概要

  科学技術大国 中国 は2013年7月25日に、中央公論社より中公文庫の一冊(ISBN 978-4-12-102225-7 c1240)として刊行された。

 書籍の紹介文:国力増強の勢いを増し、政治や経済、あらゆる分野で日本を凌駕し始めた中国。では、自動車産業や電子・ロボット工学など、日本が世界をリードしている科学技術の分野ではどうか。本書では、スーパーコンピュータや原子力開発、iPS細胞など、近年注視されている六つの科学技術を取り上げ、中国の現状、日本との差異を分析した。中国は、世界"最強”の科学技術大国となりうるのか、その真の実力を探る。

科学技術大国 中国の表紙
科学技術大国中国のカバー

 本書は、既に中央公論社では絶版となっている。そこで、原稿をPDF化したものを記録として残し、興味のある読者に読んで貰うため以下に掲載する。

目次 

はじめに         はじめにを読む

序 章 巨人の正体
科学論文での躍進・低い専門家の評価・食い違う像・科学技術最前線
             序章を読む 

第一章 スパコン「天河1A」と「星雲」
世界のスパコン開発から/中国はどうか/「天河1A」/「星雲」/ハイブリッド型の功罪・画期的な成果だが・・/TOP500ランキングの意義/HPCチャレンジベンチマークとゴードン・ベル賞/上がらない利用率/ビジネス応用で成果を挙げる/真の世界トップレベルへ 
            第一章を読む

第二章 有人潜水調査船「蛟竜」と海洋科学技術
一.有人潜水調査船「蛟竜」  未知なる世界・深海/「バチスカーフ」と「トリエステ」 /科学目的の有人探査船/兄は海の技術者、弟は宇宙の技術者/「しんかい6500」を抜いて世界一に/記録の意義とは/利用目的が不明/重要部品はロシアから/開発は時間をかけて着実に/早期の経済的なリターン/課題は今後の運用
二.中国の海洋科学技術  遅れてきた海洋大国/海洋調査船と観測衛星/南極観測の実施/韓国と世界一を競う造船業/将来を見据えた海洋石油・天然ガス開発
            第二章を読む

第三章 望遠鏡LAMOSTと宇宙開発
一.望遠鏡LAMOST  天文学の歴史/LAMOSTとは/建物構成と光学系構成/光学技術レベルは高いが/SDSSプロジェクト /不安材料は観測精度・効率/データの解析能力の問題/
二.宇宙開発   ロケットの打ち上げ/有人宇宙飛行の誇り/用意周到な「神舟」計画/中国版宇宙ステーション「天宮」/数十年の年月を超えて蘇るソユーズ/人民解放軍の協力/中国版GPS計画/弱点を克服するには/全般的な技術力評価
           第三章を読む

第四章 核融合装置EASTと原子力開発
一.核融合研究装置EAST  核分裂と核融合/トカマクとITER計画の発足/中国の最新鋭装置「EAST」/世界初の全超伝導トカマク装置/容量の限界/外国の技術や部品も使う/核融合研究人材をいかに育成するか
二.原子力開発  両弾一星~軍事技術開発/一周後れの平和利用/海外技術が中心の原子力発電 /実用化に向けた着実な歩み/人材育成の展望/住民の反対運動が課題に
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第五章 iPS細胞マウス「小小」
幹細胞とES細胞/iPS細胞の開発/クローン研究の実績/世界初のiPS細胞マウス「小小」/効率の画期的向上/政府による研究支援/急激に向上する研究レベル/日本を凌駕する臨床応用体制/今後の日本との協力関係
           第五章を読む

第六章 遺伝子解析会社BGI社
遺伝子解析の歩み/BGI社の歴史/独特のビジネスモデル/インドのインフォシス社/BGI社の科学技術的な意義/アカデミックな実力を強化/社会にも貢献/欧米への窓口、香港支部/展望
          第六章を読む

https://china-science.com/wp-content/uploads/2024/11/第七章中国の科学技術の特徴.pdf第七章 中国の科学技術の特徴
一.進め方の特徴  現在もキャッチアップ主体/技術・機器の外国依存/着実なプロジェクト実施/早急な実用化・商業化/自前での製作/最新鋭機器導入と運用体制/ジアは研究者の不正が多い? /信賞必罰で活性化/中国共産党の指導との関係は
二.圧倒的な人材の厚み   研究者数で世界一/世界トップの上海中学生/科学オリンピックで世界一/大学学生数でも世界を圧倒/存在感の大きい中国人留学生/清華大学の誕生秘話/増大する博士数/海外人材の呼び戻し/際立つ若さ/課題は何か
三.急速に伸びる科学技術投資  GDPの伸びを上回る/予算は名目で日本に逆転/資金力の秘密/中国版科研費「NFSC一般プログラム」/民間の研究開発費はどこへ
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終 章 日中共存を求めて
世界トップレベルと差のある中国/日中協力の意義/恐れてはいけないし、侮ってもいけない
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おわりに     おわりにを読む          
参考文献     参考文献を読む

書籍全体

中公新書のPDF(保存用)

 2013 年7 月に中公新書として刊行した 科学技術大国 中国 は、既に絶版となっている。そこで、手元に残っている書籍をPDFに変えて、閲覧・保存用に掲載した。なお、閲覧は可能であるが、印刷は透かしが入る。また、編集は不可である。

中国語訳

 科学技術大国 中国 は、中国国務院科学技術部にある中国科学技術信息研究所が2014 年3 月に中国語に翻訳し、中国政府部内の調査レポートとした。この中国語訳についても、記録として残し興味のある読者に読んで貰うため、PDF化したものを以下に掲載する。

参考資料

・JST 中国総合研究センター『中国の科学技術力について~総論編』 2010 年 https://spap.jst.go.jp/investigation/report_2010.html
・JST 中国総合研究センター『中国の科学技術力について~ビッグ・プロジェクト編』2010

・JST研究開発戦略センター『中国の科学技術力について~世界トップレベル研究開発施設』
2012 年  https://www.jst.go.jp/crds/report/CRDS-FY2012-OR-01.html
・伊佐進一『「科学技術大国」中国の真実』講談社現代新書、2010 年
・日本貿易振興機構『中国新時代の経営戦略』2013 年