「国家科学技術12次五か年計画(2011年〜2015年)」(2011年)

 第12次五か年計画(正式名称「国家科学技術発展第12次五か年計画:国家十二五科学和技术发展规划(2011年~2016年)」)は、中長期発展計画綱要(2006年~2020年)の中間5年間をカバーする計画で、基本的な考え方は同一である。

第12次五か年計画の策定経緯

 2011年7月に科学技術部は、「国家科学技術発展第12次五か年計画:国家十二五科学和技术发展规划(2011年~2016年)」を公表した。
 国家中長期科学技術発展計画綱要(2006年~2020年)の実施計画であり、国家科学技術発展第11次五か年計画(2006年〜2010年)に続くものである。

 第11次五か年計画が順調に実施され成果も挙がったため、綱要や第11次五か年計画と基本的な考え方に大きな変化はない。

具体的な内容

目標の設定

 一つ目のポイントとして、第12次五か年計画でも5年間の目標を設定している。

 綱要では2020年までに、国内総生産(GDP)に占める国全体の研究開発投資の割合を2.5%以上、科学技術進歩の貢献率を60%以上、中国人の年間の特許取得件数と国際的な科学論文の被引用件数をいずれも世界5位以内にするとしている。

 第11次五か年計画では、2015年までの目標を次の通り示している。
・GDPに占める国全体の研究開発投資割合を 2.2%
・科学技術進歩の貢献率を55%以上
・国際的な科学論文の被引用件数を世界5位以内
・中国人の年間の特許取得件数を世界5位以内:1万人あたりの特許保有数を3.3件、研究開発者の特許申請数を年間12件/100人

重大特定プロジェクトの継続

 二つ目のポイントは、重大特定プロジェクトの継続的な実施である。綱要では、情報やバイオテクノロジー、エネルギー資源・環境分野などから、16項目を選定し、第11次五か年計画で民生用の13のプロジェクトの内容を詳細化し、2008年からナショナルプロジェクトである「国家科学技術重大特定プロジェクト:国家科技重大专项」として実施されていった。

 今回の第12次五か年計画では、13項目から10項目となり、大型航空機の開発、高解像度地球観測システム、有人宇宙飛行と月探査の3項目はこの五か年計画とは別の計画により実施されることになった。

自主創新能力の強化

 三つ目のポイントは、さらなる自主創新能力の強化である。先進諸国からの技術導入による経済発展のモデルの限界を認識し、経済発展のモデルを転換する原動力として、自主創新による先端コア技術の開発を推進することを当計画の中心内容とした。

 このため、戦略的新興産業として省エネ環境保全産業、新世代情報産業、バイオ産業、ハイエンド装置設備製造産業、新エネルギー産業、新材料産業、新エネルギー自動車産業の7産業を、重点分野技術として農業技術、重点産業技術、科学技術サービス業技術、国民の生活にかかわる技術、持続可能な発展を支える技術の5技術を列記している。

第12次五か年計画の成果

 2015年では、上記の目標達成について、
・科学技術進歩の経済社会の発展への寄与度は、55.3%に達した。
・全社会研究開発支出は1兆4,000億元(約22兆円)を超え、2010年より倍増。
・発明特許出願件数・取得件数は、いずれも2010年の3.3倍となった。

 また、2016年に北京で開催された「第12次五カ年計画科学技術成果展示会」では、宇宙実験室「天宮2号」内の風景、中国製のハイエンド「チップ」、新エネ車、高速鉄道、近代的な農業施設、エボラワクチン、整形外科ロボットなどのモデルが一般公開された。

 一方中国政府は、第11次5か年計画の成果を認めつつも、米国と比較すると、研究開発費は半分程度、研究論文も量が超えたが、質(被引用数)など差がまた大きいと認識している。

参考資料

・中国中央人民政府HP 『科技部发布国家“十二五”科学和技术发展规划