ここでは、CRDSの俯瞰報告書を元データとして、環境・エネルギー分野における各国・地域の科学技術力比較を記す。なお、直近のCRDS俯瞰報告書(2023年)についてはこちらを、科学技術力比較の手法については、こちらを参照されたい。
1. 環境・エネルギー分野における国際比較(2023年)
(1)国際比較の結果
全体 欧州~米国>中国~日本>韓国
基礎 欧州~米国>日本~中国>韓国
応用・開発 欧州>米国~中国>日本>韓国
(註)「~」は左の国・地域が右の国・地域と同等であるか若干強いと言うことであり、「>」は左の国・地域が右の国・地域と顕著な差があると言うことである。
(2)根拠となるデータ
以下に示すのが、上記国際比較の元データであり、JST/CRDSの俯瞰報告書(2023年)から、筆者が独自の手法で作成したデータである。
○分野全体のデータ:下記の基礎のデータと応用・開発のデータを足し合わせ、分野全体のデータとした。
日本 | 米国 | 欧州 | 中国 | 韓国 | |
◎ | 32 | 55 | 63 | 38 | 5 |
○ | 51 | 31 | 29 | 44 | 35 |
△ | 9 | 6 | 0 | 10 | 47 |
× | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
○基礎のデータ:基礎フェーズでの国際比較表の◎、○、△、×の個数を数えた表である。
日本 | 米国 | 欧州 | 中国 | 韓国 | |
◎ | 17 | 29 | 31 | 17 | 0 |
○ | 27 | 14 | 15 | 24 | 20 |
△ | 2 | 3 | 0 | 5 | 23 |
× | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
○応用・開発のデータ:応用・開発フェーズでの国際比較表の◎、◎、△、×の個数を数えた表である。
日本 | 米国 | 欧州 | 中国 | 韓国 | |
◎ | 15 | 26 | 32 | 21 | 5 |
○ | 24 | 17 | 14 | 20 | 15 |
△ | 7 | 3 | 0 | 5 | 24 |
× | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
2. 環境・エネルギー分野における経年変化
ここでは、環境・エネルギー分野の経年変化を示すため、それぞれの年の環境・エネルギー分野全体の評価を数値化してグラフとしている。
(1)経年変化のグラフ
(2)根拠となるデータ
各年度の俯瞰報告の国際比較表の◎、○、△、×の個数を数え、既に示した手法で数値化したデータである。
2008年 | 2009年 | 2011年 | 2013年 | 2015年 | 2017年 | 2019年 | 2021年 | 2023年 | |
日本 | 1.00 | 1.00 | 0.99 | 0.96 | 0.89 | 0.88 | 0.85 | 0.81 | 0.84 |
米国 | 0.94 | 0.92 | 0.98 | 0.89 | 1.00 | 0.95 | 0.95 | 0.94 | 0.94 |
欧州 | 0.99 | 0.99 | 1.00 | 1.00 | 0.99 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 |
中国 | 0.37 | 0.38 | 0.54 | 0.67 | 0.60 | 0.64 | 0.79 | 0.82 | 0.86 |
韓国 | 0.51 | 0.50 | 0.65 | 0.57 | 0.60 | 0.51 | 0.55 | 0.55 | 0.56 |
3. CRDSによる国際比較の表
下記に示した表は、CRDSの「研究開発の俯瞰報告書 環境・エネルギー分野(2023年)」にある図表1.2.2–2 エネルギー分野の国際比較結果一覧表(45~46ページ)と、図表1.2.2–3 環境分野の国際比較結果一覧表(46~47ページ)を元に作成した表である。
この表の内容が、上記1.および上記2.のデータとなっている。表の中で、中国の科学技術力の強い研究開発領域を赤色でマークし、逆に弱い部分を黄色でマークした。元データであるCRDSの俯瞰報告書では、赤色や黄色でマークした部分はない。
なお、CRDSの他の分野の俯瞰報告では一つの研究開発領域が複数に分割される例はないが、環境・エネルギー分野の場合には複数に分割されている例がいくつかある。例えば、原子力発電は新型原子炉、核融合炉、原子力安全、再処理の4つのサブ領域に分かれている。この場合、これら分割されたサブの研究開発領域も、他の研究開発領域と同等の扱いとした。
(註1)CRDSの俯瞰報告書の表を元に上記の表が作成されているが、俯瞰報告書にあるトレンドは上記の表には記載されていない。これは、このコーナーでの国際競争力比較にトレンドを使用していないからである。
(註2)CRDSの俯瞰報告書ではエネルギー分野と環境分野が別々の表となっているが、上記の表ではこれを統合させ、一つの表としている。
4. 中国の環境・エネルギー分野の技術力の現状
中国の環境・エネルギー分野の国際比較の現状を、以下にまとめる。
○中国は、2010年代後半から急激に環境・エネルギー分野の科学技術力を増大させ、現在は日本とほぼ互角であり、世界トップの欧州、第二位の米国に追いつこうとしている。
○日本との関係で言えば、基礎研究は日本の方が中国より若干上位にあるが、応用研究・開発では中国の方が日本より強い。
○中国が世界トップレベルにある研究開発領域(図で◎◎、赤色でマーク)は次の10領域である。より詳しくは次ページの参考を参照されたい。
・太陽熱発電・利用
・産業熱利用~蓄熱関連
・地域・建物エネルギー利用
・ネガティブ・エミッション技術~陸域
・反応性流体
・破壊力学
・社会ー生態システムの評価・予測
・持続可能な大気環境
・持続可能な土壌環境
・リサイクル~プラスティック
○逆に中国が主要国から後れている研究開発領域(図で△△、黄色でマーク)は次の2領域である。
・バイオマス発電・利用~バイオマス全般
・気候変動予測