はじめに
近代物理研究所(Institute of Modern Physics)の前身は、周恩来首相の指示により1957年に甘粛省蘭州市に設置された、中国科学院蘭州物理研究室である。1962年に現在の名称となった。
原子核物理学、放射線生物学、核燃料、使用済み燃料再処理、原子力材料、同位体、粒子加速器などの研究開発を行っている。

1. 名称
○中国語表記:近代物理研究所 略称 近代物理所
○日本語表記:近代物理研究所
○英語表記:Institute of Modern Physics 略称 IMP
2. 所在地
近代物理研究所の所在地は、甘粛省蘭州市南昌路509号である。
3. 沿革
近代物理研究所の前身は、1956年に出された周恩来首相の指示により、翌1957年に甘粛省蘭州市に設置された中国科学院蘭州物理研究室である。1962年に現在の名称となった。
4. 組織の概要
(1)研究分野
近代物理研究所は、原子核物理学、放射線生物学、核燃料、使用済み燃料再処理、原子力材料、同位体、粒子加速器などの研究開発を行っている。
(2)主な研究組織
近代物理研究所の主な研究組織は以下のとおりである。
・蘭州重イオン加速器国家実験室(兰州重离子加速器国家实验室)
・中国科学院高精度核分光学重点研究室(中国科学院高精度核谱学重点实验室)
・中国科学院重イオンビーム放射線生物医学重点研究室(中国科学院重离子束辐射生物医学重点实验室)
5. 研究所の規模
(1)職員数
2021年現在の職員総数は923名で、中国科学院の中で第19位である(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。
(2)予算
2021年予算額は7億4,581万元で、中国科学院の中では30位までのランキング外である(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。
(3)研究生
2021年現在の在所研究生総数は484名で、中国科学院の中で30位までのランキング外である(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。
6. 研究開発力
(1)国家級実験室など
1つの国家実験室(国家重点実験室より格上の施設)を有している(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。
・蘭州重イオン加速器国家実験室(兰州重离子加速器国家实验室):1991年に設置された。後述する蘭州重イオン加速器を運用する研究室である。
(2)大型研究開発施設
中国科学院は、同院や他の研究機関の研究者の利用に供するため大型の研究開発施設を有している。(中国科学院内の設置状況詳細はこちら参照)。
近代物理研究所は、この大型共用施設・共用実験施設として「蘭州重イオン研究装置」を設置・運営している。
〇蘭州重イオン研究装置(兰州重离子研究装置):中国最大の中低エネルギー重イオン研究装置であり、重イオン物理学とその学際分野の研究を行う。1958年建設の1.5メートルサイクロトロン、1979年建設の大型サイクロトロン、2000年建設の冷却貯蔵リングの3つの要素施設からなる。

(3)NSFC面上項目獲得額
NSFC一般プログラム(面上項目、general program)の獲得資金額は、中国科学院の中では20位までのランキング外である(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。
7. 研究成果
(1)Nature Index
Nature Index2022では、中国科学院内の20位までのランキング外である(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。
(2)特許出願数
2021年の特許出願数は144件で、中国科学院内の20位までのランキング外である(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。
(3)成果の移転収入
2021年研究成果移転収入は、中国科学院内の9位までのランキング外である(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。
(4)両院院士数
2024年2月時点で所属する両院の院士は4名であり、中国科学院内のランキング外である(他の研究機関との比較の詳細はこちら参照)。
〇中国科学院院士(3名):魏宝文、詹文龙、赵红卫
〇中国工程院院士(1名):夏佳文
参考資料
・近代物理研究所 HP https://www.imp.cas.cn/
・中国科学院HP https://www.cas.cn/
・中国科学院統計年鑑2022 中国科学院発展企画局編