はじめに
国家国防科技工業局（国家国防科技工业局、State Administration for Science, Technology and Industry for National Defence）は、国務院部委管理国家局の一つであり、中国の国防産業を担当している。国務院工業・情報化部の管理を受けている。
国務院部委管理国家局（国务院部委管理的国家局）とは、国務院の組織が管理している局であり、特定の行政業務を行う。通常は国務院内の最重要組織である組成部門（部・委員会などで、日本の各省に相当）が管理しているが、組成部門以外でも管理する局を有している場合がある。
1. 名称
〇中国語：国家国防科技工业局 略称：国家国防科工局
〇日本語：国家国防科技工業局
〇英語：State Administration of Science, Technology and Industry for National Defense 略称：SASTIND
2. 所在地
国家国防科技工業局の本部は、北京市海淀区阜成路甲8号にある。北京市の中心地である天安門の約10キロメートルほど西北西に行ったところにある。近くには中央広播電視塔（中央广播电视塔、北京テレビタワー）がある。
3. 沿革
（1）中国人民解放軍国防科学技術委員会
現在の国家国防科技工業局の前身は、1958年に中国人民解放軍の中に設置された国防科学技術委員会（中国人民解放军国防科学技术委员会、略称は国防科委）である。この組織は、中国の軍事開発プロジェクトである両弾一星政策の推進役として設置され、初代の主任は聂荣臻元帥であった。
（2）国防科学技術工業委員会
1982年、解放軍国防科学技術委員会、国務院国防工業弁公室、中央軍事委員会科学技術装備委員会が統合されて、国防科学技術工業委員会（国防科学技术工业委员会）が設置された。同委員会は、国務院と中央軍事委員会との二重指導であった。
（3）国務院国防科学技術工業委員会
1998年、それまでの国防科学技術工業委員会から、中央軍事委員会の指導を受ける人民解放軍総装備部（中国人民解放军总装备部）が独立し、国務院の単独指導となる国務院国防科学技術工業委員会が設置された。原子力、宇宙、航空などの軍需産業は、いくつかの公司に再編されて新たな国防科学技術工業委員会の管理下におかれ、また、原子力や宇宙の対外業務を所管していた国家航天局、国家原子能機構は、新たな国防科学技術工業委員会に移行した。
（4）国家国防科技工業局
2008年に国務院の組織改革が行われ、国家発展・改革委員会の産業政策部門、国防科学技術工業委員会の業務、情報産業部（信息产业部）の郵政事業などを除く情報通信職務を統合する形で工業・情報化部（工业和信息化部）が設置された。
その際、国防科学技術工業委員会の業務については、実施部門を含めてほとんどは新たに設置された国家国防科技工業局に移転し、同局は工業・情報化部が管理する国務院の独立した国家局になった。また、国家航天局と国家原子能機構は、名目的に工業・情報化部の内部組織となったが、実質的に国家国防科技工業局の指導を受ける形となった。
4．任務
国家国防科技工業局は、原子力、航空、宇宙、通常兵器、船舶、電子などの国防先端技術産業を所管する部局であり、巨大な国営企業を傘下に有している。
また、国家航天局と国家原子能機構を実質的に管理しており、宇宙や原子力政策にも関与している。
5. 組織
（1）国家国防科技工業局の幹部
国家国防科技工業局のトップは局長であり、副大臣（副部長）クラスである。現在の局長は单忠德 (1970年～）であり、清華大学機械工学科を卒業して博士学位を取得し、南京航空航天大学の学長などを経て、2024年に国家国防科技工業局局長兼工業・情報化部副部長となった。また、国家航天局局長、国家原子能機構主任も兼ねている。
国家国防科技工業局には、４名の副局長、共産党組織構成員がいて、局長を支えている。
（2）内部部局
内部部局のうち、主たる組織は次のとおりである。
・科技・品質司（科技与质量司）
・系統工程一司（国家航天局）
・系統工程二司（国家原子能機構など）
（３）傘下の国営企業
・中国核工業集団有限公司
・中国航天科技集団有限公司
・中国航天科工集団有限公司
・中国航空工業集団有限公司
・中国船舶集団有限公司
・中国船舶重工集団有限公司
・中国兵器工業集団有限公司
・中国兵器装備集団有限公司
・中国電子科技集団有限公司
・中国航空発動機集団有限公司
・中国電子情報産業集団有限公司
（4）傘下の研究機関
・中国工程物理研究院
参考資料
・中央人民政府HP 『国家国防科技工业局』http://www.sastind.gov.cn/
・国家航天局HP http://www.cnsa.gov.cn/
・国家原子能機構HP http://www.caea.gov.cn/
