はじめに
国家衛生健康委員会(国家卫生健康委员会、National Health Commission)は、中国国務院の組成部門(日本の各省に相当)の一つであり、国民の健康、医療、疾病対策などを所管している。日本の旧厚生省に当たる。

1. 名称
〇中国語:国家卫生健康委员会 略称:国家卫健委
〇日本語:国家衛生健康委員会
〇英語:National Health Commission 略称:NHC
2. 所在地
北京市西城区西直門外南路1号にある。北京市の中心である天安門広場から見て、北西約5キロメートルに位置する。近くには北京動物園がある。
3. 沿革
(1)政務院衛生部
中華人民共和国は1949年10月に建国され、中央人民政府の執行機関として周恩来を総理とする政務院が設置され、健康や医療などを所管する衛生部(卫生部)が設置された。
中華人民共和国憲法が1954年に制定され、政務院が国務院に改組されると、衛生部はこの国務院の部局となった。
(2)国家衛生計画委員会
2013年に国務院内の組織再編が行われ、衛生部と一人っ子政策を担っていた国家人口計画生育委員会(国家人口计划生育委员会)が統合されて「国家衛生計画委員会(国家卫生计生委员会)」となった。
(3)国家衛生健康委員会
国家衛生計画委員会は2018年に、現在の名称である国家衛生健康委員会となった。
4. 任務
中国全体の健康、医療、保健システム、家族計画、高齢化、介護などを担当している。
ライフサイエンス全般を担当しているが、中国伝統の医療・薬品は国家中医薬管理局が、疾病予防制御は国家疾病予防制御局が、薬品の安全規制は国家薬品監督管理局が担当している。これらの3つの国家局は、国務院内の独立した部管国家機構(部管国家机构)である。
5. 組織
(1)内部部局
内部部局のうち、科学技術に関係すると思われる組織は次のとおりである。
・医政司
・基層衛生健康司(基层卫生健康司)
・医療応急司(医疗应急司)
・科技教育司
・薬物政策・基本薬物制度司(药物政策与基本药物制度司)
・食品安全標準・監視評価司(药物政策与基本药物制度司)
・老齢健康司(老龄健康司)
・婦人小児健康司(妇幼健康司)
・職業健康司(职业健康司)
・人口監視・家庭発展司(人口监测与家庭发展司)
・保健局
(2)直轄組織
多くの直轄組織を有しているが、その中で重要と考えられる組織は次のとおりである。
・中国医学科学院・北京協和医学院
(3)管理する機構
管理する国家機構(部管国家机构)のうち、科学技術に関係する機構は次のとおりである。
・国家中医薬管理局(国家中医药管理局)
・国家疾病予防制御局(国家疾病预防控制局)
6. 食品の安全問題と陳竺
21世紀に入って経済が発展するにつれ、都市部の消費者を中心とした国民が生活の質への向上を強く求めるようになり、食生活の高度化・多様化が急速に進んだ。
その様な中で経済的利益追求のために悪徳業者が横行し、人体に健康被害をもたらす有害な食品が多数流通し、食品汚染問題が多発するようになった。そこで中国政府は、2007年6月、当時の高強衛生部長を降格させ、陳竺中国科学院副院長を同部長に抜擢した。陳竺は中国共産党党員ではなく、無党派の閣僚就任は新中国建国以来3人目であった。
陳竺(陈竺、ZhuChen)は1981年に上海第二医科大学(現在の上海交通大学医学院)で修士号を取得の後フランスに留学し、1989年パリ第7大学で博士号を取得した。その後1990年に上海に帰国し、上海第二医科大学附属瑞金病院の教授となり、2000年10月から中国科学院副院長を務めていた。

参考資料
・国家衛生健康委員会HP http://www.nhc.gov.cn/