1st Prize of National Natural Science Award
国内的に高い評価の科学者を選定する際の基準の一つとして、中国政府が授与する国家自然科学賞一等賞に着目した。
中国国務院は、1999年に科学技術の進歩活動に貢献する科学技術者や組織を顕彰するため、国家科学技術奨励条例を制定した。この条例では、現在次の5つの国家科学技術賞が定められている。
① 国家最高科学技術賞
② 国家自然科学賞
③ 国家技術発明賞
④ 国家科学技術進歩賞
⑤ 中華人民共和国国際科学技術協力賞
①は、日本の学術関係の文化勲章に相当する最高賞であるが、過去の受賞者を調べるとほとんどが功成り名を遂げた高齢の引退している科学者が多く、また、宇宙、原子力などの軍事・安全保障関係が多い。
②の国家自然科学賞は一等賞と二等賞がある。一等賞は個人とともに複数の研究者よりなる研究チームにも授与され、その数は毎年1から2である。二等賞はかなりの人数となる。
③や④では、受賞者はかなりの人数である。⑤は主として外国人に対して授与される賞である。
そこで、中国国内で活躍する科学者を選定基準として、②の国家自然科学一等賞の単独受賞者および受賞チームの筆頭科学者を選定対象とした。なお、条例により定められたのは1999年であるが、それ以前にも国家自然科学賞一等賞は存在しており、それも確認して選定の対象とした。
この国家自然科学賞一等賞を受賞した人達を見ると、1989年より前に受賞した研究チームの筆頭者や単独受賞者は、全て亡くなっている。そこで、以下に1989年以降2024年までの受賞者をリストアップした。全体で延べ20名となる。
これら20名のうち、既に死亡している科学者は、唐稚松、秦仁昌、秦仁昌、冯康、蒋锡夔、闵乃本の6名である。一方、高齢であり現役と言えない科学者は選定しないこととして、1939年に生まれた陈均远は84歳と高齢であり外すこととした。また、趙忠賢は二度受賞している。これらを勘案すると、中国国内で評価の高い科学者として選定されるのは、12名となる。
○1989年 液体窒素温度領域における酸化物超伝導体の発見
受賞者 趙忠賢(赵忠贤)と中国科学院物理研究所のチーム
○1989年 順序論理に基づくソフトウェア環境の理論と設計
受賞者 唐稚松と中国科学院ソフトウェア研究所のチーム
唐稚松は2008年に死去。
○1993年 中国におけるシダ科および属の体系的整理
受賞者 秦仁昌 中国科学院植物研究所
秦仁昌は1986年に死去。死亡後の追叙であった。
○1997年 ハミルトン系の幾何アルゴリズム
受賞者 冯康と中国科学院計算数学・科学工程計算研究所のチーム
冯康は1993年に死去。死亡後の追叙であった。
○2002年 有機分子クラスタリングとフリーラジカル化学に関する研究
受賞者 蒋锡夔と中国科学院上海有機化学研究所のチーム
蒋锡夔は2017年に死去。
○2003年 澄江動物群とカンブリア紀の爆発
受賞者 陈均远中国科学院南京地質古生物学研究所のチーム
陈均远は1939年生まれで、84歳と高齢。
○2006年 誘電体超格子材料の設計、準備、性能および応用
受賞者 闵乃本と南京大学のチーム
闵乃本は2018年に死去。
○2006年 金属錯体中の多重結合の反応性研究
受賞者 支志明 香港大学
○2009年 中国植物誌
受賞者 钱崇澍と中国科学院植物研究所らのチーム
钱崇澍は1965年に死去。死亡後の追叙であった。
○2013年 40Kを超える鉄系高温超伝導体の発見といくつかの基本的な物性の研究
受賞者 趙忠賢(赵忠贤)と中国科学院物理研究所のチーム
○2014年 透過的コンピューティング技術の開発
受賞者 張堯学(张尧学)と清華大学および中南大学のチーム
○2015年 多光子もつれ干渉計の開発
受賞者 潘建偉(潘建伟)と中国科学技術大学のチーム
○2016年 大亜湾ニュートリノ実験所で発見された新しいニュートリノ振動モード
受賞者 王貽芳(王贻芳)と中国科学院高エネルギー物理研究所のチーム
○2017年 米の高収量・品質特性形成の分子機構と品種設計
受賞者 李家洋と中国科学院遺伝・発生生物学研究所などのチーム
○2017年 凝集誘起発光
受賞者 唐本忠と香港科技大学などのチーム
○2018年 量子異常ホール効果の実験的発見
受賞者 薛其坤と清華大学および中国科学院物理研究所のチーム
○2019年 効率的なキラルスピロ触媒の発見
受賞者 周其林と南開大学のチーム
○2020年 ナノ閉じ込め触媒
受賞者 包信和と中国科学院大連化学物理研究所のチーム
○2020年 規則性メソポーラスポリマーと炭素材料の創製と応用
受賞者 趙東元(赵东元)と復旦大学のチーム
○2023年 トポロジカル電子材料の計算機予測
受賞者 方忠と中国科学院物理研究所のチーム