211工程の開始(1995年)
211工程は、江沢民が推し進める科教興国戦略の一つとして、世界一流レベルの大学の構築を目指して1995年に開始された大学の重点化政策である。
策定経緯
211工程は、「21」世紀へ向けて中国全土に「1」百余りの重点大学を構築することを目的とすることから名付けられ、国家発展改革委員会、教育部、財政部が共同で行ったプロジェクトである。1995年決定の「科学技術の進歩の加速について」で提案された科教興国戦略により正式に開始された。
1990年代の中国の高等教育は、グローバル化と知識経済化の進展を背景に、世界一流レベルの大学の構築を目指した重点大学の整備目標が模索された。
1993年2月、中国共産党中央と国務院は、「中国教育改革発展綱要:中国教育改革和发展纲要」を公布し、中央と地方の力を結集して約百校の重点大学と重点学科および専攻を優先的に整備しなければならないと指摘した。
この基本方針に基づき、国家教育委員会(現教育部)は1993年7月に「高等教育機関および重点学科の整備に関する若干の意見」を策定し、さらに科教興国戦略を受けて1995年に国務院は「211工程建設全体計画:211工程总体建设规划」を承認し、正式に始動した。
211工程の目標
目標は次の3点である。
・21世紀に向けて百の大学と一部の重点学科において、教育の質、科学研究、大学の管理・運営効率を大幅に向上させる。
・これらの大学において優秀な人材を育成し、経済社会の発展に貢献する。
・特定の大学の整備を重点的に進め、世界の教育、科学研究、人材育成の水準に接近させ、国際的に高い名声と地位を確立する。
実施状況と成果
第9次五か年計画期間 (1996年~2000年)中、211工程は99の大学で実施され、602の重点学科が設置されるとともに、全国高等教育公共サービス体制整備の拠点(中国教育とリサーチネットワーク、高等教育文献検索保障システムなどの建設を含む)が設置された。
さらに第10次五か年計画期間 (2000年~2005年)中、107の大学で実施され、821の重点学科と全国高等教育公共サービス体制整備の拠点が設置された。211工程に必要な建設資金は、中央政府、関連当局、地方政府および大学が共同で協力して調達した。
1995年から2005年にかけて、211工程に投入された資金の総額は368億2600万元で、そのうち中央政府の財政支出分は78億4200万元であった。
2008年の国務院常務会議における「211工程建設の業績報告」によると、211工程が実施されて以来、中国の大学での人材育成の質と革新が向上した。また、大学の学科に顕著な成果が表れ、一部の学科が世界の先進的なレベルに近づいた。このように211工程は中国の高等教育全体の実力が著しく高めた。
参考資料
・学海荡舟HP 『国家计委、教委、财政部关于印发《“211工程”总体建设规划》的通知』