中国は古代以来優れた文明を育んできた地域であり、科学技術についても4大発明の発祥の地であることなどで世界最先端を誇っていた。
 ライフサイエンスにおいては、稲の栽培が約1万年前の長江流域の湖南省周辺地域を起源とすると考えられている。また、はるか2000年以上も前より漢方による医療や投薬が行われ、医学書なども編纂されてきた。

 しかし、その後の様々な王朝の興廃や異民族の支配などの混乱もあって、清の時代には西洋列強に軍事、経済、科学技術などで後塵を拝することになった。欧米流の新しい科学技術を導入したのは清朝末期から辛亥革命後である。

 中華人民共和国の建国後、軍事、農業、科学技術などが体制維持の観点から国家の優先事項とされたが、経済の停滞や文化大革命中の知識人冷遇・敵視政策により、中国の科学技術は低迷した。

 1976年末の文革終了後、改革開放政策が進展し経済が拡大するに従い中国の科学技術は発展してきた。20世紀末から今世紀初頭にかけての経済発展の結果、中国の研究開発費や研究者数が急激に増大し、科学装置や施設なども世界最新鋭となっている。最近特に進展著しいのはゲノム編集などの最先端技術を用いたライフサイエンス研究である。

 ここでは、中国におけるライフサイエンス関係の歴史をいくつかの時代に分けて述べる。

漢代の羅針盤
古代から清朝末期まで

中国のライフサイエンスは、古代より稲作や漢方医学などで世界最先端にあったが、ルネサンス以降の西欧近代科学に清朝は圧倒された。

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北京協和医学院の正門
国民政府の時代

辛亥革命後、医学高等教育機関や科学研究機関が設立されたが、政治的な混乱や列強の帝国主義的な動きにより、中国のライフサイエンスは停滞した。

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中国科学院の正面
中華人民共和国の建国

中華人民共和国が建国され、新しい研究機関が設立され、ソ連との協力も開始され、ライフサイエンス研究も強化された。

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ウシ・インスリン合成
反右派闘争と文革の時代

中国のライフサイエンス研究は、反右派闘争や文化大革命に遭遇したことにより、欧米や日本に大きな後れを取ることになった。

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全国科学大会の開催
改革開放による発展

文革収束後に科学の春や四つの近代化が提唱され百人計画などの回帰政策も実施されて、ライフサイエンスも大きく進展していった。

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陳竺博士と筆者の写真
近年の動向

中国におけるライフサイエンス関係の近年の大きな動向として、SARS、食品安全性の問題などを紹介する。

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参考資料

・JST中国総合研究・さくらサイエンスセンター『中国の科学技術の政策変遷と発展経緯(PDF)』2019年
・天児慧『中華人民共和国史』岩波新書 2013年
・天児慧『中国の歴史11 巨龍の胎動』講談社 2004年
・安藤正士『現代中国年表1941-2008』岩波書店 2010年