はじめに
中国の科学技術部局に関し、政治行政体制全般、中国共産党、人民解放軍と中央軍事委員会、さらに日本などの内閣に当たる国務院全般と科学技術関係の部局を取り上げる。
1. 政治行政体制全般と全人代
中国の主要な政治行政体制を示したのが、次図である。

図の右上にある全国人民代表大会(略称「全人代」)は、中国の立法府と位置づけられる組織であり、国家の最高権力機関として行政権・司法権・検察権を監督し、国家主席・副主席や、国務院(最高行政機関)、国家中央軍事委員会(最高軍事指導機関)、最高人民法院(最高司法機関)、最高人民検察院(最高検察機関)の主要メンバーを選出する。
全人代は、省、自治区、直轄市、特別行政区、軍隊が選出する代表によって構成される。定員は3,000名を超えないと憲法に規定されており、議席の約70%が中国共産党党員で占められる。全人代は毎年3月に開催されるのが、現在の慣例となっている。
2. 中国共産党
中国は中国共産党による一党支配の国家であり、憲法に「中国共産党が国家を領導する」と明記されており、中国共産党が国家を指導している。
3. 人民解放軍と中央軍事委員会
図の中央にある人民解放軍は、中国の軍隊である。中華人民共和国建国の歴史的な経緯から、人民解放軍は国家の軍隊というよりは中国共産党の軍隊という色彩を有する。
人民解放軍を指導する機関である(中国共産党)中央軍事委員会は、中国共産党の下部機関として設置され、人事権も当然中国共産党が有している。 国の軍隊としての形式を整えるため、全人代も(国家)中央軍事委員会を下部に設置しているが、(中国共産党)中央軍事委員会委員と同一の人物が委員に選任される。
4. 国務院の全体像
図の右中央にある国務院は、中国の国家行政機関(政府)である。国務院の各部局は、中国共産党と協力して政策立案に当たり、その政策に従って研究開発業務などを実施している。なお、より詳しい部局の記述は、下記の5.を参照されたい。
5. 国務院の科学技術関連部局
国務院には、多くの科学技術関連機関が存在している。以下に、国務院の組成部門、直属機構、直属事業単位、部・委員会が管理する国家局(部委管理国家局)、部・委員会が管理する事業単位(部委管理事業単位)、対外名称維持機構という6つのカテゴリーに分けて、個々の機関の詳細を2025年6月から順次紹介していく。記事として本HPにアップしたものは青字となる。青色の機関名をクリックすると、当該機関の記事が開く。
(1)組成部門(日本の各省に相当、部・委員会とも呼ばれる)
〇国家発展・改革委員会
〇教育部
〇科学技術部
〇工業・情報化部
〇自然資源部
〇生態環境部
〇交通運輸部
○水利部
〇農業農村部
〇国家衛生健康委員会
〇応急管理部
(2)直属機構
(3)直属事業単位
(4)部・委員会が管理する国家局(部委管理国家局)
〇国家エネルギー局 (国家発展・改革委員会が管理)
〇国家国防科技工業局 (工業・情報化部が管理)
〇国家中医薬管理局 (国家衛生健康委員会が管理)
〇国家疾病予防制御局 (国家衛生健康委員会が管理)
〇国家林業・草原局 (自然資源部が管理)
〇国家薬品監督管理局 (国家市場監督管理総局が管理)
(5)部・委員会が管理する事業単位(部委管理事業単位)
○国家自然科学基金委員会 (科学技術部が管理)
○中国地質調査局 (自然資源部が管理)
○中国地震局 (応急管理部が管理)
(6)対外名称維持組織
○国家航天局
○国家原子力機構
○国家海洋局
○国家原子力安全局
なお、参考として、国務院全体の科学技術関連部局を示した図を下記に掲載する。


参考資料
・中央人民政府HP http://www.gov.cn/guowuyuan/index.htm
・維基百科HP 中华人民共和国国务院机构编制 https://zh.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%8D%8E%E4%BA%BA%E6%B0%91%E5%85%B1%E5%92%8C%E5%9B%BD%E5%9B%BD%E5%8A%A1%E9%99%A2%E6%9C%BA%E6%9E%84%E7%BC%96%E5%88%B6#%E5%9B%BD%E5%8A%A1%E9%99%A2%E8%A1%8C%E6%94%BF%E6%9C%BA%E6%9E%84