はじめに
国家航天局(China National Space Administration)は国務院の対外名称維持組織の一つであり、中国の宇宙開発活動全般(有人宇宙活動と国防宇宙活動を除く)を統括する組織である。
対外名称維持組織(对外保留牌子)とは、国務院内の組織改革で他の部局に統合された後も、対外的な便宜のため従来の名称の使用を認めるものである。国家航天局は2008年に工業・情報化部の一部局となったが、対外名称維持組織と認められたため、引き続き中国を代表して外国や国際機関との協力・調整を行っている。

1. 名称
〇中国語:国家航天局 略称:航天局
〇日本語:国家航天局
〇英語:China National Space Administration 略称:CNSA
2. 所在地
国家航天局は、北京市海淀区阜成路甲8号にあり、北京市の中心地である天安門の約10キロメートルほど西北西に行ったところにある。近くには中央広播電視塔(中央广播电视塔、北京テレビタワー)がある。
上の写真のとおり、国家国防科技工業局と同一の建物にある。
3. 沿革
1993年に航空航天工業部が改編され、業務のほとんどが国営企業である中国航空工業総公司と中国航天工業総公司に移管されたが、対外的な業務については中国航天工業総公司に設置された国家航天局が対外名称維持組織となって対応することとなった。
1998年には、国防科学技術工業委員会(現在の国家国防科技工業局)に国家航天局が移転し、引き続き対外名称維持組織として、対外的・国際的な業務を担当することとなった。
2008年に、国防科学技術工業委員会が工業・情報化部の管理する国家国防科技工業局となったため、国家航天局は工業・情報化部の組織となり、対外名称維持組織として対外的・国際的な業務を担当することとなった。
4. 任務
国家航天局は、中国の宇宙開発活動全般を統括する組織である。ただし、有人宇宙活動と国防宇宙活動は中央軍事委員会と人民解放軍が担当している。その一環で、数年ごとに中国の宇宙白書を刊行している。
また、対外名称維持組織として、中国を代表して外国や国際機関との協力・調整を行っている。
5. 組織
(1)幹部
トップである局長は、国務院の副部長(日本の副大臣クラス)であり、国家航天局のHPによれば、2025年現在の局長は単忠徳である。単忠徳は、1970年に山東省に生まれ、西安理工大学で学士、修士の学位を、清華大学で博士学位を取得して、機械科学研究総院や南京航空航天大学を経て、2024年に工業情報化部副部長となり、2025年に国家国防科技工業局長となって、国家航天局長を兼務した。
副局長と総工程師が任命されており、局長を補佐している。
なお、同局の所在地は国家国防科技工業局と同様であり、また二つの局の局長は兼務である。したがって、同局は実質的に国家国防科技工業局の一組織と考えられる。
(2)内部組織
主な内部部局は次のとおりである。
・発展計画司
・系統工程司
・科技・質量司
・外事司
(3)直属単位
いくつかの直属単位を有しており、主なものとその業務は次のとおりである。
〇月探査・宇宙工学センター(探月与航天工程中心):月探査プロジェクトの管理を担当する組織として2004年に設立された。
〇地球観測・データセンター(对地观测与数据中心):高解像度による地球観測システムの開発と観測データ管理・提供を目的として、2010年に設立された。
〇宇宙リモートセンシングデモンストレーションセンター(航天遥感论证中心):中国のリモートセンシング衛星シリーズおよびその応用に関する基礎的、将来的、戦略的な研究を、中国科学院と共同で行う組織として、2004年に設立された。
参考資料
・工業・情報化部HP https://www.miit.gov.cn/
・中央人民政府HP 『国家国防科技工业局』http://www.sastind.gov.cn/
・国家航天局HP http://www.cnsa.gov.cn/