はじめに
浙江大学農業・生物技術学院 (浙江大学农业与生物技术学院)は、浙江大学の学院（学部）の一つである。
清末に設置された浙江農業教員養成所を源とするが、国民政府の時代に浙江大学の農学院となり、日中戦争の戦乱を避けて西部に疎開した。
新中国建国後の院系調整により、浙江大学から独立して浙江農学院となるが、全国的な総合大学化の流れで浙江大学と合併した。
1. 名称と所管
（1）名称
・中国語表記 浙江大学农业与生物技术学院
・日本語表記 浙江大学農業・生物技術学院
・英語表記 College of Agricultural & Biotechnology, ZJU
（2）所管
農業・生物技術学院は、浙江大学の学院（学部）の1つである。浙江大学は、国務院教育部の直轄大学である。
2. 本部の所在地
農業・生物技術学院は、本体である浙江大学の本部・紫金港キャンパスにある農生環ビル（农生环大楼）にある。紫金港キャンパスの住所は、杭州市西湖区余杭塘路866号である。
3. 沿革
（1）浙江農業教員養成所
農業・生物技術学院の源は、清朝末期の1910年に設置された浙江農業教員養成所（浙江农业教员养成所）である。
1911年の辛亥革命後、浙江中等農業学堂（1912年）、浙江省立甲種農業学堂（1913年）、浙江公立農業専門学校（1923年）と名称を変更していった。
（2）国立第三中山大学農学院
辛亥革命後の混乱期を経て、蒋介石の率いる国民政府は徐々に中国全体の統一を進め、1927年に杭州も支配下において、国立第三中山大学を新たに設置した。その際、浙江公立農業専門学校は、国立第三中山大学に農学院として編入された。
翌1928年には、国立第三中山大学は浙江大学に改称した。
1937年7月に日中戦争が始まり、中国大陸の沿岸部に位置していた中国の主要大学の多くは、日中戦争の戦火を免れるため大陸西部に疎開を余儀なくされた。浙江大学も、当初は杭州を離れて浙江省内の山間部に、続いて西隣の江西省に移動したが、日本軍の急激な侵略を受け1940年に重慶の南に位置する貴州省遵義に移動した。農学院も、本体の浙江大学と共に疎開した。
1945年8月、日本が太平洋戦争に敗北し、中国から撤退を進めると、浙江大学も徐々に浙江省杭州への帰還を開始し、1946年9月に貴州省遵義からの撤収を完了した。農学院も本体と行動を共にした。
（3）院系調整で浙江農学院に
1949年に中華人民共和国が建国され、1952年にソ連の高等教育制度を参考とした院系調整が中国全土で進められた。
その一環で浙江大学の学部調整が行われ、浙江大学の農学院は独立して浙江農学院となった。
1960年に、浙江農学院は浙江農業大学に名称変更した。
（4）合併し新浙江大学の一部に
1998年には、浙江大学、浙江農業大学、浙江医科大学、杭州大学が合併し、新たな浙江大学となった。
1999年に、浙江農業大学の農学系、植物保護系、茶学系、原子核農業科学研究所、生物技術研究所などを中心に浙江大学農業・生物技術学院が設立された。
4. 規模
農業・生物技術学院は浙江大学の学部であり、他の農業大学と比較するとそれほど大きくない。
（1）学生数
同学院のHPによれば、現在の学生数は全体で1,958人である。このうち本科生（学部学生）は853人であり、修士学生が637人、博士学生が468人である。また、留学生は92人である。
（2）教員数
同院のHPによれば、教職員数は225人、そのうち教授が100人、准教授が74人である。
（3）学部と学科
同学院は、農学系、園芸系、植物保護系、茶学系、応用生物科学系の5つの系（学科に近い）を有している。この5つの系に併せ、作物科学研究所、果樹科学研究所、蔬菜研究所、園林研究所、生物技術研究所、昆虫科学研究所、農薬・環境毒理研究所、茶葉研究所、原子核農業科学研究所を有している。
（4）双一流学科建設
中国は2017年に、国内の大学とその学科を21世紀半ばまでに世界一流とすることを目標とする政策（双一流政策）を開始した。2022年に改訂された双一流学科建設において、農業・生物技術学院は園芸学、植物保護学の2学科が選定されている。
（5）国家重点実験室など
農業・生物技術学院は、次の全国重点実験室を有している。
○水稲生物学国家重点実験室（水稻生物学国家重点实验室） 中国水稲研究所と共同管理
（5）両院院士
陈子元（中国科学院院士）、喻景权（中国工程院院士）の2名である。
参考資料
・浙江大学農業・生物技術学院HP http://www.cab.zju.edu.cn/
・浙江大学HP https://www.zju.edu.cn/
