科学技術体制の深化に関わる若干の問題の決定(1988年)
科学技術体制の深化に関わる若干の問題の決定は、研究機関に競争的なメカニズムの導入し、研究機関の所有と経営管理の分離などを促すものであった。
1988年国務院は、「科学技術体制の深化に関わる若干の問題の決定:关于科学技术体制改革若干問題决定」を公表した。この決定は、1985年の「科学技術体制改革に関する決定」をさらに推進しようとするもので、研究機関に競争的なメカニズムの導入し、様々な形式の請負経営責任制の推進、研究機関の所有と経営管理の分離などを促すものであった。
この決定がなされた1988年頃は、役人ブローカー(官倒)の腐敗・汚職が社会的に拡大し、市場では市民たちが急激な物価上昇に翻弄されるなど、改革開放に伴う問題や矛盾が顕在化し、計画経済を維持すべきとする陳雲ら保守派が台頭しつつあった。鄧小平ら改革派は、これらの対立する意見を乗り越え、さらに改革開放を進めて科学技術と経済の連携を確立し、経済と社会の発展を推進すべきとする決定を行ったものである。
この決定には、以下の内容が盛り込まれている。
・研究機関に競争のメカニズムを導入し、各種の請負経営責任制を積極的に導入し、研究機関の所有と経営管理を分離する。
・行政管理改革の一貫として、各政府部門は傘下の科学研究機関を独立させ、連合させ、競争させる。
・研究機関が新しい研究機能を持つ企業に発展し、経済発展に寄与することを奨励する。研究機関は、他の企業との相互請負、賃貸、吸収合併、共同経営などの手段により、研究型企業に発展することを可能とする。
・科学技術と経済の長期的な発展を確保するため、基礎研究を持続的かつ安定的に推進する必要があり、国は基礎研究のための資金を拡大する。
・各地域は地域振興政策を制定し、科学技術人材の合理的な流動を促進する。
この決定により、これまできわめて非効率で国が無くならない限り倒産しないと揶揄される「鉄の茶碗(日本語では、いわゆる「親方日の丸」に相当)」的な政府関連の研究機関の意識を変革し、国により配布された予算に依存することから脱し、自らの知恵と能力で研究資金を獲得してくることを目指したのである。
参考資料
・百度HP 『国务院关于深化科技体制改革若干问题的决定』