概要
中国中医科学院(China Academy of Chinese Medical Sciences)は、中国伝統医学や漢方薬に関する基礎研究、応用研究、ハイテク研究などを任務としている。

1.名称
○中国語:中国中医科学院 略称:中医科院
○日本語:中国中医科学院
○英語:China Academy of Chinese Medical Sciences 略称:CACMS
2.所管
国務院の国家中医薬管理局の所管である。同局は、国務院の国家衛生健康委員会の管理を受ける部委管理国家局の一つであり、中国伝統医学や漢方薬に関する業務を担当している。
3.所在地
中国中医科学院の本部は、北京市東城区東直門内南小街16号にある。北京市の中心である天安門から見て直線距離で約3キロメートル北北東に位置し、雍和宮や地檀公園に近い。
4.沿革
中国中医科学院の歴史は、中華人民共和国建国後の1954年に遡る。当時の国家主席・毛沢東は、中国の伝統的な医学や薬学に係る知識や臨床経験を体系的に整理・研究する必要があるとして、中医薬専門機関の設立を指示した。
これを受けて、国務院の衛生部(現在の国家衛生健康委員会)は1956年12月に、同部直属機関として中医研究院を設立した。その際、附属医院や、内科研究所、外科研究所、鍼灸研究所、中薬研究心なども併せて設置した。
1985年に、中国中医研究院と名称を変更した。
1986年には、国務院の機構改革に伴い、衛生部から国家中医薬管理局(現在の国家中医薬管理局)の所管に変更となった。
2005年に、中国中医科学院と名称を再度変更した。
5.組織・規模
(1)使命
中国中医科学院は、中国医学の基礎理論、中国医学を用いた疾患予防・治療、中国医学による新薬開発などの分野における、科学技術振興、ハイレベルな科学研究人材の育成、国内外の科学技術交流・協力の推進を行っている。中国医学については、下記7.の特記事項を参照されたい。
なお中国においては、医学関係研究機関として、国務院の国家衛生健康委員会所管の中国医学科学院(Chinese Academy of Medical Sciences)がある。
(2)職員数
中国中医科学院のHPによれば、2023年時点の総職員数は約6,900名である。
(3)本部組織
中国中医科学院のトップは院長(国務院・部委員会の局長クラス)であり、中国共産党党委書記、副院長などが指導部となっている。
本部機構として、科技管理処、産業発展処、国際合作処、人事教育処、資源管理保護処、研究生部などが置かれている。
(4)下部組織
中国中医科学院は、直属組織(二級法人機構と呼んでいる)として次の13の組織を有している。
・漢方薬研究所(中药研究所)
・鍼灸研究所(针灸研究所)
・中医基礎理論研究所(中医基础理论研究所)
・中医薬情報研究所(中医药信息研究所)
・中国医史文献研究所
・中医臨床基礎医学研究所(中医临床基础医学研究所)
・医学実験センター(医学实验中心)
・西苑医院
・広安門医院(广安门医院、肿瘤研究所)
・望京医院(骨伤科研究所)
・眼科医院(眼科研究所)
・研究生院
・中医薬健康産業研究所(中医药健康产业研究所)
(5)研究生の受け入れ
中国の主要な研究機関では、大学の学士学位を取得した人たちを大学院生として受け入れて、修士学位や博士学位を取得させる制度が存在している。これらの学生を研究生と呼ぶ。
中国中医科学院の場合、上海中医薬大学、南京中医薬大学と協力して、中医薬、中薬学、中西医学融合などの分野で、大学院生教育に当たっている。
7.特記事項
(1)中国医学とは
中国の医学や薬学の伝統は古く、紀元前の春秋戦国や前漢の時代にさかのぼり、医学書の編纂も確認されている。その後、様々な医学者や薬学者が出て体系化してきたものが、現在にも続いている中国医学(中医学、日本では漢方医学)である。
中国医学は、全身を見て治療を行うこと、生薬などを用い人間の心身が持っている自然治癒力を高めることで治癒に導くこと、体を侵襲しないことなどの特徴がある。
一方、清朝末期の1840年に発生した英国とのアヘン戦争、1856年の英国・フランスとのアロー戦争などを経て、西欧列強が植民地支配の手段としてキリスト教布教を進め、支配地域の病人を治癒することが布教に役立つとの考えから、支配下にある地域に西洋医学による病院を建てていった。これが中国の西洋医学との邂逅であり、以降、政府もこれに対抗するため伝統的な中国医学だけではなく西洋医学を施す病院の設置を進めていった。
このような歴史的経緯から、現在の中国では西洋医学と伝統的な中国医学が併存している状態であり、例えば西洋医学を行う通常の医師と、伝統医学を行う「中医師」の2つの医師資格が併置されている。
(2)ノーベル賞受賞者・屠呦呦
屠呦呦(Tu Youyou)は、浙江省の寧波(にんぽー)に生まれ、中国のみで教育を受け、中国で研究活動を行った研究者として、初めてノーベル賞を受賞した科学者である。
屠呦呦は、北京大学医学部薬学科を卒業して、設立間もない中医研究院(現在の中国中医科学院)に配属された。同研究院でマラリアの新薬研究に長年取り組み、マラリアの特効薬である「青蒿素、アルテミシニン」を開発し、これがノーベル賞受賞につながった。詳しくは、こちらを参照されたい。

(3)中国科学院などとの相違
中国において、英語の組織名にAcademyが付く機関として、中国科学院、中国工程院、中国社会科学院の3機関がある。これら3機関は、米国科学アカデミー、英国王立協会、フランス学士院などと同様に、中国における優れた科学者を顕彰する機能を有しており、院士あるいは学部委員を選任している。
一方中国中医科学院は、英語名にAcademyが付くが、上記3機関と違って科学者顕彰機能は有していない。これは、国家衛生健康委員会所管の中国医学科学院(Chinese Academy of Medical Sciences)などと同様である。
参考資料
・中国中医科学院HP https://www.cacms.ac.cn/index.html
・維基百科HP 中国中医科学院
・百度HP 中国中医科学院
・Science Portal China HP 第25号:中国伝統医学 ~「中医学」と「漢方医学」について~ https://spap.jst.go.jp/china/report/200810/toku_0.html


