はじめに
中国科学技術大学生命科学系 は、1958年の同大学設立当初より、生物物理系として存在していた。
文革後に中国科学技術大学が再建された際、生物系が設置され、1998年には生命科学学院となった。
その後中国科学技術大学は、医学・臨床研究の重要度に鑑み、2017年に従来の生命科学院をベースとして生命科学・医学部を新たに設置した。その際、安徽省立医院を中国科学技術大学附属第一院と併称することとして、臨床医学研究の重要な組織として編入した。
1. 中国科学技術大学全体
中国科学技術大学 (中国科学技术大学、University of Science and Technology of China) は、世界最大の研究機関である中国科学院が設立し運営する大学である。安徽省合肥に本部キャンパスを有する。理と工が強い大学であり、単科大学に近く、規模もそれほど大きくない。
中国科学技術大学のより詳しい情報は、こちらを参照されたい。
2. 生命科学・医学部
中国科学技術大学生命科学系の中心は、同大学の生命科学・医学部である。
（1）歴史
中国科学技術大学は1958年に北京で設置されたが、その時点で全体13ある系の一つに生物物理系が存在していた。
中国科学技術大学は、文化大革命時に困難な状況に遭遇し、またキャンパスも北京から河南省南陽などを経て、安徽省合肥に移転させられた。安徽省に移転し、文革が収まった1978年に中国科学技術大学は再建されたが、その際に生物系が設置された。
この生物系は、1998年に生命科学学院（USTC Life Sciences and Medicine）に発展した。
2017年、中国科学院、安徽省、国家衛生健康委員会が協力し、従来の生命科学院をベースとして生命科学・医学部を新たに設置した。その際、安徽省立医院を中国科学技術大学附属第一院と併称することとして、生命科学・医学部の重要な組織に編入した。
（2）傘下の学院など
生命科学・医学部には、生命科学学院、基礎医学院、臨床医学院、生物医学工程学院の4つの学院（School）と、附属第一院などがある。
（3）規模
生命科学・医学部のHPによれば、同学部に教職員が184人いて、PI（Principal Investigator)が114人いる。
3. 生命科学学院
生命科学・医学部の一つの学院に、生命科学学院（School of Life Sciences）がある。生命科学学院は、生命科学・医学部の母体であり、最も長い伝統を有する。
（1）設置されている系
生命科学学院は、分子生物学・細胞生物学系、神経生物学・生物物理系、系統生物学系、医薬生物技術系の4つの系を有する。
（2）規模
同学院のHPによれば、全教職員数は92人、うち教授は45人、副教授は20人となっている。
（3）双一流学科
2017年に開始された双一流政策による学科建設は、2022年に改訂されているが、このうち中国科学技術大学生命科学学院では、「生物学」が選定されている。
（4）国家重点実験室
中国科学技術大学生命科学学院には、次の国家重点実験室にある一部の研究室が所属している
・合肥ナノスケール物質国家研究センター（合肥微尺度物质科学国家研究中心）内の、分子・細胞生物物理（分子与细胞生物物理）、神経回路・脳認知（神经环路与脑认知）、Bio-X交叉科学の3研究室。
4. 基礎医学院
基礎医学院は、中国科学技術大学生命科学・医学部の4つある学院の一つとして、2018年に設置された。
基礎医学院では、分子医学、病原性物・免疫学、人体機能学、医学形態学、解剖学が教えられている。
教職員数は52人である。
豪雛のスケール物質国家研究センターにある分子医学研究室は、この基礎医学院に属している。
5. 臨床医学院
臨床医学院は、中国科学技術大学生命科学・医学部の4つある学院の一つとして、2018年に設置された。
基礎医学院では、科学、工学、医学の横断的統合、医学教育と研究の革新、生命科学と医学の統合的発展を目指して教育研究が実施されている。
臨床医学博士指導教員は54人、修士指導教員は68人である。
合肥ナノスケール物質国家研究センターにある分子医学研究室は、この基礎医学院に属している。
6. 附属第一医院
中国科学技術大学附属第一医院は、1898年に設置された「合肥基督医院（合肥キリスト医院）」が前身であり、その後「安徽省立医院」となっていた。
中国科学技術大学が、従来の生命科学院をベースとして生命科学・医学部を新たに設置した際、安徽省立医院を中国科学技術大学附属第一院と併称することとして、同医院を臨床研究の拠点としたものである。
現在、合肥市内に中区（医院本部）、南区（安徽省脳科医院、安徽省心臓血管医院）、西区（安徽省腫瘍医院）、感染症病院区（合肥市伝染病医院）、北区（国家創傷区域医療センター：国家创伤区域医疗中心）などのサイトを有している。
同院のHPによれば、附属第一医院全体で通院・救急患者数は年間670万人、退院患者数は35万人、手術数は19万件である。医院全体の職員数は8,395人、うち高級職員数1,200人、一級主任医師数39人である。
上海にある復旦大学の医院管理研究所は、毎年、中国国内の医院に関して、医院としての評判と学術研究力を評価したランキングを公表している。直近のランキングは、「中国医院2022年度全国综合排行榜」であり、これによれば中国科学技術大学附属第一医院は第88位にランクインしている。
7. 生物医学工程学院
中国科学院は、その傘下に「蘇州生物医学工程技術研究所（苏州生物医学工程技术研究所）」を有しており、この研究所と中国科学技術大学が協力して、2017年に中国科学技術大学生物医学工程学院（蘇州）を設置した。蘇州は、中国科学技術大学のある安徽省の隣の省である江蘇省にある。
同学院の規模であるが、HPによると、教職員数は83人、学生は大学院生のみで修士学生が122人、博士学生が49人である。
参考資料
・中国科学技術大学HP https://www.ustc.edu.cn/index.htm
・中国科学院HP https://www.cas.cn/
・中国科学技術大学生命科学・医学部 https://biomed.ustc.edu.cn/main.htm
・中国科学技術大学生命科学・医学部 生命科学学院HP https://biox.ustc.edu.cn/main.htm
・中国科学技術大学生命科学・医学部 基礎医学院HP https://jcyx.ustc.edu.cn/main.htm
・中国科学技術大学生命科学・医学部 臨床医学院HP https://lcyx.ustc.edu.cn/main.htm
・中国科学技術大学附属第一院 安徽省立医院HP https://www.ahslyy.com.cn/
・中国医院及专科声誉排行榜 https://rank.cn-healthcare.com/fudan/national-general
・中国科学技術大学生物医学工程学院HP https://bme.ustc.edu.cn/main.htm
