1. 策定の経緯

 2021年3月、全国人民代表大会が北京で開催され、「第14次五か年計画(正式名称は、中国国民経済・社会発展第14次五カ年計画および2035年までの長期目標綱要:中华人民共和国国民经济和社会发展第十四个五年规划和2035年远景目标纲要)」が決定された。

これは、2021年から2025年までの五か年に加え、建国100年目である2049年までの中間点である2035年を展望した長期目標を含んでおり、2035年までの目標実現に向かい第14次五か年計画の行動計画の実施を加速させることを目指す。

 通例であれば、各省庁、地方政府、研究機関等が、個別の各分野の政策を本計画・綱要に沿って立案し公表されるが、2023年5月時点で科学技術イノベーションに特化した政策は公表されていない。現在、共産党中央の指示により、科学技術部の組織・権限の見直しが行われているためと想定される。

2. これまでの政策との関連

 今回決定された第14次五か年計画は、これまでに公表された科学技術イノベーションにに関する以下の政策や計画と関連している。

(1)国家創新駆動発展戦略綱要(2016年)

 2016年5月に公表された「国家創新駆動発展戦略綱要(国家创新驱动发展战略纲要)」は、2050年までを見据え、2030年までの15年間をカバーする中長期戦略である。

 この綱要は、科学技術イノベーションへの投資を強化することにより、建国後100年で中国を科学技術イノベーション大国に押し上げ、中国の夢を実現しようとするものであり、今回の第14次五か年計画策定後においても、引き続き有効であると考えられる。

(2)国家科学技術重大特定プロジェクト(2008年開始)

 「国家科学技術重大特定プロジェクト:国家科技重大专项(National Science and Technology Major Project)」は、核心的なブレークスルー達成と資源の集中により国家目標を実現する科学技術プロジェクト(ナショナルプロジェクト)であり、国家中長期科学技術発展計画綱要(2006年~2020年)でプロジェクト名が挙げられ、その後に公表された第11次五か年計画(2006年〜2010年)でより具体化され、2008年から実施された。

 その後、国家科学技術12次五か年計画(2011年〜2015年)および国家科学技術イノベーション第13次五か年計画(2016〜2020年)でも、個々のプロジェクトは入れ替えられつつも考えは引き継がれ、今回の第14次五か年計画でも具体的なプロジェクト名が明記されている。

(3)国家重大科技基礎施設建設中長期計画(2012年~2030年)

 2013年2月、国務院は「国家重大科学技術基礎施設建設中長期計画:国家重大科技基础设施建设中长期规划(2012年~2030年)」を公表し、将来およそ20年間における中国の科学技術インフラ建設の重点を明らかにした。今回の第14次五か年計画においても、「重大科学技術イノベーションプラットフォームの建設」という形で、この中長期計画の修正追加が行われた。

(4)双一流建設計画(2017年)

 中国では大学重点化政策として、これまでに211工程(1995年)985工程(1998年)が実施され、高等教育のレベルを高めてきた。習近平政権は、211工程や985工程など過去の成果を踏まえ、国際競争力を向上させ、世界一流大学と一流学科(双一流)の建設を推進する双一流建設政策をスタートさせた。今回の第14次五か年計画でも、この双一流建設計画は引き続き推進されている。

(5)産業技術力の強化

 習近平政権となってから、科学技術イノベーションにより産業技術力を強化しようとする政策や計画が、次の様にいくつか公表された。
 ・中国製造2025(2015年) 
 ・インターネット+(2015年)
 ・電気自動車の充電インフラ建設の加速(2015年
 ・大衆創業・万衆創新(2015年)
 ・次世代人工知能(AI)発展計画(2017年)

 今回の第14次五か年計画でも、これらの政策や計画を踏まえつつ、製造強国、品質強国としての地位を強化するとしている。

3. 構成と目標

(1)構成

 第14次五か年計画は、国の戦略の意図の説明、政府活動の重点の明確化、市場主体の規範化を主導し、全国民の行動計画として位置付けられる。全体は、19編65章で構成されており、科学技術イノベーションだけでなく中国の社会経済活動全般の計画となっている。

 科学技術イノベーションに関係する編としては、第一編(長期目標と数値目標)、第二編(科学技術力の強化)、第三編(産業政策)、第五編(デジタル中国の建設)である。

(2)長期目標と数値目標

 第14次五か年計画の長期目標として、小康社会(ややゆとりのある社会)を全面的に達成し、奮闘目標を実現するとしている。その中で、2035年までの長期目標の一つとして、「経済力、科学技術力、総合国力を急激に飛躍的に向上し、重要な核心技術でブレークスルーを達成し、イノベーション型国家の上位に加わる」との記述が示されている。

さらに、第14次五か年計画の数値目標として次の3点が示されている。
 ・社会全体の研究開発投資伸び率:7%以上、第13次五か年計画以上の実績
 ・人口1万人当たりの高付加価値発明・特許件数:12件(第13次では6.3件)
 ・デジタル産業の対GDP比:10%(第13次では7.8%)