新型ウイルス性感染症などに対応する新薬開発を目指している。 

(2)NSFC面上項目獲得額

 上海薬物研究所のNSFC一般プログラム獲得資金額は、中国科学院の中では20位までのランク外である。(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。

7. 研究成果

(1)Nature Index

 Nature Index2022では、中国科学院内の20位までのランキング外である(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。

(2)特許出願数

 2021年の特許出願数は814件で、中国科学院内の20位までのランキング外である(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。

(3)成果の移転収入

 2021年研究成果移転収入は、中国科学院内の9位までのランキング外である(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。

(4)両院院士数

 2024年2月時点で所属する両院の院士は4名であり、中国科学院内のランキング外である(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。

〇中国科学院院士(2名):陈凯先、岳建民
〇中国工程院院士(2名):唐希灿、丁健

参考資料

・上海薬物研究所HP http://www.simm.cas.cn/
・中国科学院HP https://www.cas.cn/
・中国科学院統計年鑑2022 中国科学院発展企画局編