はじめに

 ハワード・チャン (Howard Yuan-Hao Chang、張元豪、1972年~)スタンフォード大学教授は、ゲノムの中にあるコードされない部分の研究で成果を挙げ、2024年のキングファイサル国際賞を受賞した。

ハワード・チャンの写真
ハワード・チャン 百度HPより引用

生い立ちと教育

 ハワード・チャン(Howard Yuan-Hao Chang、張元豪)は、1972年に台湾の首都・台北に生まれた。12歳で、米国に移民として渡った。現在のネット上にはそれ以上の情報は無い。

 チャンは、1994年にハーバード大学を卒業して生命化学の学士を、1998年にMITを卒業して生物学のPhDを取得した。その後、ハーバード大学の医学部で医学教育を受けた後、カリフォルニア州にあるサンタクララバレーメディカルセンターでのインターンなどを経て、2004年にスタンフォード大学の准教授(Associate Professor)に就任した。

長鎖ノンコーディングRNAの研究で成果

 ハワード・チャンが生物学の分野で取り組んだのは、ゲノムの中にあるノンコーディング部分の研究である。コードとはタンパク質の生成を行うための設計図であり、従来はこのコードする部分が遺伝子の枢要部分と考えられ、その研究が先行してノンコーディングの部分については研究が遅れていた。チャンは、長鎖ノンコーディングRNAの研究に取り組み、発生生物学、がん、老化などへの応用をめざした。そして、これらの研究に用いるため、ATAC-seqと称する技術を新たに開発した。

 これらの研究を進め、NatureやCellなどに次々と論文を発表したことにより、チャンは世界的に注目される科学者となった。
 チャンは、2009年にハワード・ヒューズ医学研究所のInvestigator Programに選ばれた。同研究所は、米国の実業家ハワード・ヒューズによって1953年に設立された非営利の医学研究機関であり、同研究所のInvestigator Programは、トップクラスの研究者に対し、大学等に在籍のまま同研究所の研究員として雇用し、最低5年間にわたり研究資金を提供するものである。
 チャンは、2011年にスタンフォード大学の正教授に昇進した。

キングファイサル国際賞を受賞

 チャンは2024年に、サウジアラビアの第3代国王ファイサルの遺徳をしのんで創設されたキングファイサル国際賞(科学部門)を受賞した。受賞理由は「遺伝子調節と機能における長鎖ノンコーディングRNAの役割の解明、DNA調節領域を特定するための革新的なゲノムワイドアプローチの共同開発(Elucidating the role of long non-coding RNAs in gene regulation and function, Co-developing innovative genome-wide approaches for identifying DNA regulatory regions)」であった。そして、これらの発見は、分子生物学と遺伝学全体に大きな影響を及ぼしており、複雑な人間の病気を理解する上で重要な意味を持つとしている。
 なお同賞は、盧煜明が2014年に、王暁東が2020年に、ジャッキー・インが2023年に、それぞれ受賞している。

 チャンは、2016年に台湾の中央研究院の院士に、2017年に米国医学アカデミー会員に、2020年に米国科学アカデミー会員などとなっている。

参考資料

・Stanford University HP Howard Y. Chang, MD, PhD https://neuroscience.stanford.edu/people/howard-y-chang-md-phd
・台湾・中央研究院HP 張元豪 Howard Yuan-Hao Chang https://academicians.sinica.edu.tw/index.php?r=academician-n%2Fshow&id=704&_lang=ch
・King Faisal Prize HP  Professor Howard Yuan-Hao Chang King Faisal Prize in Science 2024 Laureate https://kingfaisalprize.org/howard-yuan-hao-chang/