「国家科学技術イノベーション第13次五か年計画(2016〜2020年)」(2016年)

 第13次五か年計画(正式名称「国家科学技術創新第13次五か年計画:十三五”国家科技创新规划(2016〜2020年)」)は、中国全体の五か年計画の個別分野計画として、初めて科学技術に加えて「創新=イノベーション」の文字を追加して2016年に公表された。

第13次五か年計画の策定経緯

 2016年7月、国務院は「国家科学技術創新第13次五か年計画:“十三五”国家科技创新规划(2016〜2020年)」を公表した。この計画は、中国全体の「国民経済社会発展第13次5か年計画要綱」の個別分野の計画として、さらに同年5月に公表された「国家創新駆動発展戦略要綱」および2006年の「国家中長期科学技術発展計画要綱(2006~2020年)」に基づき作成されたものである。

 従来の5か年計画のタイトルと異なり、初めて科学技術に加えて「創新=イノベーション」の文字が追加された。このことは、科学技術と経済、科学技術とイノベーションを結合させ、研究・開発から産業化・ノベーション創出までの全過程を視野に入れた計画であることを強調している。

第13次五か年計画の内容

目標

 直前に発表された国家創新駆動発展戦略要綱の最初の5年間をカバーするもので、2020年までにイノベーション能力を世界15位までに引き上げ、イノベーション型国家の仲間入りを果たすとしている。

 このほか、中国全体の研究開発費の対GDP比 を2.1% から2.5%に引き上げること、中国全体の就業者人口1万人あたりの研究者数を48.5人から60人に引き上げること、国際科学論文被引用回数で世界4位から2位に引き上げることなどの目標を設定した。

戦略ミッション(6項目)

・イノベーションの先発優位を形成することに向けて、直近と将来を兼ね備えた重大な戦略的布石を打つ。
・創造的イノベーションの能力向上に向けて、重要な戦略的イノベーション人材を育成する。
・国内・海外拠点全体を統合的に適宜調整しながら、イノベーション拠点を充実させる。
・「大衆による創業・民衆によるイノベーション」を推進し、創業・イノベーションへ寄与する良い環境を構築する。
・イノベーション創出と成果移転の障害となる制度を廃止し、科学技術体制の改革を全面的に深化させる。
・イノベーションを支える国民・社会による基盤を突き固め、科学普及やイノベーションの文化づくりを強化する。

改革措置(3項目)

・イノベーションにかかわる政策法令を整備・施行する。
・科学技術イノベーション支援メカニズムを充実する。
・計画の実施・管理を強化する。

具体策(6項目)

・活気に溢れるイノベーターの育成
・ハイレベルなイノベーション拠点の配置
・ハイレベルなイノベーション成長モデル地域の形成
・オープン協同イノベーションネットワークを構築
・現代的なイノベーションガバナンスメカニズムの確立
・イノベーションに適した研究環境の整備

重点領域(5項目)

科学技術重大特定プロジェクト:具体的には、大型航空機エンジンおよびガスタービン、深海ステーション、量子通信と量子コンピュータ、脳科学と脳模倣知能研究など。
・産業技術の国際競争力の向上:具体的には、先進バイオ研究、次世代情報通信技術、先進製造技術、新材料技術、AIなど破壊的イノベーション技術など。
・国民生活水準の向上と社会課題の解決:具体的には、環境・生態系保全技術、資源の効率的利用技術、国民福祉に資する技術など。
・国家安全・国益にかかわる技術:具体的には、海洋資源利用技術、宇宙探査・宇宙開発技術、超深地層開発技術など。
・基礎研究の強化:具体的には、医学・免疫学、合成生物学、極限環境(大電流・強磁場・超高温・超低温)技術、統合的モニタリング研究、新材料設計・製造技術など。

参考資料

・中央人民政府HP 『国务院关于印发“十三五”国家科技创新规划的通知